リンディは昨日、慌しく去っていった。カウラのワイナリーでワイン作りのトレーニングジョブをするらしい。彼女は新しい生活のことで気持ちがいっぱいなのか、興奮気味だった。リンディが色んな仕事の面接を受けていたことを知っている私は、嬉しいような寂しいような複雑な気分だった。
「カウラで家を借りるから、いつでお遊びに来てね」とリンディは言ってくれたが、車の無い私達は一体どうやってカウラまで訪ねるのか・・・ヒッチハイクか！？それはそれで楽しそうだ。

今日は朝の10時から仕事が始まり、午後3時で終わってしまった。ここ数日ピッキングもしていないので、パッキングするチェリーが無くなってしまったのだ。「おまんま食い下げだよ〜」などとつぶやいてみる。

仕事から帰ってみると、家のまわりのキャラバンのテントが一つ無くなっている。”酔っ払いのおじさん”と私が勝手に名付けたおじさんとその奥さんが引っ越してしまったのだ。理由は分からないが、多分仕事があまり無い上に、大雨でチェリーも痛んでしまったからではないかと思われる。私は、酔っ払いのおじさんが大好きだった。いつも笑っていて私を見る目が優しい。洗濯機の使い方を教えてくれたのも、このおじさんだった。リンディもいなくなり、酔っ払いのおじさんもいなくなり、寂しい。