メルボルン春の陣 ~流血の第3ラウンド

歴史あるメルボルンカップが開催されるフレミントン競馬場
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 いよいよ今回のメルボルン取材最終日。午前中は市内のレストランやショップ、公園などを取材し、昨日の興奮冷めやらぬフレミントン競馬場を再び目指す。シドニーへ戻る便の出発時刻まで、またまたN嬢の案内でフレミントン競馬場のバックステージツアーを取材することになっている。

 それにしても、昨日のメルボルカップは凄かった!レース出走前からざわめき立つ観衆。ゲートが開き、馬たちが走り出した瞬間には、地の底から湧き上がるような歓声が上がり、それが徐々に大きくなって、ゴール寸前に爆発!場内が一気に、鳥肌が立つほどの興奮と熱気に包まれる。あんな感覚は今までにないものだったし、単なる興奮とか、高揚とか、そんなありきたりな言葉では表せない凄い体験だった。あの場にいなければ絶対にわからないものだと思うので、一度は体験する価値あり!です。

ヨーロッパ調の佇まいが美しい、メルボルンのブロックアーケードヨーロッパ調の佇まいが美しい、メルボルンのブロックアーケード

 さて、N嬢との待ち合わせ時間は、元々スケジュールでは15:30だったのが、彼女の都合で16:00に変更になっていた。ちなみにシドニー行きの便は19:30なので、17:30に空港へ向かう車を手配してもらっている。…しかし、約束の時間を過ぎても彼女は現れず。このままだと、ツアー取材はキャンセルして空港に向かわなくてはならない。

 そろそろ30分が経過しようかという、その時「遅くなってごめんなさ~い」とN嬢、登場。我々の荷物一式を事務所に預け、「博物館までちょっと距離があるので、車で向かいましょう。でも、私の車すごく汚いの。気にしないで」と。ええ、そんなくらいのことはお安い御用ですよ、とつぶやきながら歩き出し、彼女の車を目の前にして、目が点…。

 そこに停められていたのは、これ、本当に動くのでしょうか?というくらい、そこらじゅうがぶつけられた状態でボコボコ&擦り傷だらけの車。左のバックミラーは半分割れて、今にもボロリと取れてしまいそう。一見しただけでは、廃車か?と思ってしまうほど。

 案の定、キーレス・エントリーが効かず、ドアは開かない。「あれ?あれ?」と言いながら、何度もボタンを押すN嬢。(この車にそれを要求するのは無理ですから…と心の底で思いながら)キーレスエントリーは諦めて、普通に開けましょうよと諭す私たち。

 しばらくキレースエントリーに固執していた彼女もようやく諦め、仕方なくキーホールに直接キーを差し込んで、ドアを開ける。そして、荷物を入れるようにと開けてくれたトランクを覗き込んで、これまた愕然…………。
 キタ────∵・(゚∀゚)・∵────ッ!!!!

 洋服や靴、食べ物、雑誌などが、あたり構わずぶち込んであって、ゴミ箱?と見紛うほど。。まあ、そんなことはどうでもいい。見なかったことにしますから、お願いですから安全運転で。と、神様にお願いしてしまったのは言うまでもありません。

祭りのあとは、こんな状態……。彼女だけではない?(- -;祭りのあとは、こんな状態……。彼女だけではない?(- -;

 そして、エンジン始動。のはずが、、、、、キーを回せども、スコッと頼りない音を発するばかりで、車はウンともスンとも言わず、ストライキに突入。。(あまりにケアしてもらえてないので、スト起こしても仕方ないわな…と車に同情してしまう私)

 どうやら、バッテリーが上がっている様子。ほんの5分ほどだったのだけれど、ライトをつけっぱなしにしたのが原因のようだ。「あーん、どうしよう。。」と、頭を抱えるN嬢。私だって、どうしよう~(いや、どうなっちゃうの~)と叫びたい気持ちでいっぱい…です…(泣)

メルボルンカップ博物館に飾られた優勝トロフィーメルボルンカップ博物館に飾られた優勝トロフィー

 「誰かに車出してもらうから、ちょっと待ってて」と走り出すN嬢。それから10分ほどで、同僚を連れて来た。助っ人に来てくれたスタッフの車に乗り換え、ようやくメルボルンカップ歴史博物館へと向かう。本来このツアーの所要時間は約1時間なのだそうだが、この時点でタイムリミットは、あと40分。うーむ、今日もやはり駆け足か……(- -;。

 博物館の専属ガイドが、大きな荷物は預かりましょうと、手持ちの撮影機材を除いて、カメラバッグをクロークへ入れることを勧める。この時、相棒は「いや、大丈夫です」と断りかけたのだけれど、N嬢も「大丈夫よ。また戻ってくるから預けてください」と促すので、その言葉を信じて預けることに。しかし、ここでのこの判断が、再び悪夢を引き起こすことに、我々はまだ気づいていなかった……。

 1時間かかるツアーを40分以内でこなさなければならないため、かなり駆け足状態で博物館ガイドの説明を聞く。ツアーは基本的に英語だが、日本語のipodを無料貸出ししてくれるので、日本人旅行者でも安心して参加できるようになっているらしい。試しにどうぞとipodを渡されたけれど、そんなの聞いている時間は、ない。

歴史を作った日本馬デルタブルースとポップロックの活躍シーンも見られる!歴史を作った日本馬デルタブルースとポップロックの活躍シーンも見られる!

 ツアーはN嬢先導で行われ、途中でドアが閉まっていて開かないとか、本来は入れるはずのエリアへも鍵がなくて行けないとか、そういった細かいトラブルは常について回り、最初に訪れた博物館からは、もうかなりの距離を歩いてきていた。フレミントン競馬場はなんたって広いっ!N嬢は、ゲートの外に我々を迎えに来てくれている空港送迎車を見つけ、「ほら、時間ぴったし!」と得意満面になって小躍りした。博物館に荷物を預けたことなど、もうすっかり忘れてしまっているようで……(- -;

 「博物館に預けた荷物は、どうすれば?」と尋ねると、「あー、いけない!!私がとってくる!」と、乗りかけた車を降りて走り出してしまった。えぇぇぇーーー、、、とってくると言っても、もうかなり遠くまで来てしまっているんですけど。。 そんなことはお構いなしに猛スピードで走るN嬢を慌てて相棒が追いかける。ああ、再び小雨が振り出した競馬場内を猛ダッシュで走ることに。。(涙)

 車に戻ってきたのは、それから約15分(いや20分?)後。本当に急いで空港へ向かわねば!N嬢はここで機転を利かし、本来一般車が通れない場内を通行できるように警備員に交渉。すんなりOKが出て、我々は競馬場内を走行できることになった。ん?場内を通るということは、あの博物館の横を通るのでは・・・・・・?

 思った通り、私たちを乗せた車は、博物館の真横をスルー。あぁぁぁぁ、さっきの猛ダッシュは何だったの~!? 最初から警備員に交渉しておくれよ~…(泣) ゼーゼーと息を切らしながら、恨めしそうに博物館を横目で眺める。悲しいーっ!!!

メルボルン中心部の道端で見つけた馬マークのマンホールメルボルン中心部の道端で見つけた馬マークのマンホール

 事務所に預けていた荷物一式をピックアップし、さあ大至急空港へ直行です!3日間毎日顔を突き合せたN嬢とも、ここでお別れ。明日からもう彼女に会わなくて済むということが、ホっとするような、なんだか寂しいような複雑な気持ち…(^^; なんだかたくさんありすぎて、めちゃくちゃ大変だったけれど、一応なんとかすべて間に合っているのが、ある意味スゴイと思う。何はともあれ一生懸命な彼女に(いろいろな意味で)脱帽した3日間でありました。

 そして、このメルボルン滞在以降、しばらく足が絆創膏だらけだったのは言うまでもありません。。。(苦笑)

 ★ちなみに、このメルボルンカップ&フレミントン競馬場のツアーの詳細はこちらでご紹介しています。普通はN嬢ではなく、ちゃんとしたガイドさんの案内ですのでご安心を!?(笑)。

新緑が美しい春のメルボルン新緑が美しい春のメルボルン

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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

メルボルン春の陣 ~怒涛の第2ラウンド

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 昨日の足の疲れも癒えぬまま、いよいよメルボルンカップ当日。朝、ホテルのロビーに集合して、電車でフレミントン競馬場へと向かうことに。

 まだ早い時間だというのに、駅には大勢の人、人、人!しかも皆、「どこへ行くんだ?」というようなゴージャスなドレスやスーツに身を包み、女性の頭は「未開の地の原住民か?」と見紛うようなカラフルな羽飾りで彩られている。

 電車がホームに滑り込んで来るや否や、どーっと人が押し寄せ、座れない人が出るほどの盛況ぶり。行き先はフレミントン・レースコースなので、乗車している全員が今日のレースに直行!です。

あまりのハデさに注目の的だった羽飾りの女性あまりのハデさに注目の的だった羽飾りの女性

 電車は途中2つの駅に停車し、フレミントン競馬場に到着。まず我々は、集合場所であるインターナショナルラウンジへと向かう。ラウンジはまだレース前だったこともあり、一応座って飲み物飲んだり、食べたりできたのでよかったのだけれど、ほんの30分ほどで昨日同様、N嬢に先導され、スポンサーが出しているマーキーだとか、ファッションショーだとかをぐるぐる回ることに。

メルボルンカップのファッションショー

 しかし、途中で雨が降っ たため、ファッションショーをやる大テントの足場はぐちゃぐちゃ。浸水した泥沼牧場のようになっていて、靴のヒールが泥の中に3~4cmも沈み込んでしまうほど!ファッションショーを見に来ている人々は、皆ハデなドレスに身を包み、高~いハイヒール。しかし、彼女達の足元に目をやると、この日のために揃えた(と思われる)ゴージャスな靴は、泥に埋まってドロドロ…。サンダルを履いた人は、足が泥遊びしたような状態になっている。

 #ちなみに、後で自分の靴を見た ら、ヒール先のゴムが泥に埋まって取れてしまっていた…(泣)。相棒の靴は浸水しすぎで壊れてしまい、ラウンジに戻って、ビニールテープをぐるぐる巻きにして応急処置。茶色の靴に黒いビニールテープがなんとも妙、、(^^;。とはいえ、身なりを構っている場合じゃありません!

靴を脱ぎ捨ててしまった人も…。予めビーチサンダルを用意していた兵もいた!靴を脱ぎ捨ててしまった人も…。予めビーチサンダルを用意していた兵(つわもの)もいた!

 そして、いよいよ本日のハイライト、メルボルンカップ・レース出走まであとわずか!となり、スタンドへ移動することに。しかし、スタンド方面は既に、砂糖に群がるアリのように大勢の人が押し寄せている。その人々をかき分けながら、一目散にスタンドを目指す。

 レース出走まであと15分。なのに我々ときたら、アジアからの取材陣が途中でトイレの騒ぎをするわ(先に行っとけつーの)、いまだどこに陣取っていいかわからない状態でウロウロ。どうやら、N嬢は場所を確保していなかった模様。とりあえず、通路の最上部で待機することに。N嬢、しっかりしてちょうだい!と叫びたい気持ちでいっぱい…です……(;;)。

 いよいよあと10分。と、その時、それまで場所確保の交渉をしていたN嬢が、いきなりこちらを振り返り、この期に及んで「ここはダメだっていうから、上へ移動しましょう。今すぐに!急いで!」と。

 へ?今から?あと10分切ったんですけど??
「とにかく、今すぐ移動するのよ!早く!!」と叫ぶN嬢。
ぐえ’’ーっマ、マジですか ?!?! あそこまで行くには、どう見てもあと3階以上は上らなきゃならないし、まだ結構な距離がありますが・・・・・・?

この上にもまだ観客席がある。フレミントン競馬場は広い!この上にもまだ観客席がある。フレミントン競馬場は広い!

 日本のS新聞社のKさんたちは、半ば怒り心頭で、「自分達はもうここでいいです!(>キッパリ)」と、N嬢に従うことを拒否。N隊からの戦線離脱を宣言。えぇぇぇ…どうすれば。。でも、上のほうが よく見えるかもしれない。そんなかすかな期待もあって、とりあえず彼女の後をついていくことを決断した私たち。4人でフレミントン競馬場内を走る、走る、走る!もう、なりふり構わず、猛ダ~ッシュです!!

 皆着飾って、出走を心待ちにしながら、楽しく飲んだりおしゃべりしたりしているフレミントン競馬場スタンド内をものスゴイ形相で、猛ダッシュで駆け抜ける奇妙な4人組。「何なの?この人たち、なんで走り回ってるわけ?」という皆の視線が痛いっ。。エレベーターなんて待っている暇はありません!エスカレーターだって、靴音をカッツンカッツンいわせながら、走って駆け上り、階段だって、もちろん猛スピードでダーッシュ!

とにかく凄い人!

 レース出走4分前。ゼーゼーしながら、スタジオの最上部に到着。ああ、もう撮影機材をスタンバイしている時間はない。撮影担当は、慌ててレンズを取り付け、無我夢中でコース上にカメラを向ける。あれよあれよという間に、場内が怒涛のような歓声があがり、馬が走り出してしまった…。

メルボルカップ出走前、観客で埋め尽くされたフレミントン競馬場メルボルカップ出走前、観客で埋め尽くされたフレミントン競馬場

 ほぼ全員が総立ちになって、怒りとも喜びとも言えない、もの凄い歓声が沸き起こり、場内が熱気と興奮の渦に包まれ、レース終了。ゴール寸前は、総立ちになった大きなオージーたちが立ちはだかり、目の前が真っ暗になって、ほとんど何も見えなかったのありました…(涙)。

 それでもN嬢は、「間に合ってよかったね♪」と、、、うーむ、そういう もんだろうか。。結局、この日もほぼ立ちっ放し、おまけにヒール靴で猛ダッシュですから、足の疲れ、いや痛みはハンパじゃありませんっ!(泣)

 そんなこんなで、今回のメインイベントであったメルボルンカップも終焉。しかし、あんな状況でもなんとか撮影できていたのは、奇跡以外の何ものでもありません。。。明日こそ、じっくりと最後の仕事にかかりたいところ…だけれど、そう簡単にはいかないのが世の常。明日もN嬢の案内で、競馬場内のツアーが待っている…。あたしゃ、もうすっかりトラウマ状態です・・・・・・(涙)。>>続きはこちら!

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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

スポナビ、全オーストラリア国民の誇り―メルボルンカップ

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 先日取材してきた「メルボルンカップ」のコラム記事が、スポーツナビに掲載されました!スポーツナビは、Yahoo!スポーツ(Y! スポーツ)とも連動しているので、Y! スポーツ・コラムのほうでも掲載になっています。今回のコラムは、競馬雑誌&競馬ポータルサイトの「UMAJIN(ウマジン)」へ寄稿したもので、そちらのサイトでもご覧いただけます。

 また、UMAJINサイトには、メルボルンカップのフォト日記もあり、弊社で撮影した写真もたくさんご覧いただけますので、そちらもあわせてどうぞ!(写真クレジットが撮影:平野正洋 Wave Planning Pty Ltd.のものみ)

 このコラム、スポナビ担当者の方からも「「オーストラリア国民のメルボルンカップに対する愛着というものが、すごく伝わってくるコラムで大変面白かった」と言っていただき、好評でした! 競馬に興味のない方にも楽しんでいただけると思いますので、お暇な時にでも読んでみてください!

全オーストラリア国民の誇り―メルボルンカップ(1/2)(追記)
以下のコラム掲載ページは、時間が経ったためにリンク切れになっています。そこで、コラムをお読みいただけるよう、当時のスポーツナビ掲載ページのキャプチャー画面(全2ページ:上が1ページめ、下が2ページめ)を2013/10/13付けで、こちらに掲載しました。右の画像をクリックしていただくと、拡大します。

★スポーツナビ「全オーストラリア国民の誇り―メルボルンカップ

全オーストラリア国民の誇り―メルボルンカップ(2/2)Y!スポーツ

★UMAJIN(ウマジン)「メルボルンC現地レポ(1)日本の馬はトラウマ?」「メルボルンC現地レポ(2)豪州競馬史に名を刻む日本馬」「藤田伸二×メルボルンカップ・フォト日記

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トウカイトリック12着は騎手の判断ミス?

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 オーストラリア最高峰かつ、国民に最も愛される競馬レース「メルボルンカップ(杯)」。今年は第150回という記念すべき大会であり、4年ぶりに日本馬が参戦することで話題に!2006年146回大会では、日本から参戦したデルタブルースとポックロックが1、2着となり、由緒あるカップ史上初めて、日本の馬が新たな1ページを加えた。

 しかし翌年、豪州国内で馬インフルエンザが確認され、日本から来た馬が原因ではないかとされたため、この4年間日本の馬は輸入禁止に…。今年1月末になってようやく解除されたのだけれど、この日本馬の輸入禁止措置については、メルボルンカップにおける日本馬の活躍に恐れをなしたのでは?という噂もささやかれたほどだった。

残り200m地点を疾走するトウカイトリック残り200m地点を疾走するトウカイトリック

 そんな中、久々に日本から参戦したのがトウカイトリック号。9歳馬であることや、メルボルンカップ前哨戦といわれるコーフィールドカップで12着と揮わなかったことから、人気は低迷していたが、トウカイトリック陣営は、「環境にも馴染み、馬の状態は万全」と好調をアピール。もし、トウカイトリックに賭けて勝ったら、大穴(約90倍)!という状況で当日を迎えることとなる。

 ときおり雨がパラつく生憎の天候の中、メルボルン郊外にあるフレミントン競馬場には、約11万人もの観客が詰め掛けた。午前中は一瞬青空も覗いたが、これまでの天候不順と前夜の雨もあって、独特の洋ナシ形をしたフレミントン競馬場の馬場の状態は、想像よりも悪くなっていたようだ。

(左)約11万人が詰め掛け超満員のフレミントン競馬場、(右)メルボルンカップで最初のカーブに差し掛かった馬群(左)約11万人が詰め掛け超満員のフレミントン競馬場、(右)メルボルンCで最初のカーブに差し掛かった馬群

 この日は、10時20分出走の第1レースを皮切りに全10レースが行われ、目玉レースのメルボルンカップは第7レース。雨はそれまでも降ったり止んだりしていたが、第6レース後に再び激しい雨が…。雨が少し小降りになり、待ちに待った瞬間がやってきた。特別なレースであるメルボルンカップでは、開会セレモニーと全員起立での国歌斉唱が行われ、観客の興奮は最高潮に!

 24頭立てでの出走予定だったが、1頭キャンセルになったため、23頭で出走。内ラチ沿いを走り、9番手くらいについけていたトウカイトリックは、洋ナシ形コースの大きなカーブに入り、残り1,000mあたりでさらに内ラチ沿いぴったりに進路をとった。そして直線に入り、残り350mあたりまでトウカイトリックがリード! もしや…の期待が膨らんだが、300mを切ったあたりから失速。コース真ん中あたりに進路を取っていた馬群に追い抜かれ、結果は12着となった。

 残り1,000mあたりで完全に内ラチ沿いに進路をとった騎手のこの選択が、誤りであったと地元紙は分析。メルボルンを拠点とするヘラルドサン紙は、レースの様子をコース上のポイントごとに解説した記事の中で以下のように記し、騎手が内寄りに走らせる選択をしたことを「バッド・ミステイク(とんでもない間違い)」だとした。

1000m OUT : TOKAI TRICK going OK and jockey Shinji Fujita opts to make his run on the inside (bad mistake).

芝を削って走るトウカイトリック芝を削りながら走るトウカイトリック

 フレミントン競馬場は、柵に近いところに雨水が溜まりやすい傾向があることに加え、雨とそれまでのレースでゴール前の内ラチ沿いは、相当荒れていた。他の騎手はこのことを予め知っていたため、外寄りに進路をとったのかもしれない。このことを示すように、トウカイトリックと同じ進路をとる馬はおらず、ポッカリと開いている。また、最終コーナーを回り、直線に入ったあたりから、トウカイトリックだけが大きく芝を削りながら走っているのがわかる。そして、結果的に上位8着までの馬がすべて外よりに進路をとっていたことが、すべてを物語っているようにも思える。

トウカイトリックだけが大きく芝を削り、進路は土が見えて轍がついたようにも見えるトウカイトリックだけが大きく芝を削り、進路は土が見え始めて轍がついたようにも見える

 メルボルンの天候や馬場の状態、コース上の傾向までも読まなければならない騎手は本当に大変だと思う。ハンデ戦という、ある意味読みにくいレースに加え、様々な要因が複雑に絡み合って、勝敗を左右するメルボルンカップ。これが、オーストラリア国民が揃って熱狂する理由なのかも?

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