野球では食っていけない!?オーストラリアの野球事情とWBC

シドニー五輪時の野球の試合会場
標準

3月7日より、野球世界一を決めるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2017が開幕した。

4年に一度の頂上決戦の大舞台へ、オーストラリアは予選を勝ち抜いて一次ラウンド出場権を獲得。日本と同グループ、プールBでの対戦が決まった。

オーストラリアでは、けっしてポピュラーなスポーツとは言えない野球。

選手のほとんどが本職を別に持つセミ・プロなのに、五輪アテネ大会では、日本を2度も破り、銀メダルを獲得するなど、ちょっと侮れないチームなのだ。

 

WBC 2017オーストラリア vs日本

昨日8日、オーストラリアは今大会初戦で、いきなり強豪・日本と激突!

先制ホームランでリードしたものの、1-4で敗れた、、、が、内容そのものはそれほど悪いとはいえない。

先発した日本のエース・菅野には、ヒットこそなかなかでないものの、割とタイミングもあっていて、4回と5回に得点圏へランナーを進めた。

もし、大会規定の投球数制限がなく、そのまま菅野が続投していたら、あと1、2点は入っていたかもしれないし、逆にオーストラリアの先発アサートンにも手こずっていた日本が、投球数制限もあって投手交代となり、それまで抑えられていたのが当たり始めて、流れを掴んだようなところもなきしもあらず。

しかも、今大会の一次ラウンドのプールBの組み合わせでは、オーストラリアと中国は3連戦となっており、「投手の連投は2日間まで」という大会規制のため、思うように投手を使えないジレンマがある。

日本やキューバのように中日(なかび)があれば、ディーブル監督ももっと違う試合の組み立てができたはずだ。

そう考えると、オーストラリアにとっては強豪・日本と同組に入ってしまっただけでなく、試合日程が非常に不利な大会ともいえる。

そんな冷たい仕打ちを浴びながら(?)、自国ではマイナーなスポーツを薄給で一生懸命プレーするオージー軍団。
なんとか本戦に行かせてあげたい!じゃないですか。。。

 

野球では食って行けないオーストラリア

はっきり言おう。

野球は、スポーツ大国オーストラリアでは驚くほどマイナーなスポーツだ!

2010年にMLBの支援を受けて本格的なプロ野球リーグが発足したとはいえ(その前にも似たようなものがあったが、財政難で休止に追い込まれた)、選手のほとんどは本職を別に持つ二足のわらじで、仕事があるため、試合は基本的に、金土日の週末のみ。

※稀に、祝祭日やクリスマス&年末年始などの休暇シーズンには木曜日などに試合があることもある。

プロと言っても、選手たちの平均報酬は週300豪ドル(約27,000円)にも満たない。ほとんどが月給にすると約1,000豪ドル(約90,000円)程度だという。これだと、一試合当たり貰えるのは1万円前後のお小遣い程度にしかならない。

明らかに一般的な日本のサラリーマンより待遇が悪い。しかも、日本より物価の高いオーストラリアでこの給料ではとてもじゃないが、食べていけない。

だから、選手たちは、消防士や工場勤務などをしながら野球を続けるしかないのが実情なのだ。そう、それはまるで、クラブ活動か趣味でやっている草野球のように…

今回のWBC出場のために選出された選手たちのほとんどは、こうした国内リーグ所属の選手だ。

だからこそ、野球を国内で認知させるためにも、本大会へ出場し、いい活躍をして、メジャーリーグや日本などのプロ野球界に目をつけてもらえるような場にしてあげたいじゃないの!

それに、年俸何千万円とか何億円ももらう日本のプロ野球の一流選手を相手に、草野球レベルのオージー軍団がわずか4点しかとられていないのだ。世界にもっと一泡吹かせてやりたいじゃないですか。

 

野球はなぜオーストラリアで人気がないのか?

五輪で銀メダルとっても、オーストラリア国内では、ほとんど見向きもされなかった野球というスポーツ。

なぜそんなにマイナーで人気がないのかといえば、いくつか理由がある。

そのひとつは、よく言われるように「他に強いスポーツがいくつもあるから」。確かに、オーストラリアはラグビーやクリケット、豪国内独自のオージー・フットボールなどがあり、どれも大変な人気だ。

※ラグビーについては、日本人が思うラグビーと若干違っていると思うので、こちらをご参照ください。

野球と並んでマイナーなスポーツと言われ続けてきたサッカーでさえ、プロリーグが発足し、順調にファンやプレー人口を増やしている。

それなのに、野球ときたら、いつまでたってもとんと冴えない。。。

それは、オージーのアメリカ・アレルギーにも一因があるようなのだ。
実はオージーは、アメリカ嫌いが多い(笑)

昨日もWBCで戦うオーストラリア代表に対し、こんなご意見が・・・

 
まあ、こんなにあからさまな人は珍しいけれど、アメリカをあんまりよく思ってない人は意外と多い。

その証拠に、スターバックスやアバクロなど、アメリカの有名企業がオーストラリアへ進出しても、ことごとく叩きのめされて(利用者や販売数が少なく経営不振に陥る)、追い出してしまったりする。
注意)IT企業はこの限りではありません。

そんなわけで、野球=アメリカ発祥のスポーツ、というイメージから、なかなか根付かないところもありそうなのだ。

ともあれ、オーストラリアで野球が人気のスポーツになれば、身体的能力の高い人材がいっぱいいるから、すごいチームになりそう。

ちなみに、スポーツのオーストラリア代表チームには、例えば、サッカーなら「サッカルーズ」、ホッケーなら「クッカバラズ」といった愛称がついているのだけれど、一応、野球チームにも愛称がついている。

その名は、「サザン・サンダー」。

直訳すれば「南の雷」、南からやって来て雷のように一撃するぜ!という心意気が込められている。
がんばれ、オージー雷軍団!!!

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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