オーストラリア最高峰かつ、国民に最も愛される競馬レース「メルボルンカップ(杯)」。今年は第150回という記念すべき大会であり、4年ぶりに日本馬が参戦することで話題に!2006年146回大会では、日本から参戦したデルタブルースとポックロックが1、2着となり、由緒あるカップ史上初めて、日本の馬が新たな1ページを加えた。
しかし翌年、豪州国内で馬インフルエンザが確認され、日本から来た馬が原因ではないかとされたため、この4年間日本の馬は輸入禁止に…。今年1月末になってようやく解除されたのだけれど、この日本馬の輸入禁止措置については、メルボルンカップにおける日本馬の活躍に恐れをなしたのでは?という噂もささやかれたほどだった。
残り200m地点を疾走するトウカイトリック
そんな中、久々に日本から参戦したのがトウカイトリック号。9歳馬であることや、メルボルンカップ前哨戦といわれるコーフィールドカップで12着と揮わなかったことから、人気は低迷していたが、トウカイトリック陣営は、「環境にも馴染み、馬の状態は万全」と好調をアピール。もし、トウカイトリックに賭けて勝ったら、大穴(約90倍)!という状況で当日を迎えることとなる。
ときおり雨がパラつく生憎の天候の中、メルボルン郊外にあるフレミントン競馬場には、約11万人もの観客が詰め掛けた。午前中は一瞬青空も覗いたが、これまでの天候不順と前夜の雨もあって、独特の洋ナシ形をしたフレミントン競馬場の馬場の状態は、想像よりも悪くなっていたようだ。
(左)約11万人が詰め掛け超満員のフレミントン競馬場、(右)メルボルンCで最初のカーブに差し掛かった馬群
この日は、10時20分出走の第1レースを皮切りに全10レースが行われ、目玉レースのメルボルンカップは第7レース。雨はそれまでも降ったり止んだりしていたが、第6レース後に再び激しい雨が…。雨が少し小降りになり、待ちに待った瞬間がやってきた。特別なレースであるメルボルンカップでは、開会セレモニーと全員起立での国歌斉唱が行われ、観客の興奮は最高潮に!
24頭立てでの出走予定だったが、1頭キャンセルになったため、23頭で出走。内ラチ沿いを走り、9番手くらいについけていたトウカイトリックは、洋ナシ形コースの大きなカーブに入り、残り1,000mあたりでさらに内ラチ沿いぴったりに進路をとった。そして直線に入り、残り350mあたりまでトウカイトリックがリード! もしや…の期待が膨らんだが、300mを切ったあたりから失速。コース真ん中あたりに進路を取っていた馬群に追い抜かれ、結果は12着となった。
残り1,000mあたりで完全に内ラチ沿いに進路をとった騎手のこの選択が、誤りであったと地元紙は分析。メルボルンを拠点とするヘラルドサン紙は、レースの様子をコース上のポイントごとに解説した記事の中で以下のように記し、騎手が内寄りに走らせる選択をしたことを「バッド・ミステイク(とんでもない間違い)」だとした。
1000m OUT : TOKAI TRICK going OK and jockey Shinji Fujita opts to make his run on the inside (bad mistake).
芝を削りながら走るトウカイトリック
フレミントン競馬場は、柵に近いところに雨水が溜まりやすい傾向があることに加え、雨とそれまでのレースでゴール前の内ラチ沿いは、相当荒れていた。他の騎手はこのことを予め知っていたため、外寄りに進路をとったのかもしれない。このことを示すように、トウカイトリックと同じ進路をとる馬はおらず、ポッカリと開いている。また、最終コーナーを回り、直線に入ったあたりから、トウカイトリックだけが大きく芝を削りながら走っているのがわかる。そして、結果的に上位8着までの馬がすべて外よりに進路をとっていたことが、すべてを物語っているようにも思える。
トウカイトリックだけが大きく芝を削り、進路は土が見え始めて轍がついたようにも見える
メルボルンの天候や馬場の状態、コース上の傾向までも読まなければならない騎手は本当に大変だと思う。ハンデ戦という、ある意味読みにくいレースに加え、様々な要因が複雑に絡み合って、勝敗を左右するメルボルンカップ。これが、オーストラリア国民が揃って熱狂する理由なのかも?
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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