シドニーを襲った100年に一度の猛烈な嵐が示唆するもの

シドニー北部沿岸部で被害にあったビーチフロントのカフェ&パブ
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 2016年6月3日の夜から5日にかけて、シドニーを100年に一度という猛烈な嵐が襲いました。

 今回の嵐は、北からの暖かく湿った空気が大量の雨と強風をもたらし、ブリスベン辺りから南下しながら移動。シドニーに到達する頃には、サイクロン(台風)のカテゴリー1級となり、わずか2日程度で6月の平均降雨量に達したほど!

 嵐の通過ルートとなった東部沿岸部一帯で、川の氾濫や貯水池が溢れるなどして洪水が発生、各地で大きな被害を出しました。

 中でも、最も大きな被害が出たのが、シドニー北部ビーチ『ノーザン・ビーチズ』と呼ばれる地区の湖と海に面したエリアです。かつてないほどの豪雨に見舞われ、大量の雨水が湖に流れ込み、湖があふれ、周辺の住宅地が浸水。

 その上、5日がちょうど新月に当たり、大潮(潮の干満の差が最も大きくなる)となったことから、満潮時には2m以上海面が上昇。この湖は、海と繋がっているために、満潮時には湖面も上昇し、さらに大量の水が周辺の住宅地に溢れだしてしまったのです。この結果、この地区の住民数百人が避難を強いられることになりました。

 また、海面上昇と共に猛烈な嵐が高波を引き起こすことが予想されたため、海に面した住宅はとくに注意が必要でした。

 実は、嵐が本格化する前の3日午前中のうちに、SES(State Emergency Serviceの略で、州の緊急救助隊)が、『津波避難マップ』を発表していました。これは、津波などによって洪水が発生した場合、どの辺りがどの程度浸水し、被害がでるかをシュミレーションしたものです。

 しかし、SESのFacebookにこのマップのことが投稿された途端、「この嵐によって、こうなるというの?」「こんな時に発表しなくても!」などと、批判的な書き込みが相次ぎ、パニック騒ぎとなったため、SESが「津波警報ではない」とコメントを発表するなど、大きな騒動に発展。人々は、被害に遭うことなど想定しておらず、他人事のように思っていたのかもしれません。

Tsunami evacuation maps for Sydney and NSW making waves on social media
‘This is not a tsunami warning’: Evacuation maps cause panic

 ところが、実際、シドニーに嵐がやってきた時、まさにこのマップの避難レッド・ゾーンとされたエリアが、とんでもない被害に遭ってしまったのです!

 猛烈な嵐が引き起こした高波が、満潮時の高潮と相まってその威力を増し、海は大荒れ。津波避難マップでレッド・ゾーンで示されたビーチ・フロントの住宅に、巨大な波が襲いかかりました。

 波の破壊力は凄まじく、ビーチ(砂浜)が50メートルほどそっくりさらわれ、住宅の一部が崩壊。プールや塀、バルコニーの土台などが海側へ落ちてしまいました。この住宅は、嵐が去った今でも、高潮による大波が押し寄せているために、毎日、徐々に土地がえぐられ、今にも家屋が落ちそうな状態になっているところもあります。

 実は、このビーチは、以前から専門家らがこうした危険性を指摘しており、シー・ウォール(防波堤)を造る計画がありました。2002年には、該当カウンシル(役所)が、1.1kmほどのシー・ウォール造成計画を発表したところ、住民らの猛反対にあい、数千人規模のデモに発展。計画がとん挫した経緯も…。

Wall of humanity lines up against councils November 18 2002

 その後、2014年にもシー・ウォール造成が議会で認可承認されたのですが、費用をだれがどの程度負担するかで揉め、計画途上となっていたのです。

 というのも、こうした問題は、関係するのが個人の所有地となり、それを造ることによる恩恵を受けられるのは、あくまでもそこに住む住民のみですので、公費(税金)をどこまで投入していいのか、という難題がつきまといます。無関係の住民は、税金が使われることに反対の立場をとるでしょう。

 シー・ウォールを造るのには、一軒当り140,000豪ドル(現在のレートで1,116万円程度)かかるそうですので、喜んで払いたいという人は少ないでしょうし、ましてや自分にはなんら関係のない人が、支払った税金が使われることを嫌がるのも無理からぬ話。

 とはいえ、カウンシルと州政府もこのまま放置するわけにもいかず、該当住民と話し合って、被災した住宅が面している海側に共同でシー・ウォール造るという話になってきていますが、わずか500メートルほど1ブロック先の住民らは、「うちだってまったく被害がないわけじゃないし、今後、同じようなことが起こらないとも限らないのに、うちのところには造ってもらえないなんて!」と、不公平感をあらわに…。

 それに津波だけに限らず、川が氾濫しやすく、洪水が起きやすいエリア、豪雨などで地滑りが起きやすいエリア、この国ならブッシュ・ファイヤー(森林火災)が起きやすいエリアなど、様々な自然災害の危険性が高いとされるエリアは、言い出せばきりがないほど、他にもたくさんあります。

 高波に襲われる危険の高いビーチ・フロント住宅のみ、役所や州政府の援助の下で災害対策が施されるのはフェアじゃない!他にもあるこうした様々な自然災害の危険と隣り合わせで暮らしている住民たちへの援助はどうなるのか?など、厳しい意見もチラホラ……。

 ビーチ・フロントの家は、たしかに風光明媚で、住んでいて気持ちいいことでしょう。毎日、目の前に広がる海を眺めながら暮らせるなんて、なんて贅沢な!と思う人も多いと思いますが、こうした被害に遭うリスクは、どうしても高くなることは否めません。リスクを覚悟で住むか、という問題に直面しそうです。

 今回の件で改めて感じたのは、住むところを決める時は、可能な限りリスクの低い場所を選んだほうがいいよなぁ…ということ。自然の脅威は、人間が推し量ることなどできないと認識しておくことが重要だとつくづく実感したのでした。保険会社や役所との骨の折れる交渉も含め、誰の責任だとか、誰の(何の)せいだとかいう面倒な闘争にも巻き込まれたくないしね…(^_^;)

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

鳥たちは知っていた !? 殺人サイクロンの脅威

増水するケアンズ郊外のバロン滝
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 2月3日午前0時頃、世界最大級の超大型サイクロン(南半球における台風)が、クイーンズランド北部に上陸し、大きな爪跡を残しました。現在でもまだ13万世帯以上が停電、様々なインフラも復旧していない状況です。

 今回のサイクロンの名称は、Yasi。聞きなれない感じですが、フィジー近海で発生したため、フィジー人の名前だそうです。(発音は、ヤシーor ヤッシー or ヤジーと人によって微妙に異なる)

 上陸地点は、ミッチョンビーチ付近。人口の集中するケアンズやタウンズビルをはじめ、グレートバリアリーフ観光のゲートウェイとしても人気の高いエリア。それだけに、発生当初より甚大な被害が懸念されていました。

 サイクロンYasiは、勢力をどんどん強めながらオーストラリア大陸に接近。サイクロンやハリケーンの強さを示すレベルで最高のカテゴリー5へと発達。 上陸寸前には、中心気圧922ヘクトパスカル、サイクロンの目(台風の目)は直径50kmにも及び、風速は最大290km/h(83メートルくらい?)、サイクロン全体の大きさは、なんとアメリカ大陸をも丸呑みしてしまいそうなほど巨大!!

世界最大級の超大型サイクロンYasiをアメリカの地図上に重ねた図

世界最大級の超大型サイクロンYasiをアメリカの地図上に重ねた図News.com.au

 これはもう、かつて誰も見たことのないほど超巨大な熱帯低気圧であり、国内メディアも「モンスター」と呼ぶほどに。その破壊力は、2006年に同地を襲ったサイクロン・ラリーや2005年にアメリカ南部で甚大な被害をもたらしたハリケーン・カトリーナをも上回るのではないかと推測されていたため、クイーンズランド州政府も速くから緊急事態宣言を発令し、対策本部を立ち上げるなど、早い段階で対応を始めていました。

 推測された最悪の事態は………サイクロンが上陸する時間が満潮時と重なるため、最大で潮位が6~7mも上がるのではないかということ。数メートルの高波の発生。そして、最大290km/hもの猛烈な風の破壊力。これは、巨大なトルネード(竜巻)並みです。もし、予測通り海面が上昇し、高波が押し寄せたとすれば、ケアンズの街は水没してしまうことに…。

 そんな最悪のシナリオをもとに、2月1日の午後までには一部の地域で強制避難勧告が出され、ケアンズでも数千人が避難所へ。それでも勧告を無視して居続けた人もいたようですが、幸運なことに人的被害は、自宅の締め切った室内で発電機を使っていてガス中毒で死亡した1名と、行方不明の夫婦2名のみ(2月5日現在)。これは、奇跡といっても過言ではありません!

 しかし、政府による勧告がなければ、一体どれだけの人々が避難、備えをしていたでしょうか?

 でも、、、

 鳥たちは、誰からも情報を得ることなく、自らのセンサーで自然の脅威をキャッチし、とっくに避難していたようです────

 サイクロン上陸地点に最も近いミッションビーチの裏手には、深い森が続いています。それは世界最古級の森であり、世界遺産としても登録されている太古からの熱帯雨林。

熱帯雨林は鳥たちの楽園

熱帯雨林は鳥たちの楽園

 そんな森に住んでいた住民から、貴重な証言が上がっていました。熱帯雨林に棲むたくさんの鳥たちのさえずりを毎日楽しんでいたというこの男性は、1月31日の朝、突然異変に気づきます。

 それまで毎日、驚くほど多くの鳥たちが、まるでコーラスを楽しむように鳴いていた森が、シーンと死んだように静まり返っていたのだそうです。何の音もしない、静寂の森……ただただ、数千年もの昔からこの地で生き続けてきた木々たちが、威圧的に鬱蒼と生い茂っているだけ。。。

 その何ともいえない不気味さに、「これは、尋常じゃない…」と感じたとか。

 この話は、鳥たちが殺人的パワーを持ったサイクロンがこのエリアを襲う異常事態に気づき、人間たちが行動を起こす1日前には別の場所へ移動していた・・・・・・と解釈できます。

 しかし、我々人間は、今、自分たちのほうへ向かっているサイクロンの存在もちろん、その大きさや破壊力なぞ、衛星等を利用した近代的なシステムを駆使しなければ、わかるはずもありません。しかも、サイクロン上陸の数時間前まで、太陽が出ていていいお天気だったようですから、きっと多くの人がそのまま “のほほん” と過ごしていたことでしょう。

 ところが、野生動物たちは自ら悟り、対処できている。もちろん中には、このエリアに生息するカソワリーという飛べない鳥のように、もしかして物理的に不可能な種もいるかもしれません。でも、世界的大惨事となったプーケット島周辺での津波の時にも、被災地では野生動物の死体はほとんど見つかっていないなど、彼らは独自に異常事態をキャッチできる能力を持ち合わせているよう。

 おそらくこうした感覚は、本来、生物すべてが持っているものなのではないでしょうか?
 でも……便利な文明の利器に頼りすぎて、人間はそれをなくしてしまった。

 私たち人間が失ってしまったものは、途方もなく大きいような気がしてなりません。。。

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緊急!サイクロン襲来に備えたケアンズ避難マップ

サイクロンに備えたケアンズ避難マップ
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 サイクロン情報を収集するのに便利だと、こちらの記事で紹介しているケアンズ・カウンシルのサイトが、アクセスが集中して繋がりにくくなっているようです。

 (本来、こういうのはあまりよくないとは思うのですが、、、)緊急事態なので、このページに避難マップを掲載しておきます。画像はクリックで拡大します。

 掲載範囲は、ケアンズ・カウンシルが管轄するケアンズ近郊の町が対象です。避難ルートも記載されています。

 また、画像(マップ)の下にケアンズ・カウンシルからダウンロードした詳細な避難マップ(PDFファイル)をこのサイトにアップして、ダウンロードできるようにしました。

 PDFファイルは各エリア毎に、より詳細な避難マップになっています。該当地域、および危険性の高いエリアにお住まいの方は、印刷してご活用ください!

サイクロンに備えたケアンズ避難マップ

サイクロンYasi 対策避難マップ(11.6 MB) ※接続環境により、ダウンロードに時間がかかることもあります。

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ケアンズ直撃か!? 猛烈パワーの破壊的サイクロンが接近中

猛烈なパワーを持つサイクロン・ヤッシーがケアンズに接近!
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 洪水で大きな被害が出たクイーンズランドに、今度は強大なサイクロン(台風)が接近中!

 現在の中心気圧960ヘクトパスカル、風速220km/h と猛烈…いや、破壊的パワーを保ったまま、さらに勢力を強め、オーストラリアに向かっています。しかも、観光地として人気のケアンズを直撃すると予測されており、観光や農産物への大きなダメージが懸念されています。

 クイーンズランド州は、洪水被害・復興の対策もままならぬうちに、サイクロン警戒対策本部を設置。昨日には、ハミルトン島をはじめとする周辺の島々へ、強制避難を呼びかけました。またケアンズ沖のグリーン島等も、本日正午までには避難するようにとの通達が出され、当然のことながら、グレートバリアリーフへのクルーズツアー等は催行中止となっています。

 今回のサイクロンの名称はYasi(ヤッシーor ヤジー)。現在はカテゴリー3ですが、オーストラリアに近づくにつれて勢力を強め、今夜にはカテゴリー4へ。現在の進路をそのままいくと、中心の上陸地点は(かなりピンポイントで)ケアンズ。上陸時間は明日の夜10:00頃から木曜日未明にかけて。2006年にイニスフェイルに上陸し、大きな被害をもたらしたサイクロン・ラリーと同等、もしくはそれ以上の被害が出ると予測されています。

 なんでも、ラリーよりもサイクロンの大きさがハンパじゃなく大きく、勢力をどんどん強めながら発達しており、地元メディアは『モンスター』と呼び始めたほど! そのため、被災エリアが広範囲に及ぶとの見方が強まっています。一昨夜、タウンズビル近くの町ボーウェンに上陸したサイクロン(カテゴリー2)の影響が残っていること、前回の洪水被災地への影響も懸念されています。

 オーストラリアのニュース総合サイトは、サイクロン・ヤッシーについて「Huge and Lethal: Get Out Now(巨大で致命的:今すぐ逃げろ)」との見出しで書きたて、また、ケアンズの情報サイトでは、「Monster Tropical Cyclone Yasi a very, very serious threat(怪物熱帯サイクロン・ヤッシー、非常に(veryを2回繰り返して強調)深刻な脅威」との見出しで、住民へ警戒を呼びかけています。

 こうした国内メディアの反応は、今回のサイクロンの凄まじさを物語っているといえそうです。大丈夫か、、、ケアンズ。。。

 国内線フライトを運行している航空会社では、対象エリアへのフライトに対し返金・再アレンジなどを無料で行っていますので、該当者はすぐに連絡を。対象フライトは、本日から日曜日までの以下の空港への到着便 5路線。詳細は各航空会社サイトでご確認ください。ちなみに現時点(2/1 ケアンズ時間11:20)では、ケアンズ空港は平常通りとのこと。

  • ケアンズ
  • ハミルトン島
  • マッカイ
  • タウンズビル
  • ウィットサンデーコースト

【情報収集に役立つリンク】
オーストラリア気象庁サイクロン情報
ケアンズ・カウンシル(ケアンズの自治体)
ケアンズのニュースサイトCairns.com.au(地元紙ケアンズポスト)
ケアンズ空港
カンタス航空(オーストラリア国内サイト)
ジェットスター航空(オーストラリア国内サイト)
ヴァージンブルー航空

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クイーンズランドだけじゃない!オーストラリア各地で記録的な大洪水

オーストラリア各地で大洪水発生!地元紙は毎日一面で報道
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 州都ブリスベンをも襲ったクイーンズランド州の大洪水。高水位のピークは去り、水は引き始めていますが、まだ一部浸水している町も少なくありません。

 とはいえ、ブリスベン近郊は天気も回復し、ほとんどの地区で電気や水道も復旧してきているため、自宅に戻って水が引いたところから清掃作業に取り掛かっています。ですが、今度は水が運んだ泥が日を浴びてコンクリートのように固まり始め、作業の妨げになっているとか。また、洪水被害への寄付を装った「振り込め詐欺」まがいのメールも流れ始めているらしい。。

注意)寄付をしたいと思う方は直接、QLD政府による「クイーンズランド州政府洪水災害募金」へ。このページの「Donate online」をクリックし、オンライン上からA$1よりクレジットカードによる寄付が可能です。これなら絶対に間違いありません。

 そして、クイーンズランドでのピークが去ったかと思ったら、今度はニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州でも洪水が発生! 数千世帯が避難を余儀なくされています。

 ビクトリア州の洪水記事を掲載した地元紙ヘラルドサンのサイトにある『洪水マップ』をズームアウトしてみたら、、、、なんとも恐ろしいことになってる…。オーストラリア東半分の大半が、洪水被害に遭っていることがわかります↓。

オーストラリア東部での大規模な洪水発生状況オーストラリア東部各地での大規模な洪水発生状況
ヘラルド・サン紙のサイト・トップページにある「ビクトリア洪水マップ」をズームアウトすると…

ジャカランダで有名なグラフトンも洪水で町が水没...

 ニューサウスウェールズ州は、クイーンズランド州との州境に近い北部。紫色の花が美しいジャカランダで有名なグラフトンをはじめ、北部地域で7,000人以上が被災しているようです。(参照:NSW floods leave 7000 isolated 1/15付けの豪民放9 News)

 ニューサウスウェールズ州は、クリスマス前にもワガワガやダッボなど西部内陸部が洪水被害に遭い、現在も復興作業の最中。なのに、今度は北部……。(参考:現在のニューサウスウェールズ州洪水発生状況 by オーストラリア気象庁)

ビクトリア州、タスマニア州でも洪水が発生中!

 そしてさらに、オーストラリア南部で数日前から降り続いていた豪雨により、ビクトリア州とタスマニア州でも洪水が発生中!

 ビクトリア州では豪雨のため、有名な観光地グレートオーシャンロードで崖崩れが発生し、一部通行止めになっています。また、メルボルンからグレートオーシャンロードへ向かう途中の町ジロン周辺、メルボルン北部のベンディゴ周辺ほか、メルボルン近郊でも浸水しているところがあるよう。現在、6河川が氾濫しており、ビクトリア史上最悪…、今日(1/17)水位が最も高くなり、さらに危険な状態になるところもある、とのことです。(参照:Thousands evacuated in Victoria as rising flood waters go north 1/15付けの地元紙Herald Sun)

 タスマニアは、ロンセストンやデボンポートなどの北部で、13日をピークに発生した集中豪雨によってダムが決壊。鉄砲水が発生し、こちらも史上最悪の洪水に…。家屋浸水や道路閉鎖などが相次ぎ、非難勧告が出た地域もありましたが、現在は水も引き、最悪の状態は脱しているようです。(参照:Evacuations in Tassie after dams burst 1/14付けの豪民放9 News)

オーストラリア各地の洪水フォトギャラリー

  1. クイーンズランドの洪水(オーストラリア全体のニュースサイトNews.com.au)
  2. クイーンズランドの洪水・一般からの投稿(地元紙Courier Mail)
  3. ニューサウスウェールズ州北部の洪水(ゴールドコーストのローカル情報サイトgoldcoast.com.au)
  4. ビクトリア州各地の洪水(地元紙Herald Sun)
  5. ビクトリア州各地の洪水・一般からの投稿(地元紙Herald Sun)
  6. タスマニア州北部の洪水(地元紙The Mercury)

 …といったように、各地で大洪水が起こっているオーストラリアですが、なぜかここシドニー北部は、雨が降ってもパラパラ程度。案外晴れ間も覗き、割といいお天気だったりします。。。なので、申し訳ないことに“豪雨”というのがイマイチ想像しにくいのですが、、、今が国の一大事であることに変わりはありません! 一刻も早く、被災地が元通りになることを心から願って止みません。

※以下に、オーストラリアの洪水情報を収集するのに便利なリンクを掲載しておきます。

【オーストラリア全体】
オーストラリア気象庁による現在の降雨、河川水位状況
オーストラリア国営放送ABC
オーストラリア全国紙オーストラリアン

【クイーンズランド州】
ブリスベン・カウンシル(市役所) …洪水被害エリアの地図や交通機関の情報がまとまっています。
ABC国営放送によるクイーンズランド州洪水状況マップ
クイーンズランド洪水情報センター(オーストラリア気象庁)
クイーンズランド州の地元紙クーリエメール
クイーンズランド州政府による洪水災害募金の受付 …A$1よりオンラインでも受け付けています。

【ニューサウスウェールズ州】
NSW洪水情報センター(オーストラリア気象庁)
NSW SES (NSW州ステート・エマジェンシー・サービス) …NSW州の緊急・救急サービスによる洪水・災害情報。最新情報は「Latest News」をクリック。
NSW州の地元紙デイリー・テレグラフ
NSW州、シドニー近郊の地元紙シドニー・モーニング・ヘラルド

【ビクトリア州】
ビクトリア洪水情報(ビクトリア州政府) …ビクトリア州内の洪水情報、最新情報は「Latest News」をクリック。
ビクトリア洪水情報センター(オーストラリア気象庁)
VIC SES (ビクトリア州ステート・エマジェンシー・サービス)
ビクトリア州の地元紙ヘラルド・サン
ビクトリア州の地元紙ジ・エイジ

【タスマニア州】
タスマニア洪水情報センター(オーストラリア気象庁)
タスマニア州の地元紙ザ・マーキュリー

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クイーンズランド州の大洪水、ブリスベンも!被害は拡大中

川の氾濫による洪水被害で道路閉鎖が相次ぐクイーンズランド州
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 新年早々、オーストラリアは大変なことになっています!

 昨年末、クイーンズランド州東部ロックハンプトン周辺で起きた大規模な洪水被害は、勢いを弱めるどころか州内各地へと拡大し、昨日はついに州都ブリスベンへ!

 ブリスベンは現在(12日正午)、雨は止んでいるようですが、川の水位上昇は明日の午前4時頃がピークと見られており、まだまだ油断できない状況です。さらに、洪水の被害はクイーンズランド州境を越え、ニューサウスウェールズ州北部にも及んでいます。

クイーンズランド州の洪水被災エリアマップABC国営放送による、クイーンズランド州の洪水被災エリアのインタラクティブ・マップ。
すべてを選択して表示すると、被害状況の凄まじさがわかります。下にリンク先を掲載。

 現在、総州面積の約75%が被災したとされていますが、クイーンズランド州はオーストラリア全土の約1/4を占める二番目に大きな州。その面積は、約173万平方キロメートルもあるわけですから、被災エリアの総面積は、約130万平方キロメートル弱ということになり、フランスとドイツをすっぽり飲み込んでしまうばかりか、隣接するベルギー、オランダ、イタリアまでも合わせたほど広大に!(参考:豪州の大洪水、水没面積はドイツ・フランスの合計面積より広大 [注意] この記事は1月6日の時点ですので、現在ではさらに被災面積がかなり拡大したことがわかります。ちなみに上記5国の合計面積は約127.6万平方キロメートル)

 また、クイーンズランド州は国内有数の農業地帯であり、豊富な埋蔵資源を有すところでもありますので、農産物や原料となる資源等の価格高騰も懸念されています。国内の物価上昇が避けられないのはもちろんですが、オーストラリアからの輸入が多い日本や中国等、世界への影響も大!地球規模の大災害であるにもかかわらず、日本の報道機関がほとんど取り上げないのはなぜなのでしょう?

英国のBBC、タイムズ紙では今日のトップニュース扱い英国のBBC、タイムズ紙では今日のトップニュース扱い。
米国ではCNNがトップニュース、LA Timesが小さいけれど一応トップに掲載していました。

 また、被害は単に水によるものだけに留まらないのが、このエリアの恐ろしいところ。陸地には、世界で最も凶暴なワニ、ソルトウォーター・クロコダイルが生息しています。その上、陸上では世界最強の毒蛇ナイリクタイパンをはじめ、ブラウン・スネークやタイガー・スネークといった猛毒を持つヘビも多数生息。どいつもコイツも、日本じゃ毒蛇として恐れられるキングコブラなんて、目じゃないほどの猛毒のヘビ達です。これらが、洪水によって流出し、その辺を漂っているのですから、、既に毒蛇に咬まれて病院へ運ばれた人も!(参考リンク:猛毒ヘビランキング、トップ10

 ギラード首相も本日午前の会見で、できる限りの“antivenom=抗毒素血清”を用意したと発表。そうした危険に対する重要度の高さをうかがわせました。おまけに、こうした野生動物たちもこんな状況で相当飢えていると見られており、中でも肉食のクロコダイルが、洪水で流された被害者を餌として待ち構えている可能性があるという報告も出されたようです。ああ、なんて怖ろしいっ、、

 その上、時期が夏であるだけに、今後、水が引いても蚊などの寄生虫の大繁殖や汚水による疫病の発生なども懸念されています。

 こちらの動画では、3Dシュミレーションでブリスベン市内中心部のビル街が泥水に飲まれていく様子を再現しています。それはまるで映画「デイアフタートゥモロー 」を彷彿とさせるほど!ブリスベン中心部は避難勧告が出されており、現在でも停電や通信網のカットなど、様々な障害も出ています。

 被害が凄まじいイスプイッチという町では、水位が20.5mにも達すると予想され、急に水が押し寄せる様は、内陸から津波がやってきたようだったと語る住民も…。このままいくと数年後には、オーストラリアの海岸線が変わってしまうほどの海水面上昇も懸念されているばかりか、こうした陸地にもたらされた豪雨による川の氾濫が相次ぎ、水の怖さをあらためて実感させられます。

 それにしても、2006~2007年をピークに2009年頃まで続いた大旱魃の後は、今度はまったく反対の大洪水。地球規模の気候変動は間違いなく起こっていると思わざるをえません。。。とにかく被災地の一日も早い復興を願うばかりです。

※以下にQLD洪水情報の収集に役立つリンクを掲載しておきます。

ブリスベン・カウンシル(市役所) …洪水被害エリアの地図や交通機関の情報がまとまっています。
オーストラリア気象庁による現在の降雨、河川水位状況
ABC国営放送によるクイーンズランド州洪水状況マップ
クイーンズランド州の地元紙クーリエメール
クイーンズランド州政府による洪水災害募金の受付 …A$1よりオンラインでも受け付けています。

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