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2010年バンクーバー冬季五輪が開幕した。大会3日目、男子モーグルが行われ、オーストラリア代表のデール・ベッグ-スミス選手が銀メダルを獲得。オーストラリアにとって、この大会初のメダルをもたらした。
世界第2位、堂々の銀メダル。のはずが、彼にとっては複雑な思いの詰まったメダルだったに違いない。
デール・ベッグ-スミス選手は、今でこそオーストラリア代表としてオーストラリア国旗を背負っているが、元々はカナダ出身。しかも、今大会開催地バンクーバーが生まれ故郷だ。彼は幼い頃よりスキーで秀でた才能を発揮し、地元カナダでももちろん、国代表候補として成長していた。
スキー、モーグル競技を続けるには資金が必要ということもあり、彼は同じくモーグル代表として頭角を現していた16歳の兄と共に、13歳でIT会社を立ち上げた。これにより、この兄弟は自分達で資金を稼ぎながら、競技を続けていくこととなる。
しかし、そのIT会社が悪評高きスパム広告を配信する会社であったことや、会社運営に面白さを見出して競技に没頭しない兄弟に対し、カナダ・スキー連盟が代表外しなどの懲罰を与えたことから、ベッグ-スミス兄弟とカナダ・スキー連盟は2001年に喧嘩別れしてしまう。
モーグル競技を続けたい。会社もうまくいっている。両立させることはできないか?
ベッグ-スミス兄弟は、新天地にオーストラリアを選んだ。その時、兄18歳、弟(デール)15歳。幼き兄弟は故郷を離れ、移民としてオーストラリアへ渡り、3年かけて市民権を取得。晴れてオーストラリア国民となり、国代表選手となれる資格を得た。
こうして、兄弟は共にオーストラリア代表として、冬季五輪前回大会のトリノ五輪に出場。弟のデールは完璧な滑りで金メダルを獲得し、オーストラリア冬季五輪史上3つ目の金メダルをもたらした。
4年後、再びデールはオーストラリア代表として五輪の舞台に立つ。
しかし、そこは彼にとって因縁の地。愛する生まれ故郷でありながら、スキー人生を絶たれかけ、捨てた地でもあるバンクーバーだ。元々、無表情であるとか、感情を露にしないことから、当地=オーストラリアでは、「Mr. Ice man」「Mr. Mysterious」(「(表情もなく)つめたい奴」「(何を考えているか)わからない奴」という意味で)と皮肉を込めて呼ばれることの多いデール。今回のバンクーバー大会はとくに、これまでにない複雑な思いがよぎり、ますます頑なな表情になっていたのではないかと推察する。
大会が始まり、前大会覇者としてデールは当然のように決勝へ進む。そして再びほぼ完璧な滑りで一時は金メダルの座に付くのだが、結果は、その後滑った地元カナダ代表のアレクサンドル・ビロドーに0.17点差をつけられ、銀メダルに終わった。
※この結果に対し、オーストラリアの代表チーム・ディレクターは、個人的な見解であると前置きした上で、「アレックス(金メダルのビロドー選手のこと)が、5点満点中4.8や4.9点に値するターンをしたとは思えない。デールは、最も高いターンポイントかつ、最も高いエアポイントで、何の欠点もない素晴らしい滑りだった。デールが勝ったと思った」とコメント。「地元贔屓ではなかったか」とカナダ・オリンピック委員会に異議申し立てをしたようだが、却下されたようだ。<参照>
表彰式でデールは一切笑顔を見せなかった。
前大会では金メダルだったとはいえ、誇れるべき、銀メダル。しかし、彼にとってはメダルの色が何であっても関係なく、笑顔を見せられるはずもなかった。カナダを捨てた男、裏切り者として、故郷での扱いは冷酷。表彰式ではブーイングの嵐だったそうだ。
その様子をオーストラリア各紙は、「Mr. Miserable(かわいそうな男)」と評した。
これは、生まれ故郷での酷い扱いに対してもあったのだろうが、銀に下がったとはいえ2大会連続のメダルであるにもかかわらず、その喜びを表現しない(できない?)彼の性格に対して贈られた言葉なのかもしれない。
スポーツ好きで、勝つ喜びを爆発させるのが真のオージーであると自負するオーストラリア人にとって、彼の無表情な態度は“人種の違う人間”と映るのだろう。そんなこともあってか、デール・ベッグ-スミス選手については国代表であるにもかかわらず、常にどこか冷めているところがある。(ある意味、ウィンタースポーツとあまり縁のないオージーにとっては、冬季五輪自体に興味が薄いというか、冷めているのだが…)
彼がスパム長者だから、生粋のオージーじゃないから、(競技のためもあり)オーストラリア外での暮らしが長いから、本心が見えないから…… なんとなく親しみがわかない。そんなところかもしれない。
米有力紙「LAタイムス」は、こんな彼の様子を以下のような見出しで書きたてた。
Dale Begg-Smith looks for acceptance
Men’s moguls star is Canadian, competes for Australia and isn’t a hero in either place.
デール・ベッグ-スミスは受入れ先(自分の居場所)を探している。
男子モーグルのスターはカナダ人でありながら、オーストラリアのために戦い、そしてどちらの地でもヒーローではない。
故郷のカナダ、代表国であるオーストラリア。どちらの国からも心からの賞賛を得られないデール・ベッグ-スミス選手。彼の胸にかけられた銀メダルは、鈍い光を放っていた。
後で知ったところによれば、試合前、カナダ・メディアには一切口を開かなかったデール・ベッグ-スミス選手は、オーストラリア・メディアに対してだけ、記者会見を開いたのだそうだ。こんな彼の態度も、ますますバンクーバー市民/カナダ国民を怒らせてしまったのかも……。
そういえば、日本のメディアで以下のような記事を見つけたけど、ちょっとニュアンス違うんじゃ?
◎銀メダリストの態度に難色=男子モーグル表彰台でぶぜん-豪紙
平野 美紀 自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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