猫や犬などのペットが生態系を壊す!

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猫や犬など、ペットとして飼われている動物達が、その地区本来の生態系を壊す…これは実際に起こっている由々しき事態。輸入された動物が捨てられ、地区固有の動物達が生きる場所を奪われるだけではありません。ペットによって、種そのものの存続すら危ぶまれている野生動物達がたくさんいるのです。

一昨日、野生のポッサムであるたまちゃんが永眠しました。たまちゃんの年齢は、毛並みの感じ等から5~6歳前後だったのではないかと推察しています(たまちゃんは途中参入なので、正確な生まれ年がわからない)。野生のポッサムの寿命は、平均6~7年と言われているから、寿命であった…と言えるかもしれません。

でも、それだけでは片付けられない症状がありました。苦しそうにヒューヒューと音を立て、呼吸自体も速く、かなり咳き込んでいたことも。そして、内臓をやられていたようで急激に痩せ、お腹のあたりをずっと気にして舐めていました。また、そのせいなのか、歩行も困難に…。

いろいろと気になって調べたところ、トキソプラズマに感染していた疑いが浮上。トキソプラズマは、ご存知の方も多いかと思いますが、猫がその終宿主となり、排出する糞が感染経路となる原虫感染症。人間にも感染するため、とくに妊娠初期の妊婦は注意が必要とされています。

現在近所には3匹の猫がいます。隣の家に来た猫が約1年半、前の家が3年前に引っ越してきた時に連れてきた猫が2匹。そして、そのすべてが放し飼い状態…(- -;。猫はほぼ一日中出入り自由で、時には真夜中にウロウロしていることも。もちろん、トイレも外です。こうした場合、野生動物がトキソプラズマを持つ猫が排出した糞から感染源となるオーシストに接触する機会はおのずと増える…。

トキソプラズマは、哺乳類や鳥類など、ほぼすべての動物に感染しますが、とくに有袋類にとっては、もっとも警戒すべき感染症と言われています。動物園の飼育マニュアルにも「有袋類の飼育上、もっとも警戒すべき感染症のひとつ」とされているほど。太古の時代に北米に生息していた有袋類が絶滅したのは、このトキソプラズマがその一因であったとする説もあり、また現在、野生の固有動物のほとんどが有袋類であるオーストラリアにおいては、そのライフスパン(寿命)を縮めている一因として、やはりこのトキソプラズマが挙げられています。

野生動物を苦しめているのはトキソプラズマだけでは、もちろんありません。ですが、猫や犬などのペットが、彼らにとって大きな脅威になっているのは事実。

犬もまた、野生動物を脅かしています。シドニーにわずかに残されたリトルペンギン達も犬等のペットによって、その命を奪われ、個体数を減らしています。また、散歩途中での排泄物(例え糞は持ち帰るとしても、おしっこはそのままですよね)が土壌や河川を汚染していると指摘する人もいます。

猫や犬が悪いわけじゃありません。人間がその場所には本来いないはずのペット=動物を持ち込むことが問題であり、そうした身勝手な行為が、固有の生態系を壊してきたのです。

放し飼いなんて以ての外! 迷惑を通り越して、自然環境破壊行為だということを飼い主は自覚すべきであり、もし飼うのであれば、自然のルールに従って、できる限り環境に負担をかけないようにするべきなのだと思います。

※トキソプラズマを排泄するのはすべての猫ではなく、初感染した猫だけ。しかも1ヶ月程度の一定期間のみ。と言われていますが、いつでも好きなときに外へ出ている状態だと、いつ、どこでオーシストを拾ってくるかわかりません。ですから、<お願い>猫は家の中で飼いましょう。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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