シドニー、小規模ローカル発電でオフィスへ電力と冷暖房を供給

オーストラリア随一の都会・シドニー
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 2030年までに炭素(二酸化炭素)排出量を70%削減する、という大胆な目標を打ち出したオーストラリア政府。目標実現に向けて、各自治体も動き始めた。

 国内随一のビジネス街であるシドニー市は、コジェント・エナジー社と提携し、低炭素の小規模ローカル発電で、各オフィス・ビルに電気、冷房、暖房の3つを提供する「コジェネレーション・システム」による『トリジェネレーション』を稼働させる。

 シドニー市は「地球上のたった2%程度の都市部に、50%以上の人口が集中している。この都市部で3分の2のエネルギーが使われ、約70%の二酸化炭素が排出させる。シドニーのような都市で率先して二酸化炭素排出を削減することが必要だ。」と言う。

コジェネレーション・システムとは?

 コジェネレーション・システムとは、電気と熱を同時に供給するシステムのことで、シドニー市では天然ガスを燃料とする発電システムを導入し、発電と共に出る熱を冷暖房にも利用。これを大規模発電所からの送電に頼るのではなく、ローカルサイドで行うことで、発電所からの送電費用をゼロにし、電気料金自体を約半額に抑えることができるという。(参照

 シドニー市の場合では、このシステムを導入することにより、従来の火力発電所と比べ、2倍以上の効率で、40~60%の二酸化炭素排出削減が実現可能と試算している。実は、既に1つのビルディングのみに供給するシステムを試験稼働させており、今後はこれをネットワーク化し、拡張していくのだそうだ。

 今回、シドニー市が最初にこのシステムを導入するのは、CBD(Central Business Districtの略)と呼ばれる市内中心部のビジネス街の4エリア。2030年までには、太陽光発電や風力、廃棄物によるバイオマスなどの再生可能エネルギーも含め、市内70%の電力の自給自足を目指す考え。

 #ちなみに、3 重を意味するTri(トリ)は、電気、冷房、暖房の3つを意味し、排出された二酸化炭素をも利用するという、トリジェネレーション・システムを意味するわけではないらしい…(^_^;

【参考資料】

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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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オーストラリアが原発を持たない理由

アメリカで起こったスリーマイル島原発事故、当時の写真
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 世界一のウラン埋蔵量を誇り、世界有数のウラン輸出国でもあるオーストラリア。だが、国内に原子力発電所はひとつもない。

 しかし、過去にはオーストラリアでも原発を推進する動きがあった。2006年、当時のハワード首相は、人口当たりの二酸化炭素排出量が世界一とも言われるオーストラリアがその排出量を減らすためには、原子力発電が最も有効な手段であるとし、15年以内に最初の原発を、そして2050年までに国内に25基の原発を建設するという案を打ち出した。

 なにしろ、オーストラリアは火力発電の燃料でもある石炭も世界有数の埋蔵量を誇っており、エネルギー安全保障の観点から「原子力」政策を打ち出すことは困難だ。ちなみに石炭資源は、300~500年分くらいは十分にあるという。(参考:世界各国の石炭埋蔵・採掘・輸出入量などをグラフ化

オーストラリアこそ原発に最適な地

 原発を推進し始めたハワード元首相は当時、「燃料になるウランは潤沢にあり、使用済み核燃料などのゴミがでても、人の住んでいない土地がたくさんある広大な国土に処分する場所はいくらでもある。(上記の案通り)2050年までに25基の原発が稼働すれば、国内の3分の1の電力をまかなうことができ、CO2排出量も18%削減できる」…と、まさに“いいことづくめ”だと強調。首相直属の原子力を検討する特別委員会を設置すると発表した。当時の産業界もこれに歓迎の意を示した。

 なのに、なぜ原発建設は具体的にならなかったのか?

国民が拒否した原子力発電

 それでもいまだにオーストラリアに原発がないのは、一言で言ってしまえば、国民が拒否したから。といえると思う。

 連邦政府による原発に対する政策転換の発表を受け、当時のクイーンズランド州知事は「連邦政府が強硬に原発を推進しても、州の民意に従い、州法によって断固阻止する」との談話を発表。2007年には実際に「原発及び核施設、放射性廃棄物を阻止する州法」の施行に踏み切った。(参照:New law bans nuclear power in Qld)ちなみに、当時の各州政府はすべて、連邦政府とは対局の立場にある野党=労働党であった。

 また2006年、特別委員会設置の発表前にインターネット調査機関Newspollが行った世論調査では、原発建設に賛成38%、反対51%と反対が根強かった。しかし、特別委員会発足後、Morgan Pollが行った世論調査では、反対37%、温室効果ガス排出削減のためならば原発を支持すると答えた人の割合は49%に達したが、87%が放射性廃棄物の処分に有効な手立てがないことを問題視した。

 つまり、使用済み核燃料をはじめとする「Nuclear Waste=核のゴミ」を安全かつ無害に処分できないならば、原発は困るという意見が大半だったのだ。国土のそこかしこに核のゴミがばら撒かれることを拒否したオーストラリア国民。放射性物質で土地が汚れることを嫌がったのである。

 放射性物質で土地が汚染されてしまう恐れを生む電気は要らない!

 …というわけで、オーストラリアの電力は、前回のエントリーにも書いた通り、再生可能エネルギーの割合を増やすことを模索しつつ、いまのところ主力は火力発電のまま、自国に豊富にある石炭を使っているにもかかわらず、日本よりも高い電気料金を払い続けている…ってわけです。。。(涙)

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原発29基分の再生可能エネルギー、日本の高温岩体地熱発電

温泉との共存が問題視される地熱発電
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 ほぼ無限に存在する、地底に眠る膨大な熱エネルギーといえる「ホット・ドライ・ロック=高温岩体発電」。前回のエントリーで紹介したオーストラリアにおける地熱開発の主力である、この高温岩体発電の秘めた可能性や利点については、こちらを読んでいただくことにして…

 高温岩体発電は、日本でもまったくやっていないわけではなく、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が山形県肘折地区で、電力中央研究所が秋田県雄勝町などで実験的に行っているのだそうだ。

 ちなみに以下の、2001年度に制作された「高温岩体地熱発電」について紹介する動画ニュース(サイエンス・チャンネル)によれば、日本における地熱発電はすべて合わせても、国内の需要電力の0.4%程度。温泉大国であり、世界の地熱ポテンシャル第三位でありながら、かなり少ないと言える。(地熱ポテンシャルマップ

↑とてもよい動画だったに、ここで紹介した後、なぜか削除されてしまいました…

日本における高温岩体地熱発電の潜在力

 上記以外にも、この方式の地熱発電が可能な地域が日本全国に数多く点在している。上の動画にも登場している電力中央研究所・地球工学研究所の海江田秀志氏も、この高温岩体地熱発電について「火山国の日本では国内のほぼ全土で開発可能性がある。日本に適した発電方法」と指摘する。(参照:国内全土で開発可能 日本に適した高温岩体地熱発電 by 日経エコロジー)

 電力中央研究所による平成元年時の試算では、高温岩体発電可能性地域16ヶ所で、合計38,400メガワット=3,840万キロワット の発電が可能と評価している。(参照:高温岩体発電の開発 by 電力中央研究所)

 また平成5年度に、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が国内の有望視される地熱地帯29カ所で行った調査では、2,900万キロワットの発電が可能で、「この調査の対象となった地熱地域の合計面積は、日本の国土面積の0.3%に過ぎないので、実際にはもっとあると考えても良い」と付け加えている。(参照:次世代型地熱エネルギーの開発-高温岩体発電システムの開発

 電力中央研究所による評価は、国立公園など開発しにくい地域も含まれているらしいので、NEDOの評価による2,900万キロワット程度が実際すぐに可能と考えても、およそ原発29基分に相当する発電力を秘めていることになる。 注意)原発一基で約100万キロワット=1,000メガワットと言われている。

原発推進と共に、政府や電力会社が開発に圧力?

 しかしながら、いまだに積極的な調査も開発も行われていないのが現状のようだ。というのも、この発電方式がまかり通ると、上述からもわかるように「原発は要らなくなる!」となり、それを封殺する暗黙の圧力があるから、とも言われている。

 日経エコロジー2010年2月25日付けの記事「なぜか10年新設がない地熱発電 眠れる巨大資源のハードルとは?」(参照)によれば、日本における地熱開発の遅れは、コストや温泉との共存だけでなく、政策面での冷遇も、事業環境の悪化に拍車をかけたとある。新エネ利用促進法=RPS法の施行とともに、地熱発電は国が定める「新エネルギー」の枠組みから外れた、のだそうだ。

 1993年に発売された雑誌『週刊朝日』にも「21世紀の新エネルギーになれるか 高温岩体発電スイッチオンへ」という記事が掲載されたのだが、この記事を書いた記者はこの後、左遷されてしまったという噂もあるという。(参照

 また、2006年にスイスで行われていた高温岩体地熱発電所の建設の際、周辺地域でM3.4の地震が起き、発電所建設に伴う掘削のせいだと提訴され、結局、計画の白紙化を余儀なくされた事件があったのだが、これもまた、原発維持のための圧力とみる向きもあるという。(参照)というのも、州政府をはじめ各方面からの支援で始まったプロジェクトであるにも関わらず、電力会社の社長ら、個人が訴えられるという奇妙な裁判なのだそうだ。(参照1, 参照2

 そもそも、掘削が原因で地震を誘発した、というのなら、高層ビルも建ててはいけないことになる。高層ビルを建てる際には、大深度の地下掘削工事を伴う。例えば、オーストラリアで1、2を争う超高層ビルの「Q1」は、このビル同等程度の深さの基礎を造ったと聞いている。日本における高温岩体発電では、3km以上深く掘れば、300~400℃の熱を持った岩盤が存在するという。

 とはいえ、日本のように地震を誘発する活断層などが多い場合は、掘削する箇所を慎重に選ぶ必要があるだろう。(このページのコメント欄の論議が参考に→参照

燃料費はタダ!ランニングコストのみで発電

 「高温岩体発電で原子力はもういらない」と書いた記者が左遷されたかどうかの真偽はさておき、この記事によれば、高温岩体発電の1キロワット当たりの原価は、12円70銭と試算されている、とある。原発では9円(この数字も操作されているという指摘もあるが)となっているので、高いとはいえ、水力発電並みということになる。コスト面をことさら強調するほど、高い電力とも思えない。

 なにしろ、この高温岩体発電を含め、地熱発電は基本的な燃料費がかからない。発電施設さえ建設してしまえば、後は、動力ポンプなどのわずかな燃料を必要とする機器を動かすランニングコストだけで、ほとんど0円で発電できる。

 原発がいかに危険で、不安定な供給しかできない発電所であったか、今回の福島第一原発事故および40数年来初めての全原発停止で騒がれる停電問題でわかった今、日本は大きなポテンシャルのある地熱開発に全力で取り組む時ではないだろうか。

【参考サイト】 未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み- by 電力中央研究所

【関連コラム】 オーストラリアの地熱、26,000年分の電力供給が可能
         日本こそ、世界一の地熱発電先進国に!

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オーストラリアの地熱、26,000年分の電力供給が可能

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 温泉らしい温泉もほとんどなく、活火山は人の住んでいない遠く離れた孤島にあるだけで、火山ともほぼ無縁のオーストラリア。そんなオーストラリアでも、地熱発電を試みている地区がある。

 クイーンズランド州南西部、赤土の広大なシンプソン砂漠に面した町バーズビルには、オーストラリア唯一の地熱発電所がある。自然湧出する熱水(温泉)の蒸気を利用した『ウェット方式(対流型地熱資源)』で、80キロワットの発電力を有し、町の4分の1の世帯に電力を供給している。

 とはいえ、オーストラリア全体の電力供給量からすれば、わずか1%程度にすぎない。それほど、この国にとって地熱は、馴染みのないエネルギー源でもある。

オーストラリアの地熱に26,000年分の発電力

 ところが2008年、オーストラリア政府は意外な調査結果を発表をした。それは、これまで手が付けられてこなかった地熱エネルギーに、なんと26,000年分もの発電力が潜在しているというもの。

 オーストラリアは世界有数の石炭輸出国であり、国内の77%の電力は石炭による火力発電だ。そんな国の大陸奥深くに眠るクリーンなエネルギーの驚くべき潜在力を知り、オーストラリア政府は5000万豪ドルを研究および技術開発費に投入すると発表した。(2008年8月20日ロイター記事

 豪地熱エネルギー協会=AGEA(Australian Geothermal Energy Association)によれば、この新しい地熱発電によって2020年までに、2,200メガワットのベースロード電力(常に使っている需要電力)供給が可能であると予測。これを受け、オーストラリア政府は、再生可能エネルギーの目標を40%とし、全国需要電力の20%に当たる毎時45,000ギガワットの発電を目指す考えだ。ちなみに、2020年までに、再生可能エネルギーで2,200メガワットのベースロード電力を生み出すために費やすコストは、120億豪ドルに達すると試算されている。

温泉いらずの地熱発電、ホット・ドライ・ロック方式=高温岩体発電

地熱発電・ホットドライロック方式 地熱発電は、日本やニュージーランドでよく見られ、上記のバーズビルでも行われているような熱水=温泉水からの蒸気を利用するものが一般的。しかし、オーストラリアが新たに取り組んでいる地熱発電は、『ホット・ドライ・ロック(高温岩体発電)』と呼ばれる方式で、地下で熱せられた高温の岩石に水をかけて水蒸気を発生させ、タービンを回して発電する仕組みだ。そして、さらに場所によっては『バイナリー方式(参照)』も検討されており、環境への影響は最小限でCO2排出もほとんどなく、24時間365日の発電が可能だという。

 日本における地熱発電では、掘削により、温泉の質が変わってしまう、または枯渇してしまうのでは?という問題がつきまとう。しかし、このホット・ドライ・ロック方式は、温泉資源とは無関係なため、そうした問題とはほぼ無縁だ。(参照:温泉と共存できるか?産業技術総合研など、地下600メートル掘削へ -毎日新聞 2012年1月17日付け)

 また、地下で熱せられた岩盤の熱のみを利用するため、石油や石炭のように枯渇する資源ではないのが特徴。利用する熱は地球深部のマグマで温められたものであり、マグマが急速に冷えない限り、比較的短期間に回復する。つまり、熱を取りすぎたために、その場所から永遠に熱がなくなってしまうということはない。ほぼ無限に存在する、地底に眠る膨大な熱エネルギーといえる。

南オーストラリアで始まった地熱発電試験プロジェクト

 クイーンズランド州境付近の砂漠地帯、南オーストラリア州イナミンカ地区で、このホット・ドライ・ロック式の発電試験プロジェクトが始まっている。正式稼働すれば、廃棄物を一切出さずに原子力発電所10基分に当たる、10,000メガワットの電力生産が可能だという。

 「Geothermal industry pushes for more power」と題して2011年7月6日に放送されたABCニュースでは、冒頭のバーズビルの地熱発電所と、この南オーストラリア州での試験プロジェクトを紹介している。


 原発に依存しないエネルギーとして、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが注目される中、CO2をほとんど出さず、最もクリーンで安定供給が可能な「地熱」。オーストラリアよりも利用が容易で技術的にも優れている日本こそ、地熱発電のあらゆる方面からの可能性に挑戦し、世界にお手本を示して欲しいと思う。

【関連コラム】 日本こそ、世界一の地熱発電先進国に!
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地球を襲うひとつの現象 『グローバル・ディミング=地球暗化/地球薄暮化』

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(すっかりサボっちゃってたのですが…本日再開。といっても、今回は2005年に某メディアサイトに寄稿したコラムの手直しですが…今もう一度注目してみおきたい話題だと思うので、少し手直しして再掲)

 地球温暖化=グローバル・ウォーミングのことばかりが取り沙汰され、「温室効果ガスを抑えさえすれば地球の温暖化は制御でき、再び住みやすい地球 になる」といった感じにとらえられがちだが、実は、温暖化の裏でもうひとつの現象『Global Dimming/グローバル・ディミング=地球暗化、又は地球薄暮化』が起こっていることがわかっている。

 グローバル・ディミングとは、大気中に無数に放出された塵や埃など、地球の表面を覆う汚れた大気、大気中の微粒子(エアロゾル)がつくり出す雲が、太陽光を阻んでしまうことで地表に到達する太陽光が減少している現象だ。研究チームの調査結果によれば、10年で約3%ほど減少しており、これは過去50年間で1日の太陽照射時間が約1時間ほど減少したことを意味しているのだとか。

 汚れた大気が原因のひとつなのだとしたら、やはり、CO2をはじめとする温室効果ガス削減等で、大気を汚す物質を減らしたほうがいいのでは?と思うかもしれないが、一足飛びにそうとも言い切れない。なぜならば、普通に考えれば、グローバル・ディミングは太陽光が届きにくくなるのだから、地球は冷却化してしまうはず。それでも尚、地球上の気温は上昇していたのだから…

グローバル・ディミングがグローバル・ウォーミング=温暖化を食い止めている!?

 グローバル・ディミングに注目するよう警鐘を鳴らす専門家は多い。2005年に英国国営放送のBBCにより制作されたドキュメンタリー番組「Horizon」でも取り上げられ、ここオーストラリアでも放送と同時に大きな話題となった(※ページ下に動画あり)。

 地球が置かれている状況に関する新しい見解― それは、グローバル・ディミングによって太陽光が減少することで、温暖化がそれほど進まずに済んでいるのではないか?ということ。本来なら、人類が排出する温室効果ガスで気温がどんどん上昇しまうところ、グローバル・ディミングにより、地表に太陽光が届きにくくなっていることから、それほど気温が上がらずに済んでいるのかもしれないという。

 これが事実だとすれば、世界規模でCO2を減らすクリーンなエネルギーを利用すればするほど、大気中の煤塵(ばいじん)も減少することとなり、地表に届く太陽光が増え、温度はうなぎのぼりに上昇していくことになる。

 先の研究チームの試算よれば、このままいくと、今世紀末までには最高10度は気温が上がり、地球上の一部では人類が生活さえできなくなるという。つまり、地球温暖化を抑えようと、世界中の人々がクリーンなエネルギーを導入する努力がかえって逆効果に繋がりかねない…という、なんとも皮肉な現象が起こっているというのだ。

 このような、CO2をはじめとする大気汚染のもととなる排出物を減らすと温暖化が加速する、という見解は後を絶たない。

  • Reducing emissions could speed global warming/排出を減らすことで温暖化は加速する ・・・英テレグラフ紙に2007年10月29日に掲載されたガイア説提唱者のジェームズ・ラブロック博士によるコラム

 …とはいえ、そもそも温暖化しているのか?気温上昇してきたのはただ単に、地球がこれまでも繰り返してきた寒冷期と温暖期の、温暖期に入っていただけではないのか?というのが、私自身の本音ではあるのだけれど。ただ、ひとつ強く感じているのは、グローバル・ディミングは確実に起こっているのではないかということ。

 シドニーは今夏2011-2012、雨が多く、雲りがちな日が目立つ。これまで見られたような、真っ青な空にお目にかかれた日は少ない。なんとなく薄ぼけた、ぼんやりとした空や雲の多い空が増えている。これもグローバル・ディミングのせいなのか…と思ってしまう今日この頃。。。

【あわせて読んでおきたい記事】
Goodbye sunshine/さようなら太陽の光 ・・・英ガーディアン紙2003年12月18日に掲載されたグローバル・ディミングを取りあげた記事(日本語訳のページがあったのこちらにリンク置いておきます。中身=翻訳された文章については検証してませんので、ご自身の判断でお読みください)

※このコラムは、平野美紀が2005年4月20日に初めて執筆し、2012年2月22日に加筆・修正したものです。

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再生可能エネルギー:経済効果や雇用創出も考えるなら、風力よりゴミに注目!

電力を多く消費する白熱電球のゴミを訴えるアートオブジェ
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 風力発電=環境に優しい再生可能(自然)エネルギーだと主張する人が多い。たしかに、自然に吹いてくる風を利用するのだから、そう思っても仕方ないのだが、風力発電は、これまでも各所で述べてきたように様々な問題を抱えたままだ。

風力発電の問題点

 まず、第一に景観の問題。巨大な風車が列を成して立ち並ぶ姿は美観を損ねる。風力発電先進国ともいえるデンマークでは、山でも海でもどこへ行っても、人工の風車が林立しているのが視界に入ってしまい、どんなに自然と触れあおうとしてもできない…と苦情が出ている。また、風車を立てるために無残に切り開かれた山や道路も問題視されている。

 そして、最も問題視されているのが近隣での騒音被害だ。騒音とは、耳に聞こえる音のことだけではない。人間の耳には聞こえない低周波音も含め、人体への影響も大きい。風車から近い場所での頭痛、発熱、不眠症はもとより、1km以上離れた場所で音が聞こえないにも関わらず、「寝付けない。眠れない。目が覚めてしまい、船酔いのような気持ち悪さを覚える」という人もいる。

 また、人間よりもさらに敏感な小動物への影響は計り知れない。鳥類の衝突が真っ先に上がる問題だが、衝突せずとも死に至らしめる事態も発生している。カナダの風力発電施設周辺では、外部損傷のないコウモリの大量死が報告され、風力発電の是非が問われている。

 ならば陸上じゃなく、海上ならいいではないか?という意見も短絡的だ。イギリス近郊の海洋上に作られた風力発電施設周辺では、魚がいなくなって漁業が打撃を受けたり、イルカなどの大型海洋ほ乳類も姿を消した。中には死因不明で陸に打ち上げられたものもいたという。

 このように、風力発電は今のところ、景観を含めた環境への影響は甚大。その上、風力発電先進国デンマークでさえ、風力でもバイオマスでも賄いきれず、スウェーデンの原子力でつくった電気を一部とはいえ買っているという事情がある。しかしながら、世界では「風力発電=環境に優しい再生可能エネルギー」という面だけが誇張され、それを全面に出して莫大な資金を注ぎ込み、風力開発に力を注ぐ国や企業も少なくない。日本もしかり、だ。

風力発電問題へさらなる一石を投じる英国環境団体

 一昨日の6/12、この問題にさらなる一石を投じる論文が発表された。イギリスのEnvironmental Services Association(環境サービス協会)が発表した『緑の成長:ゴミを見逃さないで』だ。

 この英国環境サービス協会は、これまでもゴミに注目してきた環境団体で、ゴミの削減、リサイクル、活用を個人だけでなく、企業ベースで考えていこうという趣旨で発足された。この度発表された論文は、「風力発電に投じるお金があったら、ゴミに注目せよ」という、まさに今盛んに叫ばれ、注目を集める『再生可能エネルギー』の開発、新規着工への警告ともいえる内容になっている。

風力発電と同等費用で様々なメリットを生むゴミ

 簡単に説明すると、風力発電に必要な膨大な資金をそのままゴミ問題に投じることで、さらなる雇用と経済発展、環境保護、その上、僅かながらも発電さえ可能というものだ。

 例えば、1兆ポンドの資金を投じる場合:

<海洋設置型風力発電事業>
=削減できるカーボン(炭素)年間約1,400,000トン。650人の分の雇用。創出できる電気量3,250ギガワット。

<近代的なゴミ焼却及びリサイクル事業>
=削減できるカーボン(炭素)年間約4,000,000トン。3,000人の分の雇用。創出できる電気量300ギガワット。さらに、リサイクル品仕分け徹底による1,400,000トンのリサイクル資源確保。

英国環境サービス協会が提唱するゴミのあり方

 これだけメリットがあるにも関わらず、一国の政府機関さえ、目先が新しく、いかにも環境保護に尽力しているかのような印象を与える風力発電を主体とする再生可能エネルギーにばかりに目がいってしまうことは、非常に嘆かわしい事態だと英国環境サービス協会は主張する。

 彼らも決して、風力発電を否定しているわけではない。ただ、そこまで莫大な資金を注ぎ込む余裕があるなら、ぜひとも政府レベルでもう一度ゴミ問題に着目して欲しいと願っているという。

 ゴミ問題はおそらくどの国でも深刻な問題だろうと思う。人間が生活する限り出る、膨大なゴミ。それを減らし、さらに生かすためにどうするか?ゴミ問題こそ、人類が解決しなければならない最重要課題ではないだろうか。
 …つまり、自分のケツは自分で拭け…ってことですね。。

【参考】

※執筆日:2011年6月14日

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再生可能エネルギー:注目されるオーストラリアの太陽+火力ハイブリッド発電システム

世界一の太陽発電搭載発電所を目指すコーガンクリーク発電所
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 原子力発電で必要とされる燃料ウランは、オーストラリアが世界の70%の埋蔵量を誇ります。輸出シェアはカナダのほうが上だそうですが、それでもトップクラスの輸出国には違いありません。ですが、オーストラリアには原発はありません。国内の反対はもとより、それ以外の資源も豊富にあり、中でも火力発電燃料として最も効率のよい石炭の埋蔵量も豊富です。

 そのため現在は火力発電が中心ではありますが、地域毎に様々な燃料を使った発電方法が試みられています。オーストラリアは固有の生態系を守るために、行政側でも厳しい規制を設けており、また、国民意識も高いため、環境破壊に繋がることは極力避ける方向で動いています。[注1]

世界最大級の太陽光発電所を建設中のオーストラリア

ビクトリア州に世界最大級の太陽光発電所を建設中のソーラーシステム社  オーストラリアは、すでに各所で太陽光発電を実施しており、現在、太陽光発電所は着工済み未稼働のものを含めると44ヶ所(参照)。2009年に着工し、ビクトリア州北東部で建設が進められている、154メガワットの発電ができる世界最大級の太陽光発電所は、2015年の完成、2016年からの供給開始を目指しています(参照)。

 また2009年には、これまでも何度か構想に上がっていた1,000メガワットの発電が可能な、文字通り、世界最大の太陽光発電所=メガ・ソーラーパワー・ステーション(参考記事)のような発電所を14億豪ドル=現在のレートで約1,260億円を掛けて建設する構想を発表しました(参考記事)。

得意分野を統合した太陽+火力のハイブリッド発電システム

 オーストラリア、とりわけクイーンズランド州は『サンシャイン・ステート=太陽降り注ぐ州』と呼ばれるほど、年間晴天率が高く、太陽光発電に最適な環境があります。太陽光発電=ソーラーパネルによって電力を生み出すというのが一般的な発想ですが、これは実は非常に効率が悪く、上で紹介したビクトリア州に建設中の世界最大級の太陽光発電所でも、現在オーストラリアで稼動中の大型火力発電所1基分の電力しか作れません。

 太陽光では、1,000メガワット=100万キロワットの発電に必要なソーラーパネルを設置するのに、必要な敷地面積は67平方キロメートルだそうですから、東京ドーム約1,443個分に相当。土地は広大なオーストラリアですが、これではいかんせん効率が悪い…。また、稼動中の火力発電所を利用しながら、何とかできないだろうか?ということから考えられたのが、ここでご紹介する新発想の発電システムです。

 オーストラリアの重要な資源であり、世界最大の輸出量を誇る石炭。豪政府は、サンサンと降り注ぐ太陽と豊富に埋蔵されている石炭、この2つの得意分野を組み合わせたハイブリッドな発電所を今年4月に着工しました。

コーガンクリークに建設中のソーラーフィールド この取り組みは、石炭の町として知られるクイーンズランド州のコーガン・クリークに建設中の『ソーラー・ブースト・プロジェクト』と呼ばれるもので、これまでのソーラー発電の発想とは、全く異なるものです。現在稼動中の火力発電所にソーラーシステムを付加することで、両方の利点を利用する。

 簡単に言ってしまえば、巨大な太陽熱温水器+火力ボイラーによる発電所…といった感じでしょうか。太陽熱温水器は日本での利用者も多いのでご存知かと思いますが、太陽熱で水を温め、ある程度の湯温にするのは比較的容易です。この仕組みを利用し、ある程度まで温まったお湯から、さらに多くの水蒸気を発生させるために、足りない部分を火力によって補うという発想です。

 具体的には、フランス・アレバ子会社の小型線状フレネル反射器(Compact Linear Fresnel Reflector)を使った、既存発電所における蒸気発生をより高める過熱太陽蒸気技術(Superheated Solar Steam Technology)で、発電と燃料の効率アップを目的としています(参考記事)。

 コーガン・クリークのソーラー・ブースト・プロジェクトの仕組みは、ざっと以下のような感じです。

<コーガン・クリーク太陽熱発電の仕組み> ※番号は図に合わせたものではありません。
コーガン・クリークの太陽光+火力のハイブリッド発電プロジェクト

  1. 現在稼動中の火力発電所の横に、ソーラーフィールド=太陽熱システムを設置。
  2. 空冷で得た水をパイプを通じて、太陽熱システムへ分配する。
  3. 太陽エネルギーで温められた水から蒸気が発生。
  4. 蒸気をさらに加熱し、電気を生成するための中間圧力タービンへ。
  5. 火力発電所で太陽熱でできた温水をさらに加熱し、蒸気をより多く発生させてタービンへ。
  6. 蒸気でタービンを回し、発電プロセスへ。
  7. 発電後は、蒸気を空気冷却凝縮器に送って再び液化(水に)し、再利用する。

 注目すべきは、ソーラーパワー(太陽熱の力)を最大限利用する点と、使った蒸気を再び水に戻して再利用する点。これにより、より少ない燃料で済み、何より石炭を燃やす量がグっと減るため、CO2削減も可能です。発表によれば、この仕組みで年間35,000トンのCO2が削減できると言われています。

 また、このシステムであれば、従来の発電所に併設することで、着工から2年程度で設置可能。コーガン・クリークの場合は、2013年の完成を目指し、この太陽熱システムによって最大44メガワット(太陽熱ピーク時)の発電が見込まれています。完成すれば、世界最大のソーラーテクノロジー統合火力発電所になる予定だそうです。

孫氏が提唱する太陽光発電プロジェクトに意義あり!

 ソフトバンクの孫正義社長が提唱する太陽光発電プロジェクトは、休耕田や耕作放棄地を利用して、太陽光発電装置を設置するというものだそうですが(…これにより、孫氏は「50ギガワット、つまり原発50基分の発電ができる」と発言(参考記事)…)、個人的には、その休耕田や耕作放棄地は、本来の目的通り、農業に使うべきと考えます。

 東京電力の公式発表さえ『原発1~3号機がメルトダウン』していることを認めた現状では、福島をはじめ、近隣県の汚染も著しく、とても農作物を育てる環境では無くなっています。ですから、西日本で余っている田畑は、すべて本来の目的で再利用すべし。ただでさえ、食料自給率が低いとされている日本なのですから、足りない人手は福島など原発被災地の農家の皆さんに移住してもらうなどして、余すところなく、農作物を作るべきです。

 また、(現時点での)太陽光発電の効率の悪さは上にも記しましたが、具体的に日本に置き換えれば、現在の原発の発電能力をすべて太陽光に置き換えた場合、3,272平方キロメートルの敷地=東京都(2,187平方キロメートル)+大阪府(1,896平方キロメートル)の半分以上が必要になる計算だそうです(参考記事)。

 広大な土地を有し、晴天率も高く、太陽が容赦なく降り注ぐオーストラリアでさえ、ある意味、二の足を踏むほど効率の悪い太陽光発電。太陽光発電所の最大出力は、太陽の力を100%利用できた時のみ、あくまでも太陽光のピーク時の数字であることを認識する必要があります。

 ですから、ただでさえ国土が狭く、おまけに(いくら現在使ってないとはいえ)田畑を使う案では、食料自給率も低いとされる日本には適さないと思う次第。日本で太陽の力を利用するなら、現在の発電所を生かすコーガン・クリークのプロジェクトのような、ハイブリッド・システムが最もふさわしいと思うのです。

【参考資料】

[注1]とはいえ、現在のオーストラリアは、ウランや石炭採掘及び輸出をはじめ、火力発電がメインになっていることで、「環境に優しくない」と言われることがあります。WWFオーストリアによれば、オーストラリア国民一人当たりの温室効果ガス排出量は世界でも大きく、エコロジカル・フットプリント ecological footprint 数値の比較では調査対象国147カ国中6位と発表されました。ですが、私自身は(環境保護推進派でありますが)エコロジカルフットプリント、カーボンオフセットのようなものは、あくまでも机上の話と思っていますので、あしからず。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
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