ポッサムとオウムとワライカワセミ、3種の野生動物をレスキュー

ぐったりとして動かないポッサム
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 先週の月曜日は忙しい一日でした。仕事が忙しいのならまだしも、野生動物のレスキューに振り回されて、忙しかっただけなのですが…。

 まず最初に受けたレスキュー依頼は、『ポッサム』。近所の家で、かなり重症と思われるポッサムが倒れているので、救助してきて欲しいというものでした。ポッサムはこのブログでも何度か書いていますが、猫くらいの大きさの有袋類。我が家にも毎夜やってくるので、付き合い方は慣れたものです。ですが、かなり重症のようで、動くことができないとのこと。これは絶対に助けたい!

 急いでレスキューバスケットやタオルなどを用意して現場へ。場所は、我が家から車でほんの2分ほどのご近所でした。発見者の女性に案内されて、家の中を通り、ポッサムがいるというデッキへ行くと、誰でもが簡単に手の届くあたりに、ポッサムが横たわっていました。

 大きさからして、成獣のよう。ぐったりと顔を下に付けたまま、「死んでいるのかも?」と思うほど、まったく動きません。ですが、よく見ると、まだ呼吸しています。発見者の女性がかけてあげたというタオルが、体半分に掛けられており、近くには水と小さな器にキャットフードが入れてありました。

 彼女によれば、「右目のところを怪我しているようで、かなり酷いことになっている。でもここへ来て、これ(キャットフード)を食べていたの」とのこと。たしかにキャットフードは減っているし、彼女に「たくさん食べたのかな?」と聞くと、「たぶん昨夜か今朝も食べていたと思う」というので、これは、まだ助かるかもしれない!と、急いで抱き上げ、バスケットに入れました。

 そして、発見者の女性に通報のお礼を言い、急いで近くの動物病院へ!それにしても、ぐったりとほとんど動かないのが気になります。病院に着くと、バスケットごと先生に渡し、そのまま診療、入院となりました。

 そして自宅に戻る途中、再びレスキュー依頼の電話が…。正直、今日はもう勘弁して、、と思ったのですが、一応、依頼内容を聞くことに。すると、レスキューというよりは、すでに動物病院に預けられている『コッカトゥー(白いオウム)』を引取りに行って欲しいということでした。電話の途中で、別のもう一件もお願いしたいというので、話しを聞いてみると、「コッカトゥーを引取った後、別の病院で『クッカバラ(ワライカワセミ)』も引取ってきて欲しい」と…。

 ええい、こうなりゃ、一羽も二羽も一緒だ~!!

 まず向かったのは、コッカトゥーのいるマンリー近く。我が家からは車で20分ほどのところです。動物病院へ行くと、すぐに該当のコッカトゥーを連れてきてくれたのですが、スタッフの女の子は怖いのか、「タオルを持ってくるからやって」と、投げ出す始末。仕方なく、カゴからそっと取り出し、自分のバスケットへ。

 その後、鳥類コーディネーターに指示を仰ぐため電話すると、「そこの動物病院は鳥は得意じゃないから、保護された状況を聞いて、別のところでもう一度ちゃんと診てもらうようにして欲しい」とのこと。というわけで、相方が病院のスタッフに「どこで、どんな風に保護されて、ここへ来たのか?」を聞きに行く羽目になりました…。

片っ端から何でも噛みまくるコッカトゥー(白オウム)片っ端から何でも噛みまくるコッカトゥー(白オウム)

 病院スタッフの話では、「この近所に住む住人の庭で、飛ばずにずっと歩いているのを見つけ、おかしいと思い保護し、ここへ連れてきたらしい」というではありませんか。つまり、鳥なのに飛べないというのです!何か、どこかがおかしいに違いない。病気なのかも?というわけで、結局、再度別の動物病院へ搬送することになりました。

 搬送途中、カゴの中のコッカトゥーは、ずっとカゴのふちをガシガシ噛みっ放し…、ときおり、動物病院の誰かがくれたリンゴを齧ってみたりもするのですが、とにかく、どこでも噛みまくるのです。「噛んじゃダメ!」と叱ると、一瞬こちらをジっと見て止めるのですが、またそのうち、カミカミカミカミ、ガシガシガシガシと始まる。コッカトゥーは本当にタチが悪い!コッカトゥーのくちばしの強さはハンパじゃなく、硬い配管パイプにも穴を開けられるほどなのです。

 指定された別の動物病院へ行くと、そこは確かに鳥の患者が多いようで、待合室には2羽のセキセイインコが診察を待っていました。コッカトゥーを先生に預け、ホッとしたのも束の間、次はクッカバラの待つ、また別の動物病院へ。話は伝わっているようで、すぐにわかったのですが、なかなか当のクッカバラを連れてきてくれません。

 しばらくすると、「クッカバラ、今朝までは元気だったのだけど、急に容態が変化して…。もしかして、内臓にダメージがあるのかもしれない。あまり良くないから、あと数日診たい」とのこと。結局連れ帰ることなく、引き続き入院治療することになりました。

 気がつけば、日はすっかり暮れ、もうすぐ夜。とにかく願うのは、この日関わった子たちが皆、元気で無事に野生に帰れるように、ということだけです。それにしても、ほぼ一日中、動物たちのために奔走してしまった…あー、疲れた!

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

救えなかった小さな命 ~バンディクートの赤ちゃん

助けられなかった…バンディクートの赤ちゃん
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 年の瀬も迫った昨日、ヒヨちゃんを保護してから断り続けていた野生動物レスキューに向かいました。

 ヒヨちゃんのケアで手一杯だったこと、そしてヒヨちゃんがいなくなってから気が抜けてしまって、しばらく休みたいという気持ちから、その後3度ほどあったレスキュー依頼をすべて断っていたのです。

 昨日も最初は断ろう…と思っていたのですが、この前のクリスマス会で知り合ったスーからの電話だったので、断りきれず、また、救助の対象が「傷ついたバンディクートの赤ちゃん」ということで、レスキューに向かう決心をしました。

 人間に懐きにくく、恐れを抱いてしまう傾向が強いバンディクート。とても神経質で、近づくとすぐに逃げてしまいます。だから、今回のレスキューは特別ミッション。しかも、赤ちゃんですから「very special=非常に特別な」対処が必要だと、スーも念を押して状況を説明してくれました。

 場所は車で3分もかからないほどの近所。レスキュー依頼者に電話して、10分以内に向かう旨を伝え、速攻で車に乗り込みました。せっかくこの世に受けた小さな命。できる限りのことをして助けてあげたい。そう思いながら救助に向かいました。

 現場へ到着し、傷ついたバンディクートのいる場所へ案内してもらうと、そこは庭に置いてある家型の子供用遊具の中。小さな子供なら中に入って遊べるくらいの大きさのものです。

 プラスティックのドアを開け、中を覗くと隅のほうに小さなバンディクートがうずくまっています。そばには小さなガラスの容器に入れた水。発見者のおじさんが置いてあげたそうです。でも、ぐったりしていて飲んでいないようだと。バンディクートは目を閉じ、水の容器にもたれかかるような感じで、ぐったりと横たわっています。

 まだまだ小さなその子は、ロング・ノーズド・バンディクート。体長は約15cm弱(だいたい成獣の半分程度)、おそらくお母さんから自立して1ヶ月経つか経たないかくらいでしょうか? バンディクートは有袋類であるため、生後○ヶ月というのを特定するのは難しいのです。

 そして一見したところ、お尻から右足にかけて広範囲の毛がざっくりとなくなっており、肌が露出しています。少し肉も見えているのか、赤く見える部分もありました。しかも、化膿しているようで臭いも発しています。かなり重症のよう。。。急がねば!

 元々その中で見つけたのか、それとも家の人が入れたのか、聞き忘れてしまいましたが、、、とにかく早くしなくちゃ!という思いで、私もかがんで中へ入り、保護するためにそっとタオルをかけます。突然の行為にびっくりして、2,3歩ぴょんと跳ねましたが、すぐに抱き上げることができました。

 タオルを敷いたバスケットに静かに入れ、さらに抱き上げる時に使ったタオルを丸くして、顔のそばにシェルターを作り、上からもう一枚のタオルをかけて、蓋を閉じます。さぁ、動物病院へ急行です!

バスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃんバスケットの中でうずくまるバンディクートの赤ちゃん

 ラッキーなことにこのエリアには、すぐ近くに野生動物を見てくれる病院があります。私達の所属する野生動物保護団体WIRESとも連携しており、無料で診察・治療をしてくれるはず。車で3分ほどのところなのに、途中信号に引っかかったりで、ちょっとイライラ…。その間、バンディクートに向かって「大丈夫だよ。もうすぐ病院だから、頑張ろうね」と声を掛け続けていました。

 病院に到着。先客(飼い犬)がいたため、少し待たされることになりましたが、その間ずっと「頑張ろうね、大丈夫だから」と声を掛け続け、数十分後には先生に診てもらうことができました。

 しかし、先生の判断は……

 「かなり重症だ。治癒するのは難しいと思う。治療に時間がかる場合、野生の子はそのストレスも大きい。かわいそうだけど、このまま眠らせるほうがいいと思う」

 ガーン、、、頭の中で除夜の鐘を叩かれたみたいな衝撃が走り、真っ白に。。

タオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクートタオルで作ったシェルターに顔を突っ込み、光を避ける夜行性のバンディクート

 先生がタオルをかけて捕まえたバンディクートを逆さにして、傷口をこちらに見せてくれました。「臭いもひどいから、きっと怪我をしてから数日は経っているはずだ。かなり化膿が奥深くまで進行しているんだよ。車にはねられかけたか、電気ケーブルに接触して怪我をし、弱っているところを猫か犬にやられたのかもしれない」と。

 私自身も抱き上げる時に気になっていた臭い、それは化膿がひどいというサインだったのです。

 「もう少し傷が浅かったら、もしくは、もう少し早く発見されていれば、少しは望みがあったかもしれない。このまま痛みに耐える続けるよりは、眠らせたほうがこの子のためだから」

 先生はそう言って、その子を連れて奥の部屋へ入っていきました。

 ああ、そんな、、、、  大丈夫だから、頑張ろうねと、約束したのに。。(涙)

 帰りの車の中で思い出される小さなバンディクートの姿。バスケットの中でうずくまりながら、開いたその小さな瞳が「生きたい」と言っていたような気がして、胸がキューっと痛くなりました。そして時間を追うごとに、後から後からあふれてくる涙。。

 助けられなくて、、ごめん。。。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

固有種1,300種以上!オーストラリアに見る生物多様性

固有種1,300種以上!オーストラリアに見る 生物多様性
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@-Waveウェブ旅マガジン・たびまぐで「世界最多の固有種1,300種以上!オーストラリアに見る生物多様性」をアップしました!

先日お知らせした「エコレポ」に続き、日頃から取り組んでいるオーストラリアの環境やエコについての活動や情報配信を形にしていくプロジェクト第二弾でもあります。

折りしも今年2010年は、『国際生物多様性年』。10月18日からは、名古屋で『生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)』が開催される、というわけで、ちょうどタイムリーな話題だと思います。

とはいえ、実はこの企画、彼是もう数年前から準備を始めていたもの。ですが、資料を集め、原稿をまとめている際にも次々と新情報が入ってきたり、さらなる事実が判明したりで、結構てんやわいや(??)でした(笑)。

生物の多様性にかけては、他に類を見ないほど富んでいるオーストラリア。その凄さが少しでも伝われば…と思っています。読み応えたっぷりの力作(?)ですので、休日の暇つぶしに(?)是非どうぞ!

★@-Waveウェブ旅マガジン・たびまぐ「世界最多の固有種1,300種以上!オーストラリアに見る生物多様性

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