夜空に光り輝くオーロラ。観測地として一般的に知られているのは、カナダやフィンランドなど、北極圏に近い場所が多い。しかし、オーロラとは本来、地球の極に近いところでの、大気の発光現象なので、南極圏でも当然見られる。
南極圏で見られるオーロラを「サザン・ライツ」または「オーロラ・オーストラリス」という。その名からもわかるように、オーストラリアでも見られる。(もちろん、ニュージーランドでも観測可能) とくに、南半球のオーロラは、よく知られた緑色のカーテンだけではなく、どちらかというと、赤系(赤~紫)のものが観測されることが多いかもしれない。
オーロラ・オーストラリスは、太古の昔、オーストラリア大陸に暮らしていた先住民アボリジニたちも、もちろん見ていた。そして、その現象について、『ドリーミング』というオーラルヒストリー(口頭による伝承)で伝えている。近年、先住民アボリジニの伝承研究から、このオーロラ・オーストラリスに関する部分について、非常に興味深いことがわかってきた。
オーロラの出現は、『火』の暗示
それは、オーロラの出現は、『fire(火)』の暗示、予兆であるというもの。
オーロラ出現が意味するものには、この『火』に加え、『血』や『死』もあるというが、とくに、赤く見える場合は、『火』のメッセージとされている、と、先日オーストラリア国内で開かれた宇宙科学会議で発表されたのだ。(参照)
つまり、自然発火現象のブッシュファイヤー=森林火災が多いオーストラリアでは、火事に気をつけろというメッセージとして受け取れる。
オーストラリアでは、ほぼ全域でオーロラが観測できるらしいが、やはり高緯度のほうが出現率が高く、また、はっきりと確認できる。タスマニア在住の天体観測専門家によれば、シドニーより南部では、より確認しやすいという。そして、この伝承を持つのは、ビクトリア州と南オーストラリア州のアボリジニ部族に多いのだそうだ。(注意:タスマニア州のアボリジニは、白人の狩りによって絶滅させられてしまったため、現在は生存していない)
オーロラは、偉大なる空の神の怒り
この伝承を持つ部族のひとつ、ビクトリア州のグナイ族には、「オーロラは、偉大なる空の神“Mungan Ngour”の怒りの表れ」であるという伝承が残っている。
Munganの火は、神聖なる法や伝統に背いた人々に降り注いだ
「オーロラ出現現象は、天災の前兆である」という、伝承を持つ先住民は、ニュージーランドのマオリ族をはじめ、南半球のほかの地域にも存在するという。
ニュージーランドで観測された赤いオーロラと少雨
その赤いオーロラが、先日の2013年10月2日、ニュージーランド南島で観測された。(参照, 参照2) おりしも、NASAが「地球に太陽嵐が到達する」との予測を発表していたその日に…。(参照)
9月30日に太陽でかなり大型のフィラメントが噴出。このフィラメント噴出現象により、強い太陽嵐も発生。NASAの最新予測によると、太陽嵐は10月2日の昼頃に地球に接触する…
恐らく、オーストラリア南部でも観測できただろう。太陽嵐が地球に到達する、ということは、地球上でも何かしらの自然現象が起きているはずで、この赤いオーロラ出現もそのひとつなのだと思う。また、前日の10月1日には、シドニー郊外で異常なほど赤い夕焼けが見られた。(参照)
この異常に赤い夕焼けは、2011年2月にニュージーランド南島のクライストチャーチで起きた地震の数日前にも見られたことを思いだす。この件については、このブログにも当日記しているので、興味のある人はそちらを読んでみてください。その時にも、赤いオーロラが出現していたのだろうか?と、今になってとても気になっている。もしかしたら、これまで地球上で起こった大規模な自然災害は、太陽活動と密接に関係あるのではないか…
冒頭で触れたように、オーストラリアの先住民アボリジニたちは、赤いオーロラの出現は、「火事」の予兆であるということだが、確かに今年の冬は雨が少なく、今夏は大規模なブッシュファイヤーが懸念されている。既に、まだ9月(通常なら春)であるにも関わらず、深刻なブッシュファイヤーが何度か起きている。先日のオーロラはその暗示なのか?
ともあれ、「南半球でのオーロラ出現は、天災の前兆」という、太古の時代から多くの部族が受け継いできた伝承は、無視せずに、心に留め置く必要があるのではないか…と、つくづく思うのです。
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
★執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。