コアラだって水を飲みたいっ!

暑くて、水を飲んでいたコアラくん。たまらず水の中へドボン!
標準

※このエントリーは、私(平野美紀)が、2005年2月4日に執筆し、ODNの公式サイト内で連載していたブログ記事の1つとして公開され(のちにソフトバンクテレコムに買収され終了)ていたものを再アップしました。

 コアラといえば、オーストラリア先住民アボジリニの言葉で『水を飲まない』という意味だということは、動物好きな人やオーストラリアに詳しい人には、結構知られていることじゃないかと思う。

 goo ペットのコアラの説明『コアラってどんな意味!?』によれば……(現在、サイト閉鎖でリンク切れ)

 コアラが主食とできるユーカリの葉は、約600種類あるユーカリの中でも約50種類位に
限られおり、そのユーカリ林が減少しないよう様々な努力が行われています。
さて、このユーカリの葉の大きな特徴は、栄養価が少なく、葉の約50%が水分であること
です。コアラは水分の補給を全てユーカリの葉を食べることによって行っているため、
通常は水を飲むということは必要ありません。
ですから、オーストラリア原住民のアボリジニからは「コアラ」=「水を飲まない」と
いわれているのです。

とある。

水道の蛇口から口のみするコアラ そう、コアラは水を飲まない。とか、飲む必要がない。というのが、一般的なコアラの知識とされている。

 でも、コアラだって水を飲みたいときがあるのだー!
 先日の新聞整理の際に、またまた見つけてしまった決定的な瞬間!!

 水道の蛇口にヘバりついて、蛇口の隙間から滴り落ちる水を必至に舐めるコアラくん。

 この写真は、ワイルドライフ・サンクチュアリーで保護したコアラだそうで、記録的な旱魃でかなり乾燥した気候だったらしいけれど、人間の管理の下に置かれているのだから、食事にありつけないわけじゃないはず。それでも、あまりに乾燥していたら、普段はそれほど水を必要としないと言われるコアラだって、喉が渇いて水を飲みたいんですね~。

 …というわけで、従来のコアラに関する知識=コアラは水を飲まない。は、×。
→訂正:コアラだって水を飲みたい時があるのだ~♪
が正解(笑)。

<2014年2月2日追記>

 2009年の大規模ブッシュファイヤーで被災した野生のコアラが、救助される際に、水をもらって飲んだ映像は、世界に衝撃を与えました。このコアラは「サム」と名付けられ、救助された後、治療および手厚い介護を受けていましたが、残念ながら天国へ旅立ってしまいました…。

 その他にも、たくさんの「コアラが水を欲しがる様子」が、写真や動画で確認できます。トップ画像は、上述のブッシュファイヤーがあった時、ものすごい熱波でハンパない暑さだったため、民家のガレージに溜まっていた水を飲みに来たコアラくんが、あまりの暑さに、いてもたってもいられずに水の中へ入ってしまった瞬間の画像。こちらのニュースから。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

野生動物と共存するために -ペンギンの島、フィリップ島の挑戦 ~エコレポ「 オーストラリアの野生動物保護:現場編」

野生動物と共存するために-ペンギンの島、フィリップ島の挑戦
標準

 エコレポで連載中の「オーストラリアの野生動物保護」、現場編の第9回目は、メルボルンから車で2時間程のところにあるペンギンの島、フィリップ島での環境維持と野生動物保護活動など、観光事業の裏側をご紹介しました!

 私自身もボランティアとして、保護活動を体験をさせていただいたのですが、華やかな観光事業の裏で、このような地道な作業が行われていたことを知り、大変意義深い取材となりました。

 このコラムでご紹介しいているフィリップ島の活動は、日本でも十分生かせるものだと思います。環境の保護・維持が野生動物を守ることに繋がり、ひいては、観光へと繋がっていく。本当に、エコツーリズムのお手本のような島だと思います。

 環境と野生動物の保護に関心のある方は、ぜひともご一読ください!

★エコレポ・オーストラリアの野生動物保護 Vol.9 「現場編(3)野生動物と共存するために -ペンギンの島、フィリップ島の挑戦

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

FM東京「エコ・アクション・ワールド」に出演、『オーストラリア野生動物との共生』のお話

標準

 先日、11月3日(土)、環境をテーマとするFMラジオ番組「Eco Action World」にて、オーストラリアにおける野生動物との共生、野生動物保護についてお話させていただきました。

 収録5分番組のため、私の部分は1分程度でしたが、収録前のインタビューで30分ほど、野生動物保護活動などについてお話させていただいたものを、公式サイトでご紹介いただきました!

 よかったら、ご覧ください♪

★Eco Action World 2012/11/03の放送内容 第117回 オーストラリア 野生動物との共生

※この番組は、毎週土曜日13:55~14:00、FM東京をはじめとする全国38のFM局で放送(全国同時)されています。⇒FMラジオ番組「日本興亜損保Eco Action World」のご紹介

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

ポッサムとオウムとワライカワセミ、3種の野生動物をレスキュー

ぐったりとして動かないポッサム
標準

 先週の月曜日は忙しい一日でした。仕事が忙しいのならまだしも、野生動物のレスキューに振り回されて、忙しかっただけなのですが…。

 まず最初に受けたレスキュー依頼は、『ポッサム』。近所の家で、かなり重症と思われるポッサムが倒れているので、救助してきて欲しいというものでした。ポッサムはこのブログでも何度か書いていますが、猫くらいの大きさの有袋類。我が家にも毎夜やってくるので、付き合い方は慣れたものです。ですが、かなり重症のようで、動くことができないとのこと。これは絶対に助けたい!

 急いでレスキューバスケットやタオルなどを用意して現場へ。場所は、我が家から車でほんの2分ほどのご近所でした。発見者の女性に案内されて、家の中を通り、ポッサムがいるというデッキへ行くと、誰でもが簡単に手の届くあたりに、ポッサムが横たわっていました。

 大きさからして、成獣のよう。ぐったりと顔を下に付けたまま、「死んでいるのかも?」と思うほど、まったく動きません。ですが、よく見ると、まだ呼吸しています。発見者の女性がかけてあげたというタオルが、体半分に掛けられており、近くには水と小さな器にキャットフードが入れてありました。

 彼女によれば、「右目のところを怪我しているようで、かなり酷いことになっている。でもここへ来て、これ(キャットフード)を食べていたの」とのこと。たしかにキャットフードは減っているし、彼女に「たくさん食べたのかな?」と聞くと、「たぶん昨夜か今朝も食べていたと思う」というので、これは、まだ助かるかもしれない!と、急いで抱き上げ、バスケットに入れました。

 そして、発見者の女性に通報のお礼を言い、急いで近くの動物病院へ!それにしても、ぐったりとほとんど動かないのが気になります。病院に着くと、バスケットごと先生に渡し、そのまま診療、入院となりました。

 そして自宅に戻る途中、再びレスキュー依頼の電話が…。正直、今日はもう勘弁して、、と思ったのですが、一応、依頼内容を聞くことに。すると、レスキューというよりは、すでに動物病院に預けられている『コッカトゥー(白いオウム)』を引取りに行って欲しいということでした。電話の途中で、別のもう一件もお願いしたいというので、話しを聞いてみると、「コッカトゥーを引取った後、別の病院で『クッカバラ(ワライカワセミ)』も引取ってきて欲しい」と…。

 ええい、こうなりゃ、一羽も二羽も一緒だ~!!

 まず向かったのは、コッカトゥーのいるマンリー近く。我が家からは車で20分ほどのところです。動物病院へ行くと、すぐに該当のコッカトゥーを連れてきてくれたのですが、スタッフの女の子は怖いのか、「タオルを持ってくるからやって」と、投げ出す始末。仕方なく、カゴからそっと取り出し、自分のバスケットへ。

 その後、鳥類コーディネーターに指示を仰ぐため電話すると、「そこの動物病院は鳥は得意じゃないから、保護された状況を聞いて、別のところでもう一度ちゃんと診てもらうようにして欲しい」とのこと。というわけで、相方が病院のスタッフに「どこで、どんな風に保護されて、ここへ来たのか?」を聞きに行く羽目になりました…。

片っ端から何でも噛みまくるコッカトゥー(白オウム)片っ端から何でも噛みまくるコッカトゥー(白オウム)

 病院スタッフの話では、「この近所に住む住人の庭で、飛ばずにずっと歩いているのを見つけ、おかしいと思い保護し、ここへ連れてきたらしい」というではありませんか。つまり、鳥なのに飛べないというのです!何か、どこかがおかしいに違いない。病気なのかも?というわけで、結局、再度別の動物病院へ搬送することになりました。

 搬送途中、カゴの中のコッカトゥーは、ずっとカゴのふちをガシガシ噛みっ放し…、ときおり、動物病院の誰かがくれたリンゴを齧ってみたりもするのですが、とにかく、どこでも噛みまくるのです。「噛んじゃダメ!」と叱ると、一瞬こちらをジっと見て止めるのですが、またそのうち、カミカミカミカミ、ガシガシガシガシと始まる。コッカトゥーは本当にタチが悪い!コッカトゥーのくちばしの強さはハンパじゃなく、硬い配管パイプにも穴を開けられるほどなのです。

 指定された別の動物病院へ行くと、そこは確かに鳥の患者が多いようで、待合室には2羽のセキセイインコが診察を待っていました。コッカトゥーを先生に預け、ホッとしたのも束の間、次はクッカバラの待つ、また別の動物病院へ。話は伝わっているようで、すぐにわかったのですが、なかなか当のクッカバラを連れてきてくれません。

 しばらくすると、「クッカバラ、今朝までは元気だったのだけど、急に容態が変化して…。もしかして、内臓にダメージがあるのかもしれない。あまり良くないから、あと数日診たい」とのこと。結局連れ帰ることなく、引き続き入院治療することになりました。

 気がつけば、日はすっかり暮れ、もうすぐ夜。とにかく願うのは、この日関わった子たちが皆、元気で無事に野生に帰れるように、ということだけです。それにしても、ほぼ一日中、動物たちのために奔走してしまった…あー、疲れた!

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

ペンギンをレスキュー!感触はボンレスハムみたい?

救助したペンギン。カゴに移してもほとんど動かない…
標準

 シドニーに戻ったばかりの翌日(昨日)、久しぶりに野生動物救助に向かいました。今回のミッションは、なんと『ペンギン』!

 電話を受けたとき、「え?なぬ??ペンギン????」と、頭の中が「?」だらけになったほど…(^^;  シドニー沿岸部にペンギンが棲息しているのは知っていたけれど、まさかレスキューすることになるとは、夢にも思っていませんでした。(まあ、野生動物には違いないので、ないとは限らないわけですが)

 場所は、家から車で5分ほどのビーチ。シドニー市内中心部からは直線距離で、約30kmほどの海岸です。この辺りでペンギンが一番多く棲息しているのは、日本人観光客にもお馴染みのマンリービーチですが、その以北へと続くノーザンビーチーズ沿岸部には、ペンギンのコロニー(営巣地)が点在しています。その1つが、近所のビーチなのです。

 電話での情報では、「ビーチでうずくまっているペンギンを見つけ、確保している人がいるので、引取りに行って欲しい」とのこと。すぐさま、ペンギン発見者と連絡を取り合い、急いでレスキューグッズを車に詰め込んでビーチへと向かいました。

 折りしも冷たい雨が降り出していましたが、幸いすぐに発見者と会うことができ、ペンギンのペンちゃんと対面。牛乳を運ぶボックスに彼らのタオルと共に入れられたペンちゃんは、うずくまっていてあまり動きません。体長は35cm程度と決して大きくはありませんが、オーストラリアに生息するペンギンは、世界で一番小さなペンギン(リトルペンギン=コガタペンギンまたはフェアリーペンギンとも言う)なので、この大きさからして成鳥のようです。

 とりあえず、地面にボックスを置き、持って行ったレスキューバスケットに移そうとしたところ、発見者の女性が、「すごく怒ってる(興奮している)ので、気をつけて。突付かれるかも?」と。どうやら、男性が捕まえようとした時に突付かれてしまったようです。

バスケットに移したペンギン。自分のバスケットに移したペンギンのペンちゃん

 「発見した時、側で犬がウロウロしていたので、やられちゃったのかもしれない。何でもないといいのだけど…」 心配そうに見つめる発見者のカップル。雨足も強まり、もう辺りは暗くなってきていたので、早くしなきゃ!

 「大丈夫だよ、大丈夫。怖くないから、いい子にしててね」と話かけながら、そっとタオルをかけて捕まえ、自分のバスケットへ移しました。その様子を見ていた発見者の女性が、「わ、うまい!さすが」と、小躍りして褒めてくれました。せっかく褒めてもらったのだけれど、それほどレスキューの数はこなしてないし、なによりペンギンは初めてなんですけど~…(^^;

 発見者の2人にお礼と別れを告げ、怪我をしているかもしれないので、急いで病院へ。

 受付のスタッフに「野生のペンギンなんですが、怪我をしているかもしれないので、念のため見て欲しい」と告げると、「えぇ?ペンギン??」とちょっとビックリしていました。さすがに動物病院といえども、ペンギンが診察に訪れることなど、そうそうないでしょうから(笑)。

先生がカゴから取り出したら、羽をバタバタさせて暴れるペンギン先生がカゴから取り出したら、羽をバタバタさせて暴れるペンちゃん

 先生が診察台へと取り出し、体中のあちこちを検診してくれました。とりあえず外傷はなし。この日は強風が吹き荒れており、波も高く、海が非常に荒れていたので、餌を取りに行ったペンちゃんが、荒波に打ち返されて岩などに衝突し、脳震盪等を起こしてうずくまっていただけなのかもしれません。とにかく無事でなにより♪

 カゴから取り出す時にちょっとバタバタと暴れたけれど、見た目もきれいで羽が青くツヤツヤと光っています。とても元気そう♪ 私が抱っこした時にほとんど動かず大人しかったのは、犬に驚いたのといきなり人間が来て捕まえられたので怖かっただけのようです。先生に大丈夫とのお墨付きをもらい、ひと安心!

ペンギンを検診中!ペンギン、検診中!

 病院ではこの間、突然の珍客にちょっとした騒ぎになっておりました。代わる代わるスタッフが見に来たり、診察した先生ですら「ちょっと記念撮影を」なんて、自分の携帯電話で写真を撮ってもらっていたほど(笑)。ペンちゃんはこの後、鳥類コーディネーターに引渡し、そこで何日か過ごした後、動物園に保護されるか、野生に戻されることになると思います。

 さて、思いがけず、野生のペンギンを抱っこする機会に恵まれた(?)わけですが、ペンギンの感触はというと・・・・・・なんだか、ボンレスハムのよう。体全体に脂肪がたっぷり付いていて、ボヨヨ~ン&ブニャ~という感じでした…(^^;

先生も珍しかったらしく、ペンギンと記念撮影先生も珍しかったらしく、ペンギンと記念撮影

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

救えなかった小さな命 ~バンディクートの赤ちゃん

助けられなかった…バンディクートの赤ちゃん
標準

 年の瀬も迫った昨日、ヒヨちゃんを保護してから断り続けていた野生動物レスキューに向かいました。

 ヒヨちゃんのケアで手一杯だったこと、そしてヒヨちゃんがいなくなってから気が抜けてしまって、しばらく休みたいという気持ちから、その後3度ほどあったレスキュー依頼をすべて断っていたのです。

 昨日も最初は断ろう…と思っていたのですが、この前のクリスマス会で知り合ったスーからの電話だったので、断りきれず、また、救助の対象が「傷ついたバンディクートの赤ちゃん」ということで、レスキューに向かう決心をしました。

 人間に懐きにくく、恐れを抱いてしまう傾向が強いバンディクート。とても神経質で、近づくとすぐに逃げてしまいます。だから、今回のレスキューは特別ミッション。しかも、赤ちゃんですから「very special=非常に特別な」対処が必要だと、スーも念を押して状況を説明してくれました。

 場所は車で3分もかからないほどの近所。レスキュー依頼者に電話して、10分以内に向かう旨を伝え、速攻で車に乗り込みました。せっかくこの世に受けた小さな命。できる限りのことをして助けてあげたい。そう思いながら救助に向かいました。

 現場へ到着し、傷ついたバンディクートのいる場所へ案内してもらうと、そこは庭に置いてある家型の子供用遊具の中。小さな子供なら中に入って遊べるくらいの大きさのものです。

 プラスティックのドアを開け、中を覗くと隅のほうに小さなバンディクートがうずくまっています。そばには小さなガラスの容器に入れた水。発見者のおじさんが置いてあげたそうです。でも、ぐったりしていて飲んでいないようだと。バンディクートは目を閉じ、水の容器にもたれかかるような感じで、ぐったりと横たわっています。

 まだまだ小さなその子は、ロング・ノーズド・バンディクート。体長は約15cm弱(だいたい成獣の半分程度)、おそらくお母さんから自立して1ヶ月経つか経たないかくらいでしょうか? バンディクートは有袋類であるため、生後○ヶ月というのを特定するのは難しいのです。

 そして一見したところ、お尻から右足にかけて広範囲の毛がざっくりとなくなっており、肌が露出しています。少し肉も見えているのか、赤く見える部分もありました。しかも、化膿しているようで臭いも発しています。かなり重症のよう。。。急がねば!

 元々その中で見つけたのか、それとも家の人が入れたのか、聞き忘れてしまいましたが、、、とにかく早くしなくちゃ!という思いで、私もかがんで中へ入り、保護するためにそっとタオルをかけます。突然の行為にびっくりして、2,3歩ぴょんと跳ねましたが、すぐに抱き上げることができました。

 タオルを敷いたバスケットに静かに入れ、さらに抱き上げる時に使ったタオルを丸くして、顔のそばにシェルターを作り、上からもう一枚のタオルをかけて、蓋を閉じます。さぁ、動物病院へ急行です!

バスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃんバスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃん

 ラッキーなことにこのエリアには、すぐ近くに野生動物を見てくれる病院があります。私達の所属する野生動物保護団体WIRESとも連携しており、無料で診察・治療をしてくれるはず。車で3分ほどのところなのに、途中信号に引っかかったりで、ちょっとイライラ…。その間、バンディクートに向かって「大丈夫だよ。もうすぐ病院だから、頑張ろうね」と声を掛け続けていました。

 病院に到着。先客(飼い犬)がいたため、少し待たされることになりましたが、その間ずっと「頑張ろうね、大丈夫だから」と声を掛け続け、数十分後には先生に診てもらうことができました。

 しかし、先生の判断は……

 「かなり重症だ。治癒するのは難しいと思う。治療に時間がかる場合、野生の子はそのストレスも大きい。かわいそうだけど、このまま眠らせるほうがいいと思う」

 ガーン、、、頭の中で除夜の鐘を叩かれたみたいな衝撃が走り、真っ白に。。

タオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクートタオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクート

 先生がタオルをかけて捕まえたバンディクートを逆さにして、傷口をこちらに見せてくれました。「臭いもひどいから、きっと怪我をしてから数日は経っているはずだ。かなり化膿が奥深くまで進行しているんだよ。車にはねられかけたか、電気ケーブルに接触して怪我をし、弱っているところを猫か犬にやられたのかもしれない」と。

 私自身も抱き上げる時に気になっていた臭い、それは化膿がひどいというサインだったのです。

 「もう少し傷が浅かったら、もしくは、もう少し早く発見されていれば、少しは望みがあったかもしれない。このまま痛みに耐える続けるよりは、眠らせたほうがこの子のためだから」

 先生はそう言って、その子を連れて奥の部屋へ入っていきました。

 ああ、そんな、、、、  大丈夫だから、頑張ろうねと、約束したのに。。(涙)

 帰りの車の中で思い出される小さなバンディクートの姿。バスケットの中でうずくまりながら、開いたその小さな瞳が「生きたい」と言っていたような気がして、胸がキューっと痛くなりました。そして時間を追うごとに、後から後からあふれてくる涙。。

 助けられなくて、、ごめん。。。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

ヒヨちゃん、旅立ちの日

2日目(11月21日)のヒヨちゃん
標準

 涙、涙、涙…。昨日12月20日、ついにヒヨちゃんが旅立っていきました。毎日毎日世話に追われ、なかなかブログも更新できないまま、その日が訪れてしまいました。。(涙)

 ヒヨちゃんが居た場所や夜寝ていたバスケットを見ると、急激に寂しさが襲ってきて、潰れてしまいそうデス……。でもその反対に、毎日毎日、朝早くからヒヨちゃんの餌となる野菜をきざみ、腕は筋肉痛。一日に最低4度、約2時間は餌を食べるため、ほとんどの時間を費やすこととなり、ほとんどヒヨちゃんにかかりっきり。夜寝る前には、水浴び用プールや餌入れ、水入れなどを徹底掃除でヘトヘト。正直少し疲れていたし、世話をしなくてもよくなったことに、心のどこかでホっとしている自分もいます。ああ、矛盾。。。(泣)

すっかりカモらしくなった12日 目のヒヨちゃんすっかりカモらしくなった12日目のヒヨちゃん。
中に入って遊んでいたトレイ
もすっかり小さくなってしまいました。

 カモは集団行動をする習性から、1羽ではなく、同じくらいの他の個体と一緒に育てたほうがいいということで、(あの怠慢…)コーディネーターの鴨舎へ引っ越すことになったのです。池もあるというその鴨舎で、同じくらいのカモたちと一緒にある程度成鳥になるまで過ごし、数羽一緒に放鳥されることになるそうです。

タオルにくるまって寝るのが好きタオルにくるまって寝るのが好きで、タオルは寝るところだと思っていたよう (^ ^;

 ヒヨちゃんをレスキューしたのが11月20日ですから、ちょうど一ヶ月間我が家で過ごしたことになります。うちに来た時、たった25gだった体重も230gを超えるまでに成長し、ほわほわの産毛から本物の(?)鳥の羽に生え変わり始めていました。最後まで(放鳥まで)自分の手で見届けたかったのですが、、、我が家には池もなく、飛ぶようになっても大丈夫な大きな鳥小屋もないため、正直なところ、この先どうしたらいいのか?と思っていました。

 それに、家の中に居るため、どうしても生活パターンが人間と同じになってしまうこと、普段人間しか見ていないためにカモとして暮らせなくなってしまうかも、、という不安もありました。とはいえ、すっかり懐いて、愛着も沸いてしまっているヒヨちゃんを今この状態で手放すのも…と悩みに悩み、日々過ぎていました……。

26日目、フロアでポーズをとるヒヨちゃん26日目、フロアでポーズ!

 ヒヨちゃんを引き取ってから、ウッド・ダックという別の種の子カモを一緒に、という要請もあったのですが、たった1羽のケアでも精一杯で、仕事もほとんど手に付かないような状態だったので、2羽なんてとても無理…と断ったのでした。あの時、ウッド・ダックを引き取っていれば、ヒヨちゃんもまだ我が家に居られたのかも…と少々悔やんだり。。でも、どう考えても、池も鳥小屋もない状態でこれ以上のケアは無理、これでよかったのだと、自分に言い聞かせているところです。

 死んでしまったわけではないのだし、ヒヨちゃんにとっても(カモとして)このほうがよかったのだと、気丈に振舞おうとしても、中途半端な終わり方をしてしまったことへの後悔や愛らしい姿を思い出すと、どうしても涙があふれてきてしまう…(; 😉

 すっかり、ヒヨちゃんロスト症候群です、、、、、

羽も生え始め、すっかり大人らしくなった旅立ち数時間前(昨日)のヒヨちゃん。羽も生え始め、すっかり大人らしくなった旅立ち数時間前(昨日)のヒヨちゃん。

こちらでも、ヒヨちゃんの写真や動画をアップしています。よかったらご覧ください!

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。