それは、空手の大会へ出場するためにやってきたイギリス人から聞いた話がきっかけだった。
「イギリスでね、たった8〜9ポンド(約1800〜2000円程度)でシーフードの盛り合わせが食べられるところがあるんだよ。カニやエビ、貝なんかがね、こんな風に山盛りでさ。採れたてだから、強烈に新鮮なのさ。あの店は俺達にとって伝説のような店なんだ」

何でも物価が高いイギリスにおいて、新鮮なシーフードの盛り合わせがそんな安く食べられるなんて…。もし、チャンスがあったら訪れてみたい。そう思っていた。しかし、肝心のその店の名前を失念してしまい、すぐにそのチャンスには巡りあえないでいた。

あの時の会話を思い出し、彼が口にした単語にひとつひとつでインターネット検索をかける。すると、おそらくそれであろうと思われる店が見つかった!どうやらそれは、ロンドンからさほど遠くないらしい。僕はすぐさま荷物をまとめ、その伝説のシーフードを求めて旅立つことにした。

山盛りの激安シーフードは新鮮そのもの

ロンドンから2時間半程度で、海辺の小さな町に到着する。目当ての魚屋(シーフード)を探して町の外れまで移動すると、まさに海に面した通り沿いに、その伝説の魚屋があった。

かなり年季の入った外観の建物。潮風にやられて、ペンキがところどころハゲている。だが、まだ午前中だというのに何人もの地元客が入れ替わり立ち代りやってくるところを見ると、どうやらこの店はやはり当たりのようだ。


ギシギシと きしむドアを開けて店内へ入る。ズラリと並べられた様々な魚や真っ赤なエビ、ロブスター、牡蠣など、ロンドン、いやイギリスの魚屋では驚くほど豊富な品揃えだ。その場で調理してもらえるようで、調理メニューが壁にかけられている。晴れていれば外で食べたいところが、生憎イギリスの典型的な寒空の日であったため、まだランチ・タイムには早過ぎて準備していなかった店内にスペースを作ってもらう。

噂のシーフード・プラッター(盛り合わせ)と牡蠣を半ダース頼み、待つことしばし。出てきたのはカニやクラム(あさり)、甘エビ、ムー貝などがこぼれんばかりに盛られた皿とぷるんとした生牡蠣。たしかにこれで9ポンドは安い!

ロード・オブ・ザ・リングのホビット村は実在する?

むしゃぶりつくようにカニを食べ始めた時、店のおかみがこんなことを話してくれた。

「日本で噂を聞いて、こんなところまで遥々来てくれるなんて嬉しいねぇ。まったく世の中は狭いもんだ(笑)。ところでね、この辺りにこーんなに小さい玄関の面白い家が集まっているところがあるんだけど、知ってるかい?」

おかみは魚をさばきながら、右手で子供の背丈よりもちょっとばかし高い程度の高さを作ってみせ、笑った。

「それって、あのロード・オブ・ザ・リングのホビットみたいに?」
「ああ、そういえば、そうだねぇ(笑)。とにかく私らなんかじゃ、こんな風にかがまなきゃ入れないのさ。食べ終わったら行ってみるといいよ」

90度近く腰を折ってかがんだ姿勢を見せながら、おかみはガハハと笑った。
そんな、家が本当にあるのだろうか?一体どんな人が住んでいるのだろうか?

追加で大正エビ並みにでかいエビのグリルをオーダーし、満腹になった僕は、おかみや娘さんが延々と話して聞かせてくれるこの店の由来や新鮮な魚介類が提供できるシステムについて耳を傾けながらも、頭の中は実在するという“ホビット村”のことでいっぱいになっていった。

驚きの小さな玄関

その場所は、店からほんの数分程度のところだった。町外れの静かな一角。外に人は誰も出ていない。曲がり角を曲がった瞬間、驚愕した。そこに建つ家々の玄関は、ほんの150センチ程度しかなかったのだ!

これでは、子供もしくは相当背の低い人しか、そのまま入ることは不可能だろう。おかみが言っていたように、普通の大人ならば、かがまなければならない。本当に、あのロード・オブ・ザ・リングに出てくる小人族ホビット達が暮らす家としか思えない造りなのだ――

伝説の激安シーフード店と謎のホビット村、そしてロンドン最新情報を盛り込んだ渾身のレポート。行き方や最新のお店情報てんこ盛りでお届けします。

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