潤沢なウラン鉱脈クーンガラ、世界遺産のカカドゥに組入れ決定!

湿原に沈む夕陽を一望できる絶景ポイント、カカドゥ国立公園
標準

 50億ドルの巨額オファーに目もくれず、ただひたすら先祖から受け継いだ土地を守った男、ジェフリー・リー。今年40歳になる先住民アボリジニのジェフリーは、子供の頃から一族と共に自分たちの土地を守るために戦ってきた。その歳月は30年以上。

 ”This is my country. Look, it’s beautiful and I fear somebody will disturb it,” 「ここは私の故郷だ。見てごらん、こんなにも美しい。私はこれを何者にも侵害されたくないんだ」

 1981年、隣接するエリアが世界遺産に登録された。「カカドゥ国立公園」だ。カカドゥの国立公園及び世界遺産エリアはその後も、1987年と1992年に拡大・追加登録され、クーンガラ地区も組入れて欲しいと訴え続けてきた。それが、本日2011年6月28日、ようやく叶った!クーンガラ地区が世界遺産指定エリアになることで、この土地は永遠に守られることになる。(参照記事

夢を見てるかと思うほど美しい湿原が広がる、カカドゥ国立公園

推定埋蔵量14,000トン!世界有数のウラン鉱脈が眠るクーンガラ

 2011年度の世界遺産委員会で、世界遺産であるカカドゥ国立公園への組入れが決まった「Koongarra クーンガラ」。この土地には、推定埋蔵量14,000トンという世界有数のウラン鉱脈が眠っている。オーストラリア政府がこのエリアの追加登録を世界遺産委員会へ申請することを受け、フランスの大手原子力企業であるアレバ社から圧力がかかった。

 アレバ社は2007年にも、このエリアの長であるジェフリーへ採掘権と引換えに「50億ドルの巨額オファー」を申し出、無下にも断られていた。数々の姑息な手を打って、何とかウラン鉱脈を手に入れようとしたアレバ社の企みも、今回の世界遺産登録決定で、露と消えた。ジェフリーら一族の30年にも及ぶ主張が支持され、勝利したのだ!

50億ドルの巨額オファーを断り、故郷を守った男

 ジェフリーは、アレバ社からの巨額オファーを断った時、当地のメディアにこう語っている。

「あそこは聖なる地なんだ。(先祖が)眠っている。あそこには、私が守っていく責任のある特別な場所が他にもあるんだよ」

「私は白人のオファー=申し出には興味がない。それは、何の意味もないからね」

「私はお金にも興味がない。自分には仕事もある、食べ物も買える。釣りにも狩りにも行ける。それだけで十分じゃないか」

「私は祖母におんぶされて、この土地の隅々を行き交った。そこでたくさんの話を聞き、この土地のすべてを学んだ。私はこれを私の子供たちに渡さ(伝え)なきゃいけない」

「私の父や祖母だったら、この土地を採掘することに合意し、明け渡していたかもしれない。でも私は成長する中で、この土地に埋まっているそれら(ウラン)には毒性があることを学んだ」

「私の父や祖父は、車や家など他にもたくさんの申し出を受けた。でも、誰もウランがどういうものかという説明はしなかったのさ」

世界遺産に登録される直前のジェフリーのコメント

(6/29追加)
世界遺産に組入れが決定した日のジェフリーのコメントもまた、素晴しい!人間の本当の幸せとは何か、人間はどうあるべきなのかを教えてくれます。

 故郷を愛する気持ちが勝利した、今回の決定。オーストラリア政府の首相、環境相をはじめ、国内メディアからも賞賛の声が上がっています。(首相コメントおよびリリース環境相コメント

 地球上にある35%という世界一のウラン埋蔵量を有すオーストラリア。この大陸自体が奇跡のような土地なのだから、いっそのこと『オーストラリア全土』を世界遺産にしちゃえばいいのに。そうすれば、ウラン採掘もできなくなる…とか思ったりして。(^^;

【参考】

【参考コラム】
【オーストラリアの世界遺産】カカドゥ国立公園
原子力産業の魔の手から故郷を守った男、その後

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

福島原発事故は未知の領域、被爆の危険性に関する知識も不十分

福島原発第3号機の爆発とよく似た核実験の爆発瞬間画像
標準

 米の原子力専門家アーニー・ガンダーセン氏が4/26に公開されたビデオで示した「3/14に起きた福島第一原発3号機の爆発が“爆轟(ばくごう)”であったこと」が、ようやく今日(6/6)になって日本の新聞でも報道された。(該当記事

 この記事によれば、財団法人エネルギー総合工学研究所の解析によって、この事実が分かり「1号機より破壊力が高い爆発が発生した」とは認めているが、「発生した水素の量の違いで」とし、あくまでも“水素爆発”として片付けたいらしい。

 しかし、先のガンダーセン博士も、英の科学者(電離放射線の権威)クリス・バズビー氏も、「福島第3号機の爆発は、一種の“核爆発”」と見ている。バズビー博士は4/12のテレビ出演で、すでにこのことについて指摘している。(該当ビデオ,参考記事)なぜそのように考えるか?について、「水素爆発では起こりえない閃光を伴う爆発=detonation(爆轟)が見られた点」をあげている。

 また、この爆発は格納容器の爆発ではなく、使用済み核燃料プールが空になり、即発臨界したためと見るのが妥当だ説明している。このことについては、このブログでも4/30の記事で解説しているので、そちらを参照のこと。(このページの画像は、バズビー博士の主張を再現したもので、福島第3号機とよく似た核実験の爆発の様子をとらえたビデオからの切抜き。元動画はこちら

独立系学者と御用学者の温度差

 私がガンダーセン博士らの見解が信用に足るとする最たる理由は、Independent(独立系)だから。これは、彼らが展開する理論はもちろん、その見解が正しいと支持するほうへ大きく傾く要因のひとつになる。学問、科学の研究にはお金がかかる。すると、どうしても資金提供者への見返りが要求されることになる。そうして癒着、都合の悪いことは言わない。公表しないという構図が出来上がる。これはしがない資本主義の悪の部分だ。

 その点、Independentの学者は、そうしたしがらみに囚われず、自由な発想、研究ができる上、発言の制約もない。つまり、この場合、原子力の悪い部分や公表されると困る部分に関して、何のためらいもない。本来、学問とはそうあるべきなのだが…。

★ガンダーセン博士は、つい最近(6/3)にも以下のような興味深いコメントを残している。Twitterのほうでもツイートしたけれど、こちらにも記載しておきます。このコメントのソース元や今後の速報などはTwitterで拾ってください。

  • 「福島の危険は我々の予想を超え長期に渡る。それは今の科学では足を踏み入れたことのない…核燃料が地面に横たわった状態で剥出しのまま過熱されている状態」
  • チェルノブイリよりも悪いという側に私はこれからも立つ。風が東京方面、南に向かって吹くことを懸念するのと同時に、もし余震等で4号機が崩壊するような事態となるなら、友人への私のアドバイスは“逃げろ”だ」
  • 「NRC(米原子力規制委員会)は、3号機の新たな問題に昨日初めて言及したが、底がブレイクアウト(崩落)し、汚染物質のすべてがぶちまけられることを懸念している。コア全体が突然落下する可能性もある」

度々修正される信用しかねるデータとチェルノブイリの教訓

 核のエネルギー量は、広島原爆の40~50倍といわれる福島第一原発(存在していたウラン量は、広島原爆の約300倍とも。さらに使用済核燃料の分を入れるとその量は膨大)(参考記事)。もし、本当に核爆発だとしたら、いや、仮にそうでないとしても、すでに3機がフルメルトダウン(全炉心溶融)しており、さらにもう1機もトラブル発生中で危険な状態なのだから、放出されている放射線物質の量は相当量あると見て間違いなさそうだ。それは、後になって上方修正されてばかりの数々のデータが裏付けている。(参考記事)…ちなみに、こうした発表はこれまでも何度となく修正されており、この数字すら信用できるものかどうかは不明。としか言いようがない…。

 また、矢ヶ崎琉球大名誉教授によれば、こうした状態で原発の上空100メートルから毎秒4メートルの風が吹いたとすると、1,500キロ以上に渡って放射物質が飛散するという。(該当記事)つまり、「日本中が汚染されたとみた方がいい」と、同教授は指摘している。

 チェルノブイリでは、(稼動中の爆発炎上という状況の差はあるけれど)2,300km以上離れたイギリスのウェールズ地方あたりまで飛散したそうだ。原発のあった現ウクライナ及び周囲の旧ソ連下の国以外で最も汚染された地域は、原発から1,600km以上離れたフランス、イタリア、スイス国境を挟んだアルプス地方だった。(参考記事)どちらも、農産物の出荷については慎重に検査を行ったそうだ。こうした事情からも、欧米の国々が福島の事故に重大な関心を寄せ、正確な情報収集に躍起になるのは当然といえる。

 そして、この事実から今、日本が学ばなければならないことは、「自分が現在住んでいるところは、福島県ではないから大丈夫」ということは決してない、ということ。まさに目の前に福島第一原発を抱える福島県は当然のこと、日本全土が危険にさらされていると認識したほうがいいということになる。

 放射線が怖いのは、それ自体が目には見えない、臭わないことだ。そして、すぐに障害が出るわけではないということも念頭に置かなければならない。チェルノブイリ事故における作業員の死亡者は28人だが、すぐに死亡した人だけではない。被曝から4ヶ月の間に、大量被曝による急性放射線障害で徐々に死亡しているのである。

 そして、周辺住民に症状が現れ始めたのは、事故後、5年後くらいから。地元の小児甲状腺癌発生率が事故前に比べ、10倍になったという。そして、今でも様々な放射線障害に苦しんでいる状況なのだ。

いまだよくわからない低線量被曝の危険性、健康への影響

 今回の事故の恐ろしさは上でも触れたように、原発作業員のようにすぐそばで大量被曝をする危険がなくとも、また、汚染が最も深刻な福島県下に住んでいるわけでなくとも、今も放射線物質がダダ漏れ状態の現状では、日本のどこにいても長期的な低線量被曝の危険があるということ。この低線量被曝の危険性、つまり長期的に低い線量の被曝をした際に受ける健康被害については、研究が進んだ現代においてもまだ、ほとんどわかっていないのだそうだ。(参考記事

 空気中に飛散する放射性物質だけでなく、降下して地面に付着したものも考えれば、農産物も危険だ。土壌に積もった放射性物質はやがて雨等によって地中に染み込み、農産物を含めた植物が取り込む。その植物を食べる動物、家畜等も放射性物質を取り込み、内部被曝することになる。また、大量に放出した汚染水のおかげで、地下水の汚染もおびただしい。汚染地下水は地中深くの水脈に入り込み、日本中の様々なところへ染み出してくる。このような状況では、日本で収穫、産出される食品のほとんどが汚染されていると考えるべきだ。

 マサチューセッツ工科大学環境健康安全室放射能防御プログラムのウィリアム・マッカトニー 副主任は、食べたからといってすぐに健康に被害がでるわけではないとしながらも「慎重を期するなら、その食品を食べない こと」と指南する。また、ノースカロライナ大学の疫学者スティーヴ・ウィング博士 は、微量であっても放射性物質が残留していることで、長期的重大な問題を引き起こすおそれがあると指摘。「原発から遠くなれば、1人当たり の被曝量は少なくて済むかもしれないが、被爆する人は多くなる」と言う。(参考記事

 とにかく、いまでもまだ、どの程度の期間、どれくらいの放射線を浴びたら、どうなるのか?ということが、よくわかっていない放射線被曝。わかっているのは、程度のほどは不明でも、健康に害を及ぼす有毒なものであることには間違いないという事実。このことを念頭に置き、甚大な被害を避けるために、可能な限り原発から遠くへ避難する。食品もできる限り遠くで収穫されたものを食べる。外出はできる限り避け、する場合には肌を露出しない、できればマスクを着用するなど、できうることはすべてやる。というのが、今出せる唯一の答えなのかもしれない。

※ちなみに、3月の事故以降「原発で核爆発はない」としていた京都大の小出裕章先生も、一度は「3号機は核爆発ではないか」という見解を示している。これは、5月に入って出てきた高崎CTBT放射性核種探知観測所のデータ(参考)を見て、「ヨウ素135が高い数値で検出されていることから、ウランの核分裂反応が異常に進んだという可能性」つまり、核爆発であった可能性を示唆したものだが(参考記事1記事2)、後に高崎のデータが修正(参照)された…という経緯がある。

About Me
Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。