旅で出会った不思議なこと、おもしろい事件、悲しいこと等など・・・つれづれなるままに、書き綴り候・・・。
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アウトバックの洗礼

オーストラリアのへそ“エアーズロック”の近く、アリスス・プリングスから南オーストラリア州のアデレードまで、1554kmの車の旅を敢行した。ひとっ走りに走り通せば1554kmだけど、もちろん途中で寄り道をしたりもするから、総走行距離は2200km以上にも及んだ。

列車の到着が遅れ、予定が最初から狂ってしまった旅の始まりは、何もない赤土のアウトバックで一夜を過ごすハメになった。
翌朝は早くに出発し、遅れを取り戻すべく突っ走る!…予定だった。が、しかしそれは荒野のアウトバックを甘く見ていたことを思い知らされる格好になった。

4WD車でしか走行できない道がほとんどであるため、もちろん4WDのキャンパー・バンを借りていたのだが、思った以上に道のコンディションが悪い。遅れを取り戻そうと時速100km平均で走行している最中は、さながらラリー・カーのようだ。
すべる車体を持ちこたえるため、必死に逆ハンを切る。あと少しで舗装道路…というその時、ズズーっと何かを引きずるような音がした。
パンクだ!対向車など1時間に1台来るかこないかというアウトバックで、大きな4WD車のパンクを直さなければならない。誰も助けてはくれない。自分でやるしかないのだ!

ジャッキをかけて車体を持ち上げようとするが、やわらかい赤土のためどんどん下に食い込んでしまう。かろうじてタイヤを外すことはできたものの、下の部分が地面にぶつかってしまって、今度ははめることができない。仕方なく、ありったけの工具を使って、赤土を掘る。ジリジリと照りつける太陽がやけに熱い…。まさかこんなところで、穴掘りをするとは思ってもいなかった…。

40分後、ようやくパンク地獄から抜け出し、そこから10数キロ走ったところで舗装道路に出た。しかし、アウトバックの洗礼は、まだ終ったわけではなかった。

目的地まで、まだあと490km。日暮れが近い。急がなければ…。
そう思った矢先、フロント・ガラスに向かってタカ(鷹)が飛んできた!まさか?!

ドカンッッ!!

大きな音を立てて、鷹がフロント・ガラスに衝突。力無く羽を広げたまま、車体の左下側へと落ちていった。…ショック!
心臓がバクバクしているのがおさまらないまま、時速120kmのスピードでハイウェイを突っ走る。

と、その時、車の左前方からピョーンと何かが飛び出した!
カンガルーだ!鷹の次は、カンガルーが飛び出してきたのだ。間一髪で、カンガルーを交わす。それ以降、多少スピードは弱めたものの、あまりノロノロ走っているわけにもいかないため、90〜100kmくらいでひたすら走る。

ショックもだいぶ落ち着き、辺りはすでに真っ暗になっていた。
何時間走っても、後続車も対向車もまったく来ない。自分の乗っている車のヘッドライトが照らし出すものだけが闇の中に浮かび上がっている。
その時、前方にいくつもの影が!!

影は4〜5つも見える。そう思った瞬間、目の前の影の正体がわかった!カンガルーだ!今度は5匹ものカンガルーが、道のど真ん中で井戸端会議をしていたのだ!
急ブレーキを踏み、けたたましくクラクションを鳴らす。ようやくカンガルー達は、近づいてくる巨大な鉄の塊に気付き、逃げた。

とりあえず、難は逃れた。カンガルーをひくのも嫌だけど、あんな大きな個体に正面から衝突したら、車の方がひとたまりも無い。後続車も対向車もほとんど走ってこないアウトバックで車が故障したら…と思うと、ゾっとした。なにせ、次の町まで100kmや200kmはゆうにあるのだから。

450kmほど走ったところで、ようやく40km先の町の明かりが見えた。あと、もう少しで人の住む町だ。

つれづれなるままに旅日記

No.031


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