地球温暖化が叫ばれる昨今、実際に温暖化しているのか否か、定かではありませんが、気候は確実に変化していると実感します。
昨年から今年にかけて、オーストラリアでは各地で大洪水に見舞われ、2月には超巨大化したモンスター・サイクロンが襲来。日本をはじめ、アメリカやヨーロッパなどの北半球でも豪雪に見舞われるなど、異常気象ともいうべき気候変動は地球規模で起こっているといえそうです。
こうした気候の変化が、実際に地球上生物に与える影響はあるのでしょうか?
2009年に発表された「気候変動で鳥が小さくなっている」という、ひとつの衝撃なレポートがあります。
それは、オーストラリア国立大学のガードナー博士らの研究グループが、オーストラリアにおける鳥の生態を調べていたところ、同種の鳥のサイズを約1世紀前と比較すると、大きさ・羽の長さが約2%~4%近くも小さくなっていたことがわかった、というもの。鳥たちの中で最も縮小が顕著だったのは、オーストラリア東海岸に生息する「バリゲイティッド・フェアリーレン / Variegated Fairy-wren」という鳥(上写真)で、現在シドニー近郊で見られるサイズは、ちょうど1世紀くらい前にブリスベン近郊で見られたものと同サイズになっているとか。
緯度にして、シドニーより7度ほど赤道に近いブリスベン。鳥類は、赤道に近いほど小さくなる傾向があるそうです。これは、ベルクマンの法則と言い、赤道近くに生息する鳥ほど小型で、高緯度になるほど大型化する傾向があると言われています。つまり、現在のシドニーは、昔ならブリスベンくらいの緯度と同程度の気候になってきているということに―。
気候区分によると、シドニーは完全な温帯であるのに対し、ブリスベン・ゴールドコーストあたりは亜熱帯に属します。冬は氷が張るほどではないけれど、そこそこ寒くなるシドニーに比べ、ブリスベンおよびゴールドコーストあたりは冬でも日中は半袖でも過ごせるほど暖か。その違いは距離的にも、また気温差からみても、東京と高知くらいの差があります。(下の図はピンの位置がゴールドコーストになっていますが、距離感の参考に)
注意)南半球では上が赤道に近くなります。
たしかにシドニーでは近年、スコールのような通り雨が増えたり、どこか熱帯を思わせる鳥の鳴き声が聞こえたりするようになった気がします。これらを温暖化と呼べるのかどうかはわかりませんが、気候が亜熱帯化しているのではないか?と思うことは、他にも多々あり、間違いなく気候が変わってきているのだろうと実感せざるを得ません……。
【ANU Climate Change Instituteによるレポート】Australian Birds Shrinking, Climate Cause
【オーストラリアの気候と特徴】4つの気候帯 by オーストラリア政府観光局 – 教育旅行サイト(公式)
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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