地球を襲うひとつの現象 『グローバル・ディミング=地球暗化/地球薄暮化』

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(すっかりサボっちゃってたのですが…本日再開。といっても、今回は2005年に某メディアサイトに寄稿したコラムの手直しですが…今もう一度注目してみおきたい話題だと思うので、少し手直しして再掲)

 地球温暖化=グローバル・ウォーミングのことばかりが取り沙汰され、「温室効果ガスを抑えさえすれば地球の温暖化は制御でき、再び住みやすい地球 になる」といった感じにとらえられがちだが、実は、温暖化の裏でもうひとつの現象『Global Dimming/グローバル・ディミング=地球暗化、又は地球薄暮化』が起こっていることがわかっている。

 グローバル・ディミングとは、大気中に無数に放出された塵や埃など、地球の表面を覆う汚れた大気、大気中の微粒子(エアロゾル)がつくり出す雲が、太陽光を阻んでしまうことで地表に到達する太陽光が減少している現象だ。研究チームの調査結果によれば、10年で約3%ほど減少しており、これは過去50年間で1日の太陽照射時間が約1時間ほど減少したことを意味しているのだとか。

 汚れた大気が原因のひとつなのだとしたら、やはり、CO2をはじめとする温室効果ガス削減等で、大気を汚す物質を減らしたほうがいいのでは?と思うかもしれないが、一足飛びにそうとも言い切れない。なぜならば、普通に考えれば、グローバル・ディミングは太陽光が届きにくくなるのだから、地球は冷却化してしまうはず。それでも尚、地球上の気温は上昇していたのだから…

グローバル・ディミングがグローバル・ウォーミング=温暖化を食い止めている!?

 グローバル・ディミングに注目するよう警鐘を鳴らす専門家は多い。2005年に英国国営放送のBBCにより制作されたドキュメンタリー番組「Horizon」でも取り上げられ、ここオーストラリアでも放送と同時に大きな話題となった(※ページ下に動画あり)。

 地球が置かれている状況に関する新しい見解― それは、グローバル・ディミングによって太陽光が減少することで、温暖化がそれほど進まずに済んでいるのではないか?ということ。本来なら、人類が排出する温室効果ガスで気温がどんどん上昇しまうところ、グローバル・ディミングにより、地表に太陽光が届きにくくなっていることから、それほど気温が上がらずに済んでいるのかもしれないという。

 これが事実だとすれば、世界規模でCO2を減らすクリーンなエネルギーを利用すればするほど、大気中の煤塵(ばいじん)も減少することとなり、地表に届く太陽光が増え、温度はうなぎのぼりに上昇していくことになる。

 先の研究チームの試算よれば、このままいくと、今世紀末までには最高10度は気温が上がり、地球上の一部では人類が生活さえできなくなるという。つまり、地球温暖化を抑えようと、世界中の人々がクリーンなエネルギーを導入する努力がかえって逆効果に繋がりかねない…という、なんとも皮肉な現象が起こっているというのだ。

 このような、CO2をはじめとする大気汚染のもととなる排出物を減らすと温暖化が加速する、という見解は後を絶たない。

  • Reducing emissions could speed global warming/排出を減らすことで温暖化は加速する ・・・英テレグラフ紙に2007年10月29日に掲載されたガイア説提唱者のジェームズ・ラブロック博士によるコラム

 …とはいえ、そもそも温暖化しているのか?気温上昇してきたのはただ単に、地球がこれまでも繰り返してきた寒冷期と温暖期の、温暖期に入っていただけではないのか?というのが、私自身の本音ではあるのだけれど。ただ、ひとつ強く感じているのは、グローバル・ディミングは確実に起こっているのではないかということ。

 シドニーは今夏2011-2012、雨が多く、雲りがちな日が目立つ。これまで見られたような、真っ青な空にお目にかかれた日は少ない。なんとなく薄ぼけた、ぼんやりとした空や雲の多い空が増えている。これもグローバル・ディミングのせいなのか…と思ってしまう今日この頃。。。

【あわせて読んでおきたい記事】
Goodbye sunshine/さようなら太陽の光 ・・・英ガーディアン紙2003年12月18日に掲載されたグローバル・ディミングを取りあげた記事(日本語訳のページがあったのこちらにリンク置いておきます。中身=翻訳された文章については検証してませんので、ご自身の判断でお読みください)

※このコラムは、平野美紀が2005年4月20日に初めて執筆し、2012年2月22日に加筆・修正したものです。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

地球温暖化で鳥が小さくなっている!?

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 地球温暖化が叫ばれる昨今、実際に温暖化しているのか否か、定かではありませんが、気候は確実に変化していると実感します。

 昨年から今年にかけて、オーストラリアでは各地で大洪水に見舞われ、2月には超巨大化したモンスター・サイクロンが襲来。日本をはじめ、アメリカやヨーロッパなどの北半球でも豪雪に見舞われるなど、異常気象ともいうべき気候変動は地球規模で起こっているといえそうです。

 こうした気候の変化が、実際に地球上生物に与える影響はあるのでしょうか?

 2009年に発表された「気候変動で鳥が小さくなっている」という、ひとつの衝撃なレポートがあります。

 それは、オーストラリア国立大学のガードナー博士らの研究グループが、オーストラリアにおける鳥の生態を調べていたところ、同種の鳥のサイズを約1世紀前と比較すると、大きさ・羽の長さが約2%~4%近くも小さくなっていたことがわかった、というもの。鳥たちの中で最も縮小が顕著だったのは、オーストラリア東海岸に生息する「バリゲイティッド・フェアリーレン / Variegated Fairy-wren」という鳥(上写真)で、現在シドニー近郊で見られるサイズは、ちょうど1世紀くらい前にブリスベン近郊で見られたものと同サイズになっているとか。

 緯度にして、シドニーより7度ほど赤道に近いブリスベン。鳥類は、赤道に近いほど小さくなる傾向があるそうです。これは、ベルクマンの法則と言い、赤道近くに生息する鳥ほど小型で、高緯度になるほど大型化する傾向があると言われています。つまり、現在のシドニーは、昔ならブリスベンくらいの緯度と同程度の気候になってきているということに―。

 気候区分によると、シドニーは完全な温帯であるのに対し、ブリスベン・ゴールドコーストあたりは亜熱帯に属します。冬は氷が張るほどではないけれど、そこそこ寒くなるシドニーに比べ、ブリスベンおよびゴールドコーストあたりは冬でも日中は半袖でも過ごせるほど暖か。その違いは距離的にも、また気温差からみても、東京と高知くらいの差があります。(下の図はピンの位置がゴールドコーストになっていますが、距離感の参考に)

オーストラリアの上に日本を重ねた図注意)南半球では上が赤道に近くなります。

 たしかにシドニーでは近年、スコールのような通り雨が増えたり、どこか熱帯を思わせる鳥の鳴き声が聞こえたりするようになった気がします。これらを温暖化と呼べるのかどうかはわかりませんが、気候が亜熱帯化しているのではないか?と思うことは、他にも多々あり、間違いなく気候が変わってきているのだろうと実感せざるを得ません……。

【ANU Climate Change Instituteによるレポート】Australian Birds Shrinking, Climate Cause
【オーストラリアの気候と特徴】4つの気候帯 by オーストラリア政府観光局 – 教育旅行サイト(公式)

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