旅で出会った不思議なこと、おもしろい事件、悲しいこと等など・・・つれづれなるままに、書き綴り候…。

イタリア・カプリ島。
『青の洞窟』で知られる南イタリアのカプリ沖に浮かぶ小さな島だ。
島の斜面には、レモン畑が広がり、地中海地方ならではの青い海がどこまでも広がりのどかな田舎の風景が、なぜか郷愁をそそる…。
島の中央部は小高い山の上に位置し、小さな土産店やレストラン、カフェがひしめきあう小さな広場がある。観光で訪れた周辺諸国のヨーロピアン達は、カフェの店先に並べられたアウトドアのテーブル席に座り、遠くを行き交う船の行方に目をやりながら、ゆっくりとコーヒーを口に運び、しばし時間を忘れて寛いでいる。
カーン、カーンとちょうど正午に、広場に面して建つ教会の鐘が鳴り響いた。
するとどこからともなく、ドタドタ、バタバタとものすごい足音を立てながら、猛スピードで、広場に向って走ってくるカラフルな塊が見えた!総勢6名ほどのカラフルな軍団は、日本人とおぼしきアジア系の顔立ちの女性達で、皆一目散に広場の脇のケーブル・カー乗り場を目指しているようだ。
カフェでくつろぐ人々も、その異様な光景に皆一斉に注目する。しかし、少々呆れ顔をしたものの、すぐにまた視線を元に戻し、すっかり時間が止まったかのような自分の世界に戻っていった。
私もそれ以上気に留めることもなく、また再び遠くの海を眺めながらボンヤリと歩いていたのだが、突然、ドンっと何かにぶつかって、思わず「痛っ!」と日本語を発してしまった。
さきほど、まだ遠くに離れていると思っていた、そのカラフルな軍団は、もう私の目の前にまで達し、そのうちの1人から正面からの体当たりを食らってしまったのだ。
「いやぁ〜ん。ビックリしたわぁ!日本語やん」
あのカラフルな軍団は、日本の関西方面からいらした年配の女性達だったようだ。
ぶつかっても謝るでもなく、単に「日本語やー」と言い放ち、「集合時間に遅れるーっ」と叫びながら、ケーブル・カー乗り場の方へ消えていった。
あのカラフルな“おばはん軍団は”消えたが、体当たりの痛みは消えぬまま、なんだかモヤモヤとした気持ちのまま、「遠き島よ、カプリ〜♪」という歌が脳裏によぎった…。しかし、海外でもどこでも、前かがみの体勢で小走りに走っている日本人が多いのはなぜなのだろう?
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