続)放射能と狂牛病の奇妙な関係

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 昨年7月に、「チェルノブイリ原発事故(放射能)と狂牛病の奇妙な関係」について触れたが、その後もいろいろと狂牛病に関して調べていたら、興味深い事実が次々とわかってきた。

 まず、ひとつめは、狂牛病(mad-cow disease)というのは、日本の厚生労働省なども認めているように「1986年に英国で発見」されたことになっているが、実はこれ以前にも、「へたり牛」と呼ばれる狂牛病にかかった牛と同様の症状が出ていた牛が、まったくいなかったわけではないということ。「へたり牛」とは、脳神経が侵されてちゃんと立てなくなり、へたったように座り込んでしまうことから名づけられたものだが、こうした症状を発症した牛は、1986年以前にも発症ケースは少ないものの、いたのだという。

 そして、それはイギリスだけでなく、アメリカでも見られていたということ。ちなみに、アメリカにおける狂牛病感染例は4例しかないことになっているが、この「へたり牛」に関しては、アメリカ国内で初の狂牛病が確認される以前からあり、この肉が市場に流通し、度々問題にもなっている。このあたりのことについては、(できたら)また回を改めてご紹介したいと思う。

 では、なぜ1986年に英国で発見された、ということになっているかというと、それは、この年を境に爆発的に増え、「狂牛病=mad-cow disease」と命名されて、正式に認められたからだ。ここで再度繰り返すが、1986年はチェルノブイリ原発事故が起こった年である。

 ※「mad-cow disease(狂牛病)」と「BSE」は同じもの、そして、「foot-and-mouth disease(口蹄疫)」も同様と考えていい。その理由はこちら。口蹄疫は、口蹄疫ウイルスの感染によって発症すると言われ、狂牛病はプリオン異常が引き起こすと考えられているが、狂牛病のプリオン異常については確定的な証拠はまだない。

 そして、二つめと三つめは、放射能と狂牛病の関連性をさらに強く示唆する以下の事実。

狂牛病を発症した牛はチェルノブイリ事故の翌年生まれが多い

 チェルノブイリ原発の事故が起こったのは、1986年の4月。英国で狂牛病が発見された(認定されたというべきかも…)のは、同年11月。その後、数年間で爆発的に増加した。しかし、最も多くの牛が発症したピークは、それから6年後の1992年から1993年にかけてだそうだ。

 九州大学の調査によると、「狂牛病を発症した牛の誕生年を調べると、1987年に誕生した牛が最も多いことが判明した」とある。つまり、チェルノブイリ原発事故の翌年に誕生した牛が、狂牛病を発症しやすかった、ということだ。

 ちなみに、肉用牛の妊娠期間は、平均285日(280~290日)間(参照)。母牛は妊娠期間中に原発事故に遭い、被曝したであろうことが示唆される。また、直接事故による被曝でなくとも、放射線量の高い時期に妊娠していたことは事実だろう。

 上記のことから、ピーク時が1992~1993年だとすると、産後すぐに発症するよりも、生まれてから5~6年後に発症するケースが多いということになる。そういう意味では、狂牛病がもし原発事故等による放射能と関係があるとすれば、他の放射能との関連性が疑われる甲状腺疾患や癌などと同様、本体または母体(妊娠期)の被曝から数年後に発症するケースが多いといえるのかもしれない。

 また狂牛病関連では、原発事故に右往左往している間に、来年初めにも、日本の牛肉に対する輸入規制が緩和されることになった。BSE(狂牛病)対策として現在実施されている輸入規制では、月齢「20カ月以下」の牛に限られているが、これを「30カ月以下」に緩和するという。(参照:牛肉の輸入規制緩和 BSEの不安拭えるか

福島原発事故後にも狂牛病が発生

 福島原発事故から約1年経った2012年4月、アメリカ西海岸のカリフォルニア州の乳牛に狂牛病=BSE発症が確認された。(参照:カリフォルニア州乳牛で狂牛病確認、流通網に入らず-米農務省アメリカで6年来初めてのBSE 非常に稀な非定型BSEというが徹底的検証が必要

 そして、この牛は、これまで狂牛病の感染経路とされてきた「汚染された動物性飼料」からの感染ではないという。以下、CNNの日本語ニュースより該当部分を抜粋。(参照

BSE感染はカリフォルニア州中部の乳牛で確認された。米当局によると、感染牛は人間用の食肉の処理工程には入っておらず、感染源は汚染された動物性飼料ではないとみられる。

 BSEは大抵の場合、肉骨粉などの動物性飼料を通じて牛に感染する。しかし農務省によれば、今回確認されたのは特異な形態のBSEで、飼料汚染が原因ではないようだという。

この記事で最も興味深いのは、感染経路が「飼料ではない」、と米当局が言明したことだろう。では、何が原因だったのか?については、その後の発表はないままに、この問題もウヤムヤになってしまった。

 また、狂牛病ではないが、2011年半ばに欧米で「スーパーサルモネラ菌」が流行、8月にはアメリカで死者がでる騒ぎとなった。このスーパーサルモネラ菌の発病は3月に遡ることができる、と英デイリーメール紙は伝えている。(参照:One dead in turkey salmonella outbreak across US

 ちなみに、ここでも書いたが、イギリスで狂牛病騒動が起きた際も、サルモネラ菌が流行した。

 一方、原発事故と狂牛病との関連性に目を向けるとどうか? これは、もう既にご存じの方も多いと思うが、福島原発から放出された放射性物質は、偏西風に乗り、事故から数日後には、既にアメリカ西海岸に届いていた。このことは、オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)のシュミレーション・データを見てもよくわかる。(※画像クリックで本サイトへ飛びます)

福島第一原発から放出された放射能拡散の様子 -オーストリア気象地球力学中央研究所(ZAMG)のデータ
 また、2011年3月17日にアメリカCBSで放送されたニュースでも、翌日の18日には西海岸に到達する、と報道している。

 チェルノブイリ原発事故と共にイギリスで狂牛病が確認され、その後数年で爆発的に増加。イギリスをはじめとする欧州各地で被害は拡大し、死者を出すまでになった。そして、今度は福島原発事故が起き、その1年後にアメリカで狂牛病が確認された…という事実。福島原発事故の数年後は、一体どうなっているのだろうか?

<追記2012.11.7>IAEAの『NUCLEAR GLOSSARY(核用語集)』に「BSE」が入ってるのも興味深い。

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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住18年。詳細なプロフィールはこちら。
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