ペンギンをレスキュー!感触はボンレスハムみたい?

救助したペンギン。カゴに移してもほとんど動かない…
標準

 シドニーに戻ったばかりの翌日(昨日)、久しぶりに野生動物救助に向かいました。今回のミッションは、なんと『ペンギン』!

 電話を受けたとき、「え?なぬ??ペンギン????」と、頭の中が「?」だらけになったほど…(^^;  シドニー沿岸部にペンギンが棲息しているのは知っていたけれど、まさかレスキューすることになるとは、夢にも思っていませんでした。(まあ、野生動物には違いないので、ないとは限らないわけですが)

 場所は、家から車で5分ほどのビーチ。シドニー市内中心部からは直線距離で、約30kmほどの海岸です。この辺りでペンギンが一番多く棲息しているのは、日本人観光客にもお馴染みのマンリービーチですが、その以北へと続くノーザンビーチーズ沿岸部には、ペンギンのコロニー(営巣地)が点在しています。その1つが、近所のビーチなのです。

 電話での情報では、「ビーチでうずくまっているペンギンを見つけ、確保している人がいるので、引取りに行って欲しい」とのこと。すぐさま、ペンギン発見者と連絡を取り合い、急いでレスキューグッズを車に詰め込んでビーチへと向かいました。

 折りしも冷たい雨が降り出していましたが、幸いすぐに発見者と会うことができ、ペンギンのペンちゃんと対面。牛乳を運ぶボックスに彼らのタオルと共に入れられたペンちゃんは、うずくまっていてあまり動きません。体長は35cm程度と決して大きくはありませんが、オーストラリアに生息するペンギンは、世界で一番小さなペンギン(リトルペンギン=コガタペンギンまたはフェアリーペンギンとも言う)なので、この大きさからして成鳥のようです。

 とりあえず、地面にボックスを置き、持って行ったレスキューバスケットに移そうとしたところ、発見者の女性が、「すごく怒ってる(興奮している)ので、気をつけて。突付かれるかも?」と。どうやら、男性が捕まえようとした時に突付かれてしまったようです。

バスケットに移したペンギン。自分のバスケットに移したペンギンのペンちゃん

 「発見した時、側で犬がウロウロしていたので、やられちゃったのかもしれない。何でもないといいのだけど…」 心配そうに見つめる発見者のカップル。雨足も強まり、もう辺りは暗くなってきていたので、早くしなきゃ!

 「大丈夫だよ、大丈夫。怖くないから、いい子にしててね」と話かけながら、そっとタオルをかけて捕まえ、自分のバスケットへ移しました。その様子を見ていた発見者の女性が、「わ、うまい!さすが」と、小躍りして褒めてくれました。せっかく褒めてもらったのだけれど、それほどレスキューの数はこなしてないし、なによりペンギンは初めてなんですけど~…(^^;

 発見者の2人にお礼と別れを告げ、怪我をしているかもしれないので、急いで病院へ。

 受付のスタッフに「野生のペンギンなんですが、怪我をしているかもしれないので、念のため見て欲しい」と告げると、「えぇ?ペンギン??」とちょっとビックリしていました。さすがに動物病院といえども、ペンギンが診察に訪れることなど、そうそうないでしょうから(笑)。

先生がカゴから取り出したら、羽をバタバタさせて暴れるペンギン先生がカゴから取り出したら、羽をバタバタさせて暴れるペンちゃん

 先生が診察台へと取り出し、体中のあちこちを検診してくれました。とりあえず外傷はなし。この日は強風が吹き荒れており、波も高く、海が非常に荒れていたので、餌を取りに行ったペンちゃんが、荒波に打ち返されて岩などに衝突し、脳震盪等を起こしてうずくまっていただけなのかもしれません。とにかく無事でなにより♪

 カゴから取り出す時にちょっとバタバタと暴れたけれど、見た目もきれいで羽が青くツヤツヤと光っています。とても元気そう♪ 私が抱っこした時にほとんど動かず大人しかったのは、犬に驚いたのといきなり人間が来て捕まえられたので怖かっただけのようです。先生に大丈夫とのお墨付きをもらい、ひと安心!

ペンギンを検診中!ペンギン、検診中!

 病院ではこの間、突然の珍客にちょっとした騒ぎになっておりました。代わる代わるスタッフが見に来たり、診察した先生ですら「ちょっと記念撮影を」なんて、自分の携帯電話で写真を撮ってもらっていたほど(笑)。ペンちゃんはこの後、鳥類コーディネーターに引渡し、そこで何日か過ごした後、動物園に保護されるか、野生に戻されることになると思います。

 さて、思いがけず、野生のペンギンを抱っこする機会に恵まれた(?)わけですが、ペンギンの感触はというと・・・・・・なんだか、ボンレスハムのよう。体全体に脂肪がたっぷり付いていて、ボヨヨ~ン&ブニャ~という感じでした…(^^;

先生も珍しかったらしく、ペンギンと記念撮影先生も珍しかったらしく、ペンギンと記念撮影

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

シドニーの初日の出と、困ったうさぎ問題

2011年元日、シドニーの初日の出
標準

 遅ればせながら・・・・・・あけましておめでとうございます! 今年もどうぞよろしくお願いいたします。シドニーでの大晦日は、2年ぶりにシドニー湾のカウントダウン花火へ行って来ました~。

 昨年は迷っているうちにどうでもよくなって、自宅でTV観覧だったのですが、、、今年は重い腰を上げて、行って来ました。やっぱり、生で見ると迫力が違います! 思わず見とれてしまうほど。混雑を避けるため、観光客はほとんど行かない某ポイントで見たのですが、地元の人はチラホラいるものの、数年前に比べるとかなり少なくて、快適に見ることができました。

 自宅に戻って、何やかんやと用事を済ませ、ベッドに入ったのは午前3時。この時期のシドニー日の出は、午前5時20分ですから、寝ていられるのは2時間ちょっとしかありません。4時45分に目覚ましをかけたはずだったのだけれど、なぜか30分も遅れて鳴り、気がついたら5時15分。もう、太陽が上がってしまう。。。。さっと着替えて、慌てて外に飛び出しました。

 が、しかし・・・東海上の海面すれすれに薄く霞がたなびいており、本来なら日の出の時間を過ぎたはずなのに、まだ太陽は見えていません。それから10分くらいで、ようやく霞の層を抜けてきた太陽が顔を出しました! それが、この写真。自宅前の道路から見た、南太平洋から昇る初日の出です!

今年の干支うさぎは、オーストラリアでは害獣…今年の干支うさぎは、オーストラリアでは害獣…。
近所の保護区にも、この通りうさぎがいっぱい!親子でかわいいのですけど。。

 さて、今年の干支は「卯=うさぎ」ですね。ここシドニーにも野うさぎがたくさんいます。でも、うさぎは西洋人が持ち込んだもの(*)で、本来オーストラリア大陸にいるはずのない動物。しかも、オーストラリア固有種である有袋類のバンディクートと食性がバッティングしているため、害獣扱い。そのため、都市部のフレンチ・レストランでは、「うさぎを食べよう!」というキャンペーンが行われたりもしています。

 都市部に程近いエリアのバンディクートがその棲家を奪われ、個体数が減少していることを鑑みると、それも致し方なし…といったところでしょうか。。 うさぎもかわいいんですけどね、、

 (*)=西洋人がゲーム(狩り)のために持ち込んだものやペットが野生化。うさぎの他、西洋人によってゲームのために持ち込まれたキツネも同様に野生化し、固有種の野生動物を襲うために駆除対象になっています。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

救えなかった小さな命 ~バンディクートの赤ちゃん

助けられなかった…バンディクートの赤ちゃん
標準

 年の瀬も迫った昨日、ヒヨちゃんを保護してから断り続けていた野生動物レスキューに向かいました。

 ヒヨちゃんのケアで手一杯だったこと、そしてヒヨちゃんがいなくなってから気が抜けてしまって、しばらく休みたいという気持ちから、その後3度ほどあったレスキュー依頼をすべて断っていたのです。

 昨日も最初は断ろう…と思っていたのですが、この前のクリスマス会で知り合ったスーからの電話だったので、断りきれず、また、救助の対象が「傷ついたバンディクートの赤ちゃん」ということで、レスキューに向かう決心をしました。

 人間に懐きにくく、恐れを抱いてしまう傾向が強いバンディクート。とても神経質で、近づくとすぐに逃げてしまいます。だから、今回のレスキューは特別ミッション。しかも、赤ちゃんですから「very special=非常に特別な」対処が必要だと、スーも念を押して状況を説明してくれました。

 場所は車で3分もかからないほどの近所。レスキュー依頼者に電話して、10分以内に向かう旨を伝え、速攻で車に乗り込みました。せっかくこの世に受けた小さな命。できる限りのことをして助けてあげたい。そう思いながら救助に向かいました。

 現場へ到着し、傷ついたバンディクートのいる場所へ案内してもらうと、そこは庭に置いてある家型の子供用遊具の中。小さな子供なら中に入って遊べるくらいの大きさのものです。

 プラスティックのドアを開け、中を覗くと隅のほうに小さなバンディクートがうずくまっています。そばには小さなガラスの容器に入れた水。発見者のおじさんが置いてあげたそうです。でも、ぐったりしていて飲んでいないようだと。バンディクートは目を閉じ、水の容器にもたれかかるような感じで、ぐったりと横たわっています。

 まだまだ小さなその子は、ロング・ノーズド・バンディクート。体長は約15cm弱(だいたい成獣の半分程度)、おそらくお母さんから自立して1ヶ月経つか経たないかくらいでしょうか? バンディクートは有袋類であるため、生後○ヶ月というのを特定するのは難しいのです。

 そして一見したところ、お尻から右足にかけて広範囲の毛がざっくりとなくなっており、肌が露出しています。少し肉も見えているのか、赤く見える部分もありました。しかも、化膿しているようで臭いも発しています。かなり重症のよう。。。急がねば!

 元々その中で見つけたのか、それとも家の人が入れたのか、聞き忘れてしまいましたが、、、とにかく早くしなくちゃ!という思いで、私もかがんで中へ入り、保護するためにそっとタオルをかけます。突然の行為にびっくりして、2,3歩ぴょんと跳ねましたが、すぐに抱き上げることができました。

 タオルを敷いたバスケットに静かに入れ、さらに抱き上げる時に使ったタオルを丸くして、顔のそばにシェルターを作り、上からもう一枚のタオルをかけて、蓋を閉じます。さぁ、動物病院へ急行です!

バスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃんバスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃん

 ラッキーなことにこのエリアには、すぐ近くに野生動物を見てくれる病院があります。私達の所属する野生動物保護団体WIRESとも連携しており、無料で診察・治療をしてくれるはず。車で3分ほどのところなのに、途中信号に引っかかったりで、ちょっとイライラ…。その間、バンディクートに向かって「大丈夫だよ。もうすぐ病院だから、頑張ろうね」と声を掛け続けていました。

 病院に到着。先客(飼い犬)がいたため、少し待たされることになりましたが、その間ずっと「頑張ろうね、大丈夫だから」と声を掛け続け、数十分後には先生に診てもらうことができました。

 しかし、先生の判断は……

 「かなり重症だ。治癒するのは難しいと思う。治療に時間がかる場合、野生の子はそのストレスも大きい。かわいそうだけど、このまま眠らせるほうがいいと思う」

 ガーン、、、頭の中で除夜の鐘を叩かれたみたいな衝撃が走り、真っ白に。。

タオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクートタオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクート

 先生がタオルをかけて捕まえたバンディクートを逆さにして、傷口をこちらに見せてくれました。「臭いもひどいから、きっと怪我をしてから数日は経っているはずだ。かなり化膿が奥深くまで進行しているんだよ。車にはねられかけたか、電気ケーブルに接触して怪我をし、弱っているところを猫か犬にやられたのかもしれない」と。

 私自身も抱き上げる時に気になっていた臭い、それは化膿がひどいというサインだったのです。

 「もう少し傷が浅かったら、もしくは、もう少し早く発見されていれば、少しは望みがあったかもしれない。このまま痛みに耐える続けるよりは、眠らせたほうがこの子のためだから」

 先生はそう言って、その子を連れて奥の部屋へ入っていきました。

 ああ、そんな、、、、  大丈夫だから、頑張ろうねと、約束したのに。。(涙)

 帰りの車の中で思い出される小さなバンディクートの姿。バスケットの中でうずくまりながら、開いたその小さな瞳が「生きたい」と言っていたような気がして、胸がキューっと痛くなりました。そして時間を追うごとに、後から後からあふれてくる涙。。

 助けられなくて、、ごめん。。。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。