溜まりに溜まったオフィスの資料や本を整理していたら、思わぬものがでてきた。
その昔、フランスへ行った時のパンフレットや航空チケットの控えに混じって、食事をした際のものと思われるレシートが数点。日付をみると「07/09/97」とある。つまり、1997年9月7日のものだ。
薄っぺらいレシートの紙で、店の名刺ともいえるショップカードが2枚巻かれていた。お店の名前は「Les Fous d’en Face」。住所は 3 rue du Bourg Tibourg, 75004 Paris とある。
パリといっても、どの辺にあるどんな店だったのか、とんと覚えていない。食べたのはどうやらセットメニューだったのか、「2人分の食事」といった意味のフランス語だけが書かれていた。金額はたぶん311フラン。日本円にすると5,600円くらいか?
まあ、そんなレシートの内容はどうでもいい。
とにかく、レシートの一番下にある「TOTAL SERVICE COMPRIS(サービス料込みの合計額)」欄に、目が釘付けになってしまった!
そこにあったのは・・・
あ り が と う
いや、よく見ると・・・
あ り か と う
だ!
子供が書いたような、ちょっとのたくったような文字でハッキリと「ありかとう」と日本語(平仮名)が書かれていた!!
濁音にはなっていなかったけれど、「ありがとう」と書きたかったのはよくわかる。日本語を習っている、もしくは習ったことのある店員さんだったのだろうか?!
サービス欄に「ありがとう」とは、感激。粋なことをしてくれる。泣けるじゃないかーーっ!(T . T)
このレシートを見つけたことで、19年ぶりに記憶の片隅から甦ったこのパリのレストランに、もう一度行ってみたくなった。
すぐさまネットに繋ぎ、Google先生に訊いてみる。今は便利だ。この店に行った19年前は、まだGoogleなんてなかった時代だもの。ちなみに、Googleの設立は1998年9月4日だそうで、この店に行った日からちょうど約1年後に、この世に登場することになる。
しかし、Google先生は悲しい結果を導き出した…
閉 業
・・・閉店していた…
・・・・・マジかよ、、なんてこった、、、がっかり…(;_;)
でも、Google先生は忘れていた様々なことを教えてくれた。
お店の場所はマレ地区、地下鉄のオテル・ド・ヴィル駅から歩けるところにあった。そして、ネット上に残された世界中の人々の足跡(投稿写真)からお店の雰囲気もわかった。
そうそう、こんな感じの、素朴でいかにもフランスの片田舎風と言った感じのビストロだったよ!
それでも残念ながら、何を食べたのかは未だに思い出せていない。けれども、その店は割と評判がよく、2014年頃までは同じ場所で営業していたこともわかった。
何人かがこの店を訪れた感想や紹介文をブログに書き留めてくれていて、つい数年ほど前までのお店の様子を今でも知ることができる。
パリにいくつかあるホテルが運営するブログでは、お料理まで詳細に記され、「お気に入りのパリジャン・レストラン」としてリストに挙げていた。
▼“Les Fous d’en Face” restaurant in Paris
以下のブログはフランス語のため、内容はすべて把握できないけれども、今手元にある19年前のショップカードは、ほぼそのままのデザインで2012年まで使用されていたことがわかった。たぶん、閉店するまでずっと同じデザインだったのだろう。
▼Les fous d’en face
レストランで食事をして、こんなに嬉しい気持ちにさせてくれるレシートをもらったことは他にはない。なのに、「もう一度行ってみたい!」というささやかな願いは、もう二度と叶わないのが寂しい…
それでも、いろいろと検索してみたら、閉店するまで地元の人を含め、たくさんの人々に愛されたレストランだったであろうことがわかって、少し心が温かくなった。
くーーー、それにしても残念!!!
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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