さよなら、TENSAI(天才)~シドニーで最も愛された日本人・小野伸二

サポーター席に登場した小野伸二選手の大きな顔が描かれた横断幕
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 2014年4月5日、豪州東部時間午後6時。シドニー西部パラマタに、秋の訪れを感じる冷たい風を吹き飛ばすような熱気が押し寄せる。赤と黒、もしくは、赤と白のジャージに身を包んだ集団が、次から次へと押し寄せる紅い波のように、パラマタ・スタジアム(通称Pirtek Stadium)へと流れていた。

 パラマタ・スタジアムを本拠地とするサッカー豪州Aリーグ・ウェスタンシドニーワンダラーズの今季ホーム最終戦。サポーターたちが、最後のホームゲームでの勝利を信じて集結したのはもちろんだが、この日は、ウェスタンシドニーワンダラーズにとって、特別な日でもあった。

ウェスタンシドニーワンダラーズの歴史を作った男

ウェスタンシドニーワンダラーズのホーム「パラマタ・スタジアム」

 それは、チームの歴史を作った一人のプレーヤーをホームで見られる最後の試合でもあったからである。(注:レギュラーシーズンのホーム最終戦。この後にもう1試合メルボルン=アウェイが残っている。)

 背番号21 SHINJI

 そう、日本人サッカープレーヤー・小野伸二、その人だ。

 2012年、ウェスタンシドニーワンダラーズ創立に際し、クラブ初代のマーキープレーヤーとして加入、あっという間にAリーグのスターの座を射止めた。その華麗なプレーはもちろん、お茶目な人柄が、サポーターたちの心をぐっと掴み、クラブの顔となったのである。そして、オーストラリアのサッカー解説者が小野を賞賛する際に多用する「TENSAI(天才)」という日本語が、彼の代名詞となり、サポーターの間でも定着。天才は、クラブ創設わずか1年目にして、初のレギュラーシーズン優勝を引き寄せる立役者となった。

 パラマタの地元でも人気者となり、チームにとってもなくてはならない存在となった天才・小野伸二。残念ながら、今季限りでウェスタンシドニーを退団、札幌コンサドーレへの移籍が決まっている。この移籍が発表された時、サポーターたちの嘆きはかなりのものだったようだ。とはいえ、嘆きの中にも「小野は永遠にクラブのレジェンド」「忘れることはない」など、小野の偉業を賞賛する声が相次いだ。(参照

小野選手へ、心からのフェアウェル


 サポーターたちは、この日、小野選手へのフェアウェル(お別れ)メッセ―ジが描かれた手作りの横断幕やサインボードを手に、スタジアムへやって来ていた。スタジアム入口では、応援のための小野のお面や小野が表紙になったクラブ機関紙なども配られた。皆、それを手にしながら、小野への別れと感謝の思いを胸に、スタジアムへと入っていく。

 スタジアムには、本当に大勢の小野ファンが詰めかけていた。一家そろって小野の大ファンという家族、とにかく小野が大好きという子供たち、小野のような選手になりたい、サッカーがうまくなりたいという男性、21 TENSAIのジャージを着た老紳士などなど、ちびっこからお年寄りまで、本当に本当にたくさん……

 そして、クラブとスタジアムは、ウェスタンシドニーの21番・小野伸二の背番号にちなんで、21分にサプライズを用意していた。

マジカル21ミニッツ


 試合開始前から、何度となく「シンジ!オノ!」の大歓声があがる。スタジアムが一丸となって、「シンジ!オノ!」をコールする。それぞれが、自作の小野へのメッセージが描かれた横断幕やプラカードを高く掲げ、精一杯のフェアウェル&サンクスを贈る。日本語の「ありがとう」「さようなら」「小野伸二」「おのしんじ」「オノシンジ」「天才」といった文字が躍る。一生懸命練習したのだろう、どこかユーモラスなその字体が、妙に微笑ましい。そんな様子を見ていると、小野伸二というプレーヤーがこんなにも地元で愛されていたのだと、あらためて実感する。

 午後7時45分、キックオフ。ホーム最終戦のためか、スタジアムに数発の花火が上がった。天才21番が、元気よくフィールドへ走り出すと、観衆の熱気は最高潮に!ボールが21番へ蹴りだされる度に、「オノオノ!シンジ!オノ!オノオノ!シンジ!オノ!」の大歓声あがる。

 そして、試合開始21分。

 スタジアム上空に、大きな打ち上げ花火があがった!客席から大量の紙吹雪が舞い飛ぶ。「シンジー!オーノー!」のコールがスピーカーから響き渡り、天才21番の顔がスタジアムの大スクリーンに映し出されると、観衆は総立ちとなり、一斉に「シンジ!オノ!」の大合唱に包まれた。まさに、スタジアムが「シンジ・オノ」一色に染まった瞬間。

 その後も、「シンジ!オノ!」の掛け声は何度となく上がり、後半45分に交代となり、ピッチから下がる時には、スタジアムに詰めかけた観衆全員のスタンディングオベーションで見送られた。

 今季限りでシドニーを去る天才。彼が残した偉業は、ウェスタンシドニーのクラブ史に残るだけでなく、「TENSAI(天才)」という日本語を定着させ、シドニーで最も愛された日本人として、地元の人々の心の奥底に永遠に刻まれることになるだろう。天才21番・小野伸二の軌跡は、シドニー西部の小さな町パラマタのそこかしこに残っている。

 試合後の帰り道、21 TENSAIのジャージを着た老紳士の後ろ姿が、心なしか寂しそうに見えたのは、私だけではなかったはずだ。

 Sayonara Tensai! Arigato Tensai!

※以下で、ウェスタンシドニーワンダラーズ公式ツイートによる、当日のサポーターの様子を一部ご紹介します。最後に入れた、小野選手のフェアウェルのために作られた素晴らしい動画も必見です。


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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

再び 『 ツチノコ 』 現る!?

アオジタトカゲ
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※この記事は、ODNトラベル内公式ブログ「シドニー海外生活ブログ」から移転した「シドニーの達人」ブログへ、2006年9月24日に掲載したものです。本日、リンクが切れていた画像を入れ直し、再アップしました。

 庭掃除をしていた時に、突然現れた奇妙な生物。日本では2億円という懸賞金が掛けられている『ツチノコ』そっくりのその生物が、またまた出没!!

 アワアワしていた初対面の時と比べ、今度は落ち着いた(?)態度でそいつに臨み、デジカメを構えて超接近激写を試みた! 20cm程度からまず最初のシャッターを切る。まだまだ近づけそうだ。さらに距離を縮めて15cm。こっちを見ているが、まだ近づけそう。ええい!一気に5cmの超接近!!

アオジタトカゲ
アオジタトカゲ

再び登場!のアオジタくん。

…したらば、シャーッとヘビのように威嚇され、ヤツのシンボル“青い舌”を出してアッカンベーされてしまった(>_<)。

アッカンベーをするアオジタトカゲ

必見!アオジタ・トカゲのアッカンベー。
しかし、、トカゲにアッカンベーされるとは…(^^;

 やっぱり我が家の敷地内に棲んでいる模様。出掛けている間放置され、雑草が延びっ放しになっている荒れ放題の庭がお気に入りのようで、出たり入ったりして楽しんでいる。なんだかカワイイ♪(…あれ?こんな不気味な生物がかわいく思えてくるなんて??)

 近づいて話しかけるところまではできるようになったけれど、触るのはまだちょっとカンベンして欲しい感じ。ツルツル、ヌルヌル感が空気を通してでも伝わっくるような気がして、想像しただけで鳥肌立ってくる…(苦笑)。

 やーしかし、こんな微笑ましい(?)様子を見ているとなんだか愛着湧いてきますね。

 このツチノコそっくりのアオジタくん。日本の爬虫類マニアな方々には、とても人気があり、何十万円(…いや、もっとかも?…)もする高価なお品(…じゃなくてペット)なんだそうな。ん?ってことは、すごいお宝じゃない!気持ち悪がってないで、大事にしなきゃ。

 でも、見れば見るほどツチノコそっくり

 同じアオジタ・トカゲでも俗に言う“キタ(北部という意味)”は、顔と胴体の付け根あたり(要するに首ですね)が結構クビれててトカゲっぽいけれど、この我が家に生息している“ヒガシ(東部)”という種は、胴体が頭に比べてかなり太い体型でよりツチノコっぽい。

 もしかして、ツチノコって、昔にこの種がこっそり日本に持ち込まれてひょっこり姿を現したのかも?と思えてくるナー。ツチノコの正体見たり!?

ツチノコ―幻の珍獣とされた日本固有の鎖蛇の記録

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身の回りの環境を知る -ナショナル・ツリー・デー

身の回りの環境を知る -ナショナル・ツリー・デー
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本日、2013年7月28日はナショナル・ツリー・デー(National Tree Day)でした。ナショナル・ツリー・デーとは、毎年7月の最終または8月の第一日曜に、この国=オーストラリアならではの固有の樹木・植物を植え、独自の生態系を維持しようという取り組みです。

ナショナル・ツリー・デーは、環境へのダメージ軽減を目的に設立されたボランティア団体「プラネット・アーク」と歌手オリビア・ニュートン・ジョンさんらの提言によって1996年から本格的に始まりました。

オーストラリアの固有種を増やし、生態系を保護する

現在は、固有植物種の維持保存と外来種の根絶を促す全国イベントとして、毎年、学校や地域のカウンシル(役所)が中心となって、ネイティブ(固有)種の植物の無料配布や植樹イベントなどが行われています。

このイベントを通じ、既に1,600万本以上、今年は約150万本もの固有の植物が植えられ、規模は年々拡大しています。

固有種の植物を無料配布

毎年、ナショナル・ツリー・デーに合わせて、地元のカウンシル(役所)や企業などによる、固有種の植物の無料配布があります。

これは、その地区に住んでいる人であれば、誰でも貰うことができ、自宅に持ち帰って、庭に植えることを目的としています。まずは、個人宅の庭を固有種の植物で覆うことで、その地区独自の生態系を守ろうという取り組みのひとつなのです。

今年は、我が家の近くのショッピングセンターでも配布があったので、早速貰ってきました!

ショッピングセンターで行われた無料配布

無料で貰うに当って聞かれるのは、自宅の場所(その地区の住民であることを証明するため)と、どんな環境にあるのか、ということ。例えば、同じ町であっても、海沿いと少し内陸に入ったところ、または、平地か高台の斜面などでは、環境が少々異なるためです。

自宅をとりまく環境について係りの人と相談しながら、どの植物がその場所に適しているかを考慮し、いくつかの候補の中から、好みの植物を貰うことができます。

ブラシのような花が咲く「ボトル・ブラシ」 
今回、私が選んだのはオーストラリアではお馴染みのボトルブラシ。海沿いの風が強い場所でもたくましく育つ、ネイティブ・ツリーです。ボトルを洗うブラシのような赤い花を咲かせるため、このような名前がついていますが、この花は、固有種のミツスイ系の鳥たちが大好きなので、鳥たちの楽園になることに期待して貰ってきました。

選んだ植物と一緒に、育て方が書かれた紙とその地区の固有種および外来種、雑草などの説明が載ったパンフレットをいただいて帰りました。

自分が住んでいる土地の環境を知る

庭の環境に適した植物を選ぶ

自分が住んでいるエリアの環境を見つめ、そこにはどんな固有の植物が自生しているのか、そこではどんな生き物たちが生息しているのかを知る。

庭に植える植物ひとつにしても、きれいだからといって外来種である花や木を植えていては、元々固有種の植物に依存していた生き物たちは、どんどんいなくなってしまいます。

物たちの棲み家を絶やさない 
人為的に環境を変えてしまうことをできる限りやめ、独自の生態系を維持するよう努める。人間が生態系を壊すのではなく、固有の生き物たちの棲み家を増やしていこうと努力する――

このような取り組みを地域のカウンシルや学校の主導で行うのは、とても素晴らしいことですし、住民が自分が住んでいるエリアの環境について考えるきっかけになるだけでも、このナショナル・ツリー・デーの意義があるのではないかと思います。個人的には、これからも、こうした取り組みを支援・注視していきたいと思っています。

みなさんも、自分の身の周りの環境・生態系について、見つめ直してみませんか?

ナショナル・ツリー・デーについては、こちらのコラムでもご紹介しています。よかったら、どうぞ!⇒ 自然にとけ込む家づくり -住まいに関する厳しい規制-

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王様のおやつ グーテデロワ を作ってみた-ラスク の レシピ

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王様のおやつ と呼ばれる ラスク を手作り! なかなかそっくりに作れたので、 レシピ をメモ。

 日本ですごく人気だという「ガトーフェスタ ハラダのグーテ・デ・ロワ」。いわゆる、 ラスク と呼ばれるフランスパンを使ったお菓子で、『 王様のおやつ 』と書いてある。

 なんで『王様のおやつ』なんだろうと思って調べてみると、商品名にもなっている「グーテ・デ・ロワ」が、フランス語で『王様のおやつ』という意味で、「お茶会」のことを指すらしい。

 まあ、講釈はどうでもよいのだけれど、先日、「ガトーフェスタ ハラダのグーテ・デ・ロワ」を食べる機会があった。バターの風味とちょっとジャリっとしたグラニュー糖のコンビネーションが、パリっとした生地に良く合って、確かにおいしい。2人であっという間に食べてしまった。

 バターすっかり食べきった後、「これ、家で作れそうだよね?」という話になり、後日、早速やってみることに… なんせ、シドニーじゃ買って来たくてもムリ!(笑)

まずは材料調達

 オーストラリア大手スーパーマーケットのColesにて、材料を調達。フランスパンを一から作るのは面倒なので、フレンチ・スティックという細めのフランスパンとColesオリジナルブランドの減塩バターを購入。ジャリっとしたグラニュー糖を再現するために、家にあった精製してないローシュガー(茶色のグラニュー糖)を使うことにした。

 んで、出来たものがこれ↓ めちゃめちゃ「グーテ・デ・ロワ」に近いものが出来上がった!味もかなりそっくりで、食べだしたら止まらないほどおいしい♡

王様のおやつ ラスク
 作り方は超簡単!以下にメモっておくので、「グーテ・デ・ロワ」ファンの方はお試しあれ。

まねっこ「 王様のおやつ 」の作り方 レシピ

  1. フランスパンは「バケット」タイプの細長いもので、できるだけ固めのものを利用。厚さ8ミリ程度に切り分けて、トレーに並べ、半日くらい放置。
  2. バターを湯煎で溶かし、グラニュー糖を入れて混ぜ合わせる。グラニュー糖は、バターに溶けきれないほど多めに。飽和状態でグラニュー糖がじゃりじゃりしてるくらい。だいたいバター10グラムに大匙2杯くらいかな?
  3. 表面が乾燥したフランスパンの薄切りに、飽和状態で砂糖じゃりじゃりのバターを砂糖をすくい取りながら、まんべんなく刷毛で塗る。
  4. トレーに並べ、オーブントースターで塗った面だけを約3分ほど焼く。
  5. 粗熱が取れるまで放置し、再度オーブントースターで約2分ほど焼く。
  6. 粗熱が取れたら、裏返し、先ほどと同じく、飽和状態で砂糖じゃりじゃりのバターを塗る。
  7. 先ほどと同じく、オーブントースターで今度は約2分焼いて、一旦冷まし、更に焼き加減を見ながら1~2分ほど焼く。

 冷めたら、出来上がり!

この手作り ラスク レシピ のポイント

 ポイントは必ず良質なバターを使うこと。そして、ふつうのバターだと塩分が強すぎると思うので、無塩または減塩タイプがおすすめ。無塩の場合は塩ひとつまみくらい入れるといいと思います。

 あと、バターを溶かす時、面倒だからとレンジでチンしちゃだめ!バターの風味が壊れてしまうので、必ず湯煎で。あとは、グラニュー糖の量も加減せずにたっぷりと。もうこれ以上(バターに)溶けられません…というくらいの飽和状態がいいみたい。一気にオーブンで焼いてしまうより、片面ずつ焼いたほうがいいみたいなので、オーブントースターを使用。

 とにかく手軽に、おいしい「王様のおやつ」が再現できるって嬉しい♪

 …でも、ちょっと思ったんだけど、日本だとバターが結構高いので、材料費とか手間を考えたら、手作りするよりも買ってきたほうが安上がりかも。。ともあれ、手作りの楽しさと、自分で目に見える安心な材料で作ったお菓子ってことで、お好きな方はぜひ!

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気候変動は確実に起きているが、温暖化は疑問

シドニーで実った果樹
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 年間を通じ、温暖なシドニー沿岸部では、柑橘類やビワなどの温暖な気候に適した果実以外は結実しないと言われている。それは、主に北半球なら北の地などで育つ果樹の場合、芽が休眠から覚め、開花するために、ある程度の低温期間(休眠期)が必要と言われているからだ。

 とくに冬場にグッと冷え込むことが必要とされる果実は、氷さえ張らないシドニーの温暖な気候では結実しない…というのが、なかば常識。我が家には、プラムと桃の木があるが、事実13年間一度も実が生ったことはないし、この地に50年以上住んでいるお隣のおばあちゃんも「それは桃の木だけど、実はならないからねぇ」と言うのが口癖だった。

 ところが今年、あろうことか桃もプラムも実をつけたのだ!

シドニーで初めて実ったプラム

 思い返せば、たしかに今冬(オーストラリアは南半球のため、冬は6~8月頃)は、これまでになく寒かった。氷こそ張らなかったが、今冬3か月間の暖房代が900ドル(約7万2千円)を超えたという家庭もあったほど。

 そう、今年の冬の冷え込みはハンパじゃなかった!あれは到底、温暖化しているとは思えない。むしろ、寒冷化なのではないかとさえ思えてくる。

 しかし、研究者たちはこぞって、「温暖化による果樹への影響」を強調し、「栽培適地が北上し、今世紀後半には現在の主産地で栽培が難しくなる」と警鐘を鳴らす。

 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所が発表している『温暖化が果樹生産に及ぼす影響と適応技術』のレポートでは、以下のような点を懸念材料として挙げている。

  • リンゴ、ウンシュウミカン、ブドウの果実着色不良、果実軟化、貯蔵性低下、ほとんどの樹種で発生する日焼けなどの果実障害の問題がすでに顕在化
  • 休眠期の温暖化により、施設栽培での発芽不良、地域によっては凍霜害などが増加

 また、地球環境研究センターによるレポート『温暖化の影響が顕著な果樹生産』でも以下のように指摘している。

  • 農業は環境への依存度の高い産業であり、地球温暖化による農業、とりわけ気候への適応範囲が狭い果樹栽培へのインパクトが懸念されている
  • 気温上昇が直接、生育に影響を与える果樹栽培では、栽培適地が大きく北上する可能性がある
  • すでに現れている温暖化の影響:着色不良・果実肥大・休眠不足・害虫北上

 この他にも、温暖化で果樹への影響、とりわけ栽培地が北上すると断言するレポートは枚挙にいとまがない。

 地球が温暖化しているというのならば、ではなぜ、これまで温暖な気候で冬場に冷え込みが厳しい寒冷地でしか育たなかったはずの果樹が、シドニーで実をつけたのか?という疑問が残る。

 また、日本でも寒く厳しい冬と猛暑の夏になっていると聞く。アメリカやヨーロッパなどでも、同じエリアなのに冬は豪雪、夏は猛暑など、異常な気候に見舞われている。

 つまり、地球は全体的に気候が変わってきているものの、『温暖化』しているのではなく、『極端化』しているだけなのではないのか?

 しかし、世界の流れとして、どうしても『温暖化』にしたい理由があるのだろう。それは、人間が排出する二酸化炭素の削減を実行するため。そのために、原発を推進したり、排出権取引に絡む利害関係や炭素税導入など、世界中の一部の利権者達にとって、オイシイ策を実現させるため、としか思えないのだけど……

【参考】

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シドニーの初日の出と、困ったうさぎ問題

2011年元日、シドニーの初日の出
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 遅ればせながら・・・・・・あけましておめでとうございます! 今年もどうぞよろしくお願いいたします。シドニーでの大晦日は、2年ぶりにシドニー湾のカウントダウン花火へ行って来ました~。

 昨年は迷っているうちにどうでもよくなって、自宅でTV観覧だったのですが、、、今年は重い腰を上げて、行って来ました。やっぱり、生で見ると迫力が違います! 思わず見とれてしまうほど。混雑を避けるため、観光客はほとんど行かない某ポイントで見たのですが、地元の人はチラホラいるものの、数年前に比べるとかなり少なくて、快適に見ることができました。

 自宅に戻って、何やかんやと用事を済ませ、ベッドに入ったのは午前3時。この時期のシドニー日の出は、午前5時20分ですから、寝ていられるのは2時間ちょっとしかありません。4時45分に目覚ましをかけたはずだったのだけれど、なぜか30分も遅れて鳴り、気がついたら5時15分。もう、太陽が上がってしまう。。。。さっと着替えて、慌てて外に飛び出しました。

 が、しかし・・・東海上の海面すれすれに薄く霞がたなびいており、本来なら日の出の時間を過ぎたはずなのに、まだ太陽は見えていません。それから10分くらいで、ようやく霞の層を抜けてきた太陽が顔を出しました! それが、この写真。自宅前の道路から見た、南太平洋から昇る初日の出です!

今年の干支うさぎは、オーストラリアでは害獣…今年の干支うさぎは、オーストラリアでは害獣…。
近所の保護区にも、この通りうさぎがいっぱい!親子でかわいいのですけど。。

 さて、今年の干支は「卯=うさぎ」ですね。ここシドニーにも野うさぎがたくさんいます。でも、うさぎは西洋人が持ち込んだもの(*)で、本来オーストラリア大陸にいるはずのない動物。しかも、オーストラリア固有種である有袋類のバンディクートと食性がバッティングしているため、害獣扱い。そのため、都市部のフレンチ・レストランでは、「うさぎを食べよう!」というキャンペーンが行われたりもしています。

 都市部に程近いエリアのバンディクートがその棲家を奪われ、個体数が減少していることを鑑みると、それも致し方なし…といったところでしょうか。。 うさぎもかわいいんですけどね、、

 (*)=西洋人がゲーム(狩り)のために持ち込んだものやペットが野生化。うさぎの他、西洋人によってゲームのために持ち込まれたキツネも同様に野生化し、固有種の野生動物を襲うために駆除対象になっています。

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料理の鉄人、オーストラリア版がスタート!

料理の鉄人-オーストラリア版
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 昨日から『料理の鉄人』オーストラリア版が始まった!

 ご存知、日本の料理バラエティ番組『料理の鉄人』が、アメリカで英語に吹き替えられて大ヒット。さらにオーストラリアにも渡り、これまたアメリカに負けず劣らずの大大ヒット!!  アメリカでもオリジナル版が作られたように、オーストラリアのオリジナル版が放映されることになり、昨日が初回だったのだ。

 英語に吹き替えられた日本のオリジナル版『料理の鉄人』は、オーストラリアでも大人気のTV番組だったため、フレンチの鉄人・坂井シェフや中華の鉄人・陳シェフは、こちらでも有名人。今でもしょっちゅう来豪され、『料理の鉄人』イベントが行われているほど。

 こちらで放映されていたオリジナル版『料理の鉄人』では、出演者のほとんどが英語に吹き替えられているのだが、加賀さん(鹿賀丈史氏)の部分だけは、なぜか日本語のままで、聞くところによると、あの変わった風貌と独特な言い回しが、オージーにさらに大ウケした理由だったらしい(笑)。

 そんな大人気番組の地元版ということで、鳴り物入りで登場したのが、『IRON CHEF AUSTRALIA』だ。オーストラリア各地のレストランのヘッドシェフら挑戦者が、鉄人に挑み、キッチンスタジアムを舞台に戦いを繰り広げる、というお馴染みの番組構成。

 3人の鉄人、3人の審査員、美食アカデミー主宰、司会者、料理解説者、そして挑戦者という顔ぶれは、初期のオリジナル版『料理の鉄人』と同じ。キモとなる加賀さん役=美食アカデミー主宰に、アメリカ版(Iron Chef America)同様マーク・ダカスコスを据え(…彼では、ちょっと面白みに欠けるような気がするが…)、番組の進行は、オリジナル版にかなり忠実になっていたと思う。

 各鉄人のプロフィールは以下の通り。

  1. モダンオーストラリアンの鉄人=二ール・ペリー:Rockpool
  2. フレンチの鉄人=ギローム(ギヨーム)・ブライミ:Guillaume at Bennelong
  3. イタリアンの鉄人=ガイ・グロッシ:Grossi Florentino

 それぞれ、オーストラリア国内きっての有名カリスマ・シェフであり、リンク先レストランのオーナー(またはダイレクター/総料理長)でもある。

 記念すべき第一回戦は、パースのGreenhouseというレストランでヘッドシェフに抜擢された23歳の若手シェフが、モダンオーストラリア料理の大御所ニール・ペリーに挑戦!テーマとなる食材は「ココナッツ」で、アジアっぽい食材をふんだんに使い、どちらもどれも見た目美しく、おいしそうな出来栄えだった♪

 どちらのシェフも感心するほどアジアの食材にも精通しているし、(審査員にしても)何でも食べるのがオージーの凄さ。食に対するあくなき追求は、世界一じゃないか?といつも思う。

 今回は、挑戦者が惜しくも敗れたとはいえ、4ポイント差と審査員からの評価も高く、パースに行ったら是非そのレストランに行ってみたい!と思わせてくれた。今後もそういう見方(今度行ってみたいレストラン探し)をしながら、番組を楽しむゾ!と心に決めたほど。

 でもホント、オージーって『料理の鉄人』好きなのね…(^^;

IRON CHEF AUSTRALIA

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