原発29基分の再生可能エネルギー、日本の高温岩体地熱発電

温泉との共存が問題視される地熱発電
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 ほぼ無限に存在する、地底に眠る膨大な熱エネルギーといえる「ホット・ドライ・ロック=高温岩体発電」。前回のエントリーで紹介したオーストラリアにおける地熱開発の主力である、この高温岩体発電の秘めた可能性や利点については、こちらを読んでいただくことにして…

 高温岩体発電は、日本でもまったくやっていないわけではなく、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が山形県肘折地区で、電力中央研究所が秋田県雄勝町などで実験的に行っているのだそうだ。

 ちなみに以下の、2001年度に制作された「高温岩体地熱発電」について紹介する動画ニュース(サイエンス・チャンネル)によれば、日本における地熱発電はすべて合わせても、国内の需要電力の0.4%程度。温泉大国であり、世界の地熱ポテンシャル第三位でありながら、かなり少ないと言える。(地熱ポテンシャルマップ

↑とてもよい動画だったに、ここで紹介した後、なぜか削除されてしまいました…

日本における高温岩体地熱発電の潜在力

 上記以外にも、この方式の地熱発電が可能な地域が日本全国に数多く点在している。上の動画にも登場している電力中央研究所・地球工学研究所の海江田秀志氏も、この高温岩体地熱発電について「火山国の日本では国内のほぼ全土で開発可能性がある。日本に適した発電方法」と指摘する。(参照:国内全土で開発可能 日本に適した高温岩体地熱発電 by 日経エコロジー)

 電力中央研究所による平成元年時の試算では、高温岩体発電可能性地域16ヶ所で、合計38,400メガワット=3,840万キロワット の発電が可能と評価している。(参照:高温岩体発電の開発 by 電力中央研究所)

 また平成5年度に、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が国内の有望視される地熱地帯29カ所で行った調査では、2,900万キロワットの発電が可能で、「この調査の対象となった地熱地域の合計面積は、日本の国土面積の0.3%に過ぎないので、実際にはもっとあると考えても良い」と付け加えている。(参照:次世代型地熱エネルギーの開発-高温岩体発電システムの開発

 電力中央研究所による評価は、国立公園など開発しにくい地域も含まれているらしいので、NEDOの評価による2,900万キロワット程度が実際すぐに可能と考えても、およそ原発29基分に相当する発電力を秘めていることになる。 注意)原発一基で約100万キロワット=1,000メガワットと言われている。

原発推進と共に、政府や電力会社が開発に圧力?

 しかしながら、いまだに積極的な調査も開発も行われていないのが現状のようだ。というのも、この発電方式がまかり通ると、上述からもわかるように「原発は要らなくなる!」となり、それを封殺する暗黙の圧力があるから、とも言われている。

 日経エコロジー2010年2月25日付けの記事「なぜか10年新設がない地熱発電 眠れる巨大資源のハードルとは?」(参照)によれば、日本における地熱開発の遅れは、コストや温泉との共存だけでなく、政策面での冷遇も、事業環境の悪化に拍車をかけたとある。新エネ利用促進法=RPS法の施行とともに、地熱発電は国が定める「新エネルギー」の枠組みから外れた、のだそうだ。

 1993年に発売された雑誌『週刊朝日』にも「21世紀の新エネルギーになれるか 高温岩体発電スイッチオンへ」という記事が掲載されたのだが、この記事を書いた記者はこの後、左遷されてしまったという噂もあるという。(参照

 また、2006年にスイスで行われていた高温岩体地熱発電所の建設の際、周辺地域でM3.4の地震が起き、発電所建設に伴う掘削のせいだと提訴され、結局、計画の白紙化を余儀なくされた事件があったのだが、これもまた、原発維持のための圧力とみる向きもあるという。(参照)というのも、州政府をはじめ各方面からの支援で始まったプロジェクトであるにも関わらず、電力会社の社長ら、個人が訴えられるという奇妙な裁判なのだそうだ。(参照1, 参照2

 そもそも、掘削が原因で地震を誘発した、というのなら、高層ビルも建ててはいけないことになる。高層ビルを建てる際には、大深度の地下掘削工事を伴う。例えば、オーストラリアで1、2を争う超高層ビルの「Q1」は、このビル同等程度の深さの基礎を造ったと聞いている。日本における高温岩体発電では、3km以上深く掘れば、300~400℃の熱を持った岩盤が存在するという。

 とはいえ、日本のように地震を誘発する活断層などが多い場合は、掘削する箇所を慎重に選ぶ必要があるだろう。(このページのコメント欄の論議が参考に→参照

燃料費はタダ!ランニングコストのみで発電

 「高温岩体発電で原子力はもういらない」と書いた記者が左遷されたかどうかの真偽はさておき、この記事によれば、高温岩体発電の1キロワット当たりの原価は、12円70銭と試算されている、とある。原発では9円(この数字も操作されているという指摘もあるが)となっているので、高いとはいえ、水力発電並みということになる。コスト面をことさら強調するほど、高い電力とも思えない。

 なにしろ、この高温岩体発電を含め、地熱発電は基本的な燃料費がかからない。発電施設さえ建設してしまえば、後は、動力ポンプなどのわずかな燃料を必要とする機器を動かすランニングコストだけで、ほとんど0円で発電できる。

 原発がいかに危険で、不安定な供給しかできない発電所であったか、今回の福島第一原発事故および40数年来初めての全原発停止で騒がれる停電問題でわかった今、日本は大きなポテンシャルのある地熱開発に全力で取り組む時ではないだろうか。

【参考サイト】 未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み- by 電力中央研究所

【関連コラム】 オーストラリアの地熱、26,000年分の電力供給が可能
         日本こそ、世界一の地熱発電先進国に!

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Miki Hirano平野 美紀 
自然に魅せられ、6年半暮らしたロンドンからオーストラリアへ移住。トラベル・ジャーナリストとして各種メディアへの執筆、ラジオ/テレビ出演などで情報発信しながら、メディア・コーディネーターや旅行情報サイトの運営も。目下の関心事は野生動物とエコ。シドニー在住20年以上。詳細なプロフィールはこちら。
執筆依頼、取材代行、メディア・コーディネート等、承ります。お気軽にお問い合わせください。

オーストラリアの地熱、26,000年分の電力供給が可能

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 温泉らしい温泉もほとんどなく、活火山は人の住んでいない遠く離れた孤島にあるだけで、火山ともほぼ無縁のオーストラリア。そんなオーストラリアでも、地熱発電を試みている地区がある。

 クイーンズランド州南西部、赤土の広大なシンプソン砂漠に面した町バーズビルには、オーストラリア唯一の地熱発電所がある。自然湧出する熱水(温泉)の蒸気を利用した『ウェット方式(対流型地熱資源)』で、80キロワットの発電力を有し、町の4分の1の世帯に電力を供給している。

 とはいえ、オーストラリア全体の電力供給量からすれば、わずか1%程度にすぎない。それほど、この国にとって地熱は、馴染みのないエネルギー源でもある。

オーストラリアの地熱に26,000年分の発電力

 ところが2008年、オーストラリア政府は意外な調査結果を発表をした。それは、これまで手が付けられてこなかった地熱エネルギーに、なんと26,000年分もの発電力が潜在しているというもの。

 オーストラリアは世界有数の石炭輸出国であり、国内の77%の電力は石炭による火力発電だ。そんな国の大陸奥深くに眠るクリーンなエネルギーの驚くべき潜在力を知り、オーストラリア政府は5000万豪ドルを研究および技術開発費に投入すると発表した。(2008年8月20日ロイター記事

 豪地熱エネルギー協会=AGEA(Australian Geothermal Energy Association)によれば、この新しい地熱発電によって2020年までに、2,200メガワットのベースロード電力(常に使っている需要電力)供給が可能であると予測。これを受け、オーストラリア政府は、再生可能エネルギーの目標を40%とし、全国需要電力の20%に当たる毎時45,000ギガワットの発電を目指す考えだ。ちなみに、2020年までに、再生可能エネルギーで2,200メガワットのベースロード電力を生み出すために費やすコストは、120億豪ドルに達すると試算されている。

温泉いらずの地熱発電、ホット・ドライ・ロック方式=高温岩体発電

地熱発電・ホットドライロック方式 地熱発電は、日本やニュージーランドでよく見られ、上記のバーズビルでも行われているような熱水=温泉水からの蒸気を利用するものが一般的。しかし、オーストラリアが新たに取り組んでいる地熱発電は、『ホット・ドライ・ロック(高温岩体発電)』と呼ばれる方式で、地下で熱せられた高温の岩石に水をかけて水蒸気を発生させ、タービンを回して発電する仕組みだ。そして、さらに場所によっては『バイナリー方式(参照)』も検討されており、環境への影響は最小限でCO2排出もほとんどなく、24時間365日の発電が可能だという。

 日本における地熱発電では、掘削により、温泉の質が変わってしまう、または枯渇してしまうのでは?という問題がつきまとう。しかし、このホット・ドライ・ロック方式は、温泉資源とは無関係なため、そうした問題とはほぼ無縁だ。(参照:温泉と共存できるか?産業技術総合研など、地下600メートル掘削へ -毎日新聞 2012年1月17日付け)

 また、地下で熱せられた岩盤の熱のみを利用するため、石油や石炭のように枯渇する資源ではないのが特徴。利用する熱は地球深部のマグマで温められたものであり、マグマが急速に冷えない限り、比較的短期間に回復する。つまり、熱を取りすぎたために、その場所から永遠に熱がなくなってしまうということはない。ほぼ無限に存在する、地底に眠る膨大な熱エネルギーといえる。

南オーストラリアで始まった地熱発電試験プロジェクト

 クイーンズランド州境付近の砂漠地帯、南オーストラリア州イナミンカ地区で、このホット・ドライ・ロック式の発電試験プロジェクトが始まっている。正式稼働すれば、廃棄物を一切出さずに原子力発電所10基分に当たる、10,000メガワットの電力生産が可能だという。

 「Geothermal industry pushes for more power」と題して2011年7月6日に放送されたABCニュースでは、冒頭のバーズビルの地熱発電所と、この南オーストラリア州での試験プロジェクトを紹介している。


 原発に依存しないエネルギーとして、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが注目される中、CO2をほとんど出さず、最もクリーンで安定供給が可能な「地熱」。オーストラリアよりも利用が容易で技術的にも優れている日本こそ、地熱発電のあらゆる方面からの可能性に挑戦し、世界にお手本を示して欲しいと思う。

【関連コラム】 日本こそ、世界一の地熱発電先進国に!
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エコレポ新シリーズ「オーストラリアの野生動物保護」始まりました!

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 財団法人環境情報センターが運営する環境を考えたエコライフを応援するサイト『エコナビ』内で7回に渡ってお届けしてきた『自然と共存するオーストラリアの住まい』が一区切りし、今月より新シリーズ『オーストラリアの野生動物保護』が始まりました!

 ゴンドワナ大陸から引き継いだ自然が残るオーストラリアに生息する、他の大陸にはみられないユニークな動物たちを政府や自治体をあげて保護しようとしているオーストラリア。

 その大きな原動力となっている民間ボランティアの活動を通じ、この国で行われている野生動物保護の実態をご紹介したいと思っています。私自身が体験した保護活動や固有種の個体数減少問題も取り上げていく予定です。

 その第一回では、私もボランティアとして携わるオーストラリア最大の野生動物保護団体WIRESの取り込みなどをご紹介しています。

★エコレポ・オーストラリアの野生動物保護 Vol.1「オーストラリア最大の野生動物保護団体

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2つの異なる気候地区のユニークな住まい ~自然と共存するオーストラリアの住まい

エコナビ「2つの異なる気候地区のユニークな住まい」
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 エコナビで連載中のコラム「自然と共存するオーストラリアの住まい」が更新されました!

 第6回は「2つの異なる気候地区のユニークな住まい」。オーストラリアは湿潤な熱帯気候から砂漠まで、多種多様な気候が入り混じる島大陸です。異なる気候帯で育まれてきた、昔ながらの住まいをご紹介しています。

 共通しているのは、その土地の気候や自然をうまく取り入れて生かしていること。快適で暮らしやすい家のヒントは、身近な自然を見つめることにあるのかもしれません。

 今回の記事制作にあたり、2つめにご紹介している「クイーンズランダー」の家の写真は、知人のエコガイド・藤井 慶輔さんが撮影してきてくださいました!藤井さんはゴールドコーストでエコツアーのガイドをしていますが、知識も経験も豊富な最高のエコガイド。もしゴールドコースト方面へ行かれることがあったら、ぜひ、彼のツアーに参加してみてください。(藤井さんのブログはこちら

★エコレポ Vol.6 「2つの異なる気候地区のユニークな住まい

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温暖化にだまされるな!地球は今、氷河期に向かっている!?

映画「デイ・アフター・トゥモロー」は現実になる!?
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 「ストップ温暖化!地球を守ろう!」といったようなスローガンを掲げ、一心不乱に温暖化問題をことのほか『一大事』であるかのごとく、大きく取り上げる環境運動家たち。私は環境問題には関心あるが、温暖化問題に対する今のありようだけは容認できない。

 個人的には、温暖化という『宗教団体』にしか見えなかったが、どうもそれが正しかったような雰囲気になってきた。それは先日7/8の記事「地球は1万2千年のダイエットを経て、再び太ってきている(膨張してきている)」というもの。

地球が太ると寒冷化し、氷河期に入る

 1万2千年前といえば、最後の氷河期が終えた頃。つまり、氷河期の頃は太っていて、その後1万2千年かけてスリムになってきていた、というのだ。ところが、また近年太り始めているという。地球はこれまで、年間約7mmのペースでスリムになってきていたが、近年また約7mmずつほど膨張し始めているのだそうだ。(太る=膨張といっても、全体ではなく、横に広がって楕円状になるということ)

 記事では、「地球は最後の氷河期を終え、徐々にスリム化しながら温暖化していった。そして、温暖化が最も著しくなった近年、自浄作用で冷やし始めているのではないか。残念ながら、長い夏は終わりに向かっているのだ」と繋がっていく。(参照記事


突然、人類に襲い掛かる氷河期。

映画「デイ・アフター・トゥモロー」が現実に…

 つまり、地球が痩せていく時は温暖化していき、太り始めると寒冷化する。この周期は約1万2千年。最も痩せていた時期は温暖化の最高期。最も痩せていた時は氷河期の真っ只中ということがわかってきたのだという。そして、あの最後の氷河期が終えてから約1万2千年、今また地球はまた+7mm/年 ずつ太り始めてしまった。

【追記】地球が太る(膨張)理由は、一説には「寒冷化すると極(南極、北極)の氷が増え、その重みで地球がぎゅっと上下から押しつぶされる形になり、横に広がる」というのがあるらしい。検証は難しいと思うが、理屈としては理解できなくもない。

 このデータから見えてくるもの……それは、地球は再び氷河期に向かっている!ということではないのか?

 氷河期が訪れることを示唆するデータは、この他にもいくつも出てきている。

 地球温暖化信者によれば、温暖化の原因は、人間活動に起因するCO2=二酸化炭素によるものであるため、「CO2削減」しなければならないと言う。しかしながら、実は、このCO2濃度が高ければ高い程、氷河期を起こす誘因になるという説がある。

 しかしひとつ言えるのは、CO2濃度が高くても太陽熱(エネルギー)は少なくないと、そうはならないらしい。では、氷河期が訪れるための他の大きな誘因は何か?

 それは、太陽活動だ。

太陽活動が左右する地球の寒冷化

 実は今年2月、NASAは大規模な太陽フレアーが発生し、巨大な太陽嵐が地球を襲うと発表した。太陽嵐で電磁波が狂い、すべての機能をマヒさせると…。その根拠は、2008年から2010年暮れにかけて、黒点はほとんど現れず、2008年8月頃には100年に一度という太陽の黒点が全く無くなった月があったのだが、その後、黒点は増え始めた。そして、2013年には太陽活動の活発化とともに「スーパー・ストーム」が地球に到達すると予測していたからだ。(参照記事) 

 しかし、今年6月、米天文学会の総会で、黒点は増えるどころか、著しく減少し始めており、太陽は休止期に向かっているのではないかという、これまでとまったく逆の見解が示されたのだ。

 さらに、先日7/4にも「小氷河期はそこまで来ている?」と題した記事が、イギリスの新聞「デイリー・メイル」紙に掲載された。(参照記事

 ここ数年、冬場に異常な寒波に見舞われているイギリスをはじめとするヨーロッパ。この寒冷気候の原因は、やはり太陽黒点の活動にあると指摘する。また、2010年に開かれた気候学会で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーでもあるドイツのキール大学ライプニッツ研究所は、太平洋と大西洋の水温自然循環を分析した結果、地球は寒冷期に入り、「小氷河期」状態であると発表している。

 ライプニッツ研究所は、温暖化で氷が解けているとされる北極圏では、実は2007年から氷結面積が約106万平方キロ増加したことを突き止め、これまでの「温暖化によって北極の氷が解けている」説とは全く逆の見解を示した。その上で20世紀初頭から2000年頃にかけては、たしかに地球は温暖化していたが、これはCO2排出量とは関係なく、海洋の深層海流である寒流と暖流の循環(流れ)に原因であると指摘した。そして現在は、その循環が逆の動きになっていることから、寒冷化が進むと見ている。(参照記事

 CO2濃度が高まっているこの時期に、太陽活動が弱まる。海流の循環にも変化が見られ、そして冒頭の1万2千年周期の地球の変化…………かくして、氷河期に入る準備は整った、というわけだ。

氷河期を遅らせる唯一の方法とは?

 すなわち、地球はこれから、冷えていく方向へ向かってまっしぐら!ということになる。どのみち、地球の自浄作用や変化の周期なんて、人間がどうにかできるわけはないのだが、唯一、氷河期が来るのを遅らすことができるとすれば、、

 それは、膨大なCO2をはじめとする温室効果ガスを排出すること。科学批判のサイトSkeptical Scienceの記事によれば、「1000ギガトンの排出が起きれば13万年氷河期を防ぐことがき、もし5000ギガトン排出されたとしたら、50万年遅らせる事ができる」という。

 つまり、氷河期にならないようにするための唯一の方法は、今叫ばれている「CO2削減」とはまったく逆の「CO2排出」しかも、膨大な量を!なのだ。「クリーンな空気。二酸化炭素を出しません」なんて言って原発作ってる場合じゃない。これが真実ならば、じゃんじゃんCO2を排出してくれる火力発電所を増やさねばならないくらいなのだ。じゃないと、地球はどんどん冷却化し、本格的な氷河期へ突入してしまう!

 しかしながら、そんな膨大な量を排出するのは到底無理な話。2008年度の世界全体のCO2排出量は295億トン(参照)、ギガの単位は10億だ。

 最後にダメ押しともいえるのが、次回やってくる氷河期はこれまでで最長になる可能性を秘めているということだ。先ほどの科学サイトは、数々のデータを基にした試算によると「今の状態、比較的弱い軌道強制力と長いCO2の寿命、両方を合わせ考えると、過去260万年、最長期間の氷河期になる可能性がある」としている。

 これだけでは氷河期突入の要因としてはイマイチな気も?という意見もあると思うが、オーストラリアの今冬の異常な寒さといい、北半球の極寒の冬といい、侮れない大きな気候変動が起こっていることはたしかだと思う。

 今夏の日本では「こんなに暑いのに、そんなはずはない!間違いなく温暖化だ」と思うかもしれないが、冬のことを思い出して欲しい。今年に入ってからも4月、いや北海道などでは5月に入っても雪が降り、寒さが厳しい『極寒』の長い冬ではなかったか?東日本大震災における被災者の人々は、その極寒の中耐えたのではなかったのか?

 つまり、『極寒』の長い冬と『酷暑』の比較的短い夏となり、気候が極端化しているだけ。温暖化ではなく、気候変動。しかも大きなうねりの中に今、入ってしまったのかもしれない。(このブログでもそんなことを書いてますね…)

【参考サイト】

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生活インフラ整備より、最古の森を守ることを選んだケープトリビュレーションの住民達

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 エコナビで連載中のコラム『自然と共存するオーストラリアの住まい』、Vol.5「世界遺産の豊かな森と共存する住民たち」がアップされました!

 今回取り上げているのは、先日、「オーストラリアNOW トラベル」の記事でもご紹介した、世界最古の熱帯雨林地区ケープトリビュレーションです。

 人間が社会生活をするのに必要な、電気や上下水道といった生活インフラはほとんど整備されていない、ほぼ陸の孤島状態ともいえる熱帯雨林の森の村々。世界遺産に指定され、観光客が増えたことで、ここ20年ほどで小規模の宿泊施設やレストランなども次々とできましたが、こうした状況は20年前とひとつも変わっていません。

 日本なら「世界遺産になったのだし、観光客もたくさん来るから、すぐにでも生活に必要不可欠な電気や上下水道などを整備してほしい」と地域住民たちが陳情書を提出して、地元の自治体がすぐさま快適な住環境を整備し、ますます観光化が進んでいくところでしょう。

 ですが、このエリアの人々は、それをしませんでした。ここの住民達は、自分たちが便利に暮らすための生活インフラ整備を要求するよりも、自分たちの努力で森を守ることを誇りにしているからです。

 では、実際にどんな暮らしぶりなのか?は、以下のリンクからどうぞ♪

★エコレポ Vol.5 「世界遺産の豊かな森と共存する住民たち

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災害時にも役立つ!エコレポ「オーストラリアの僻地・アウトバックの暮らし方」

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 エコナビで連載中のコラム『自然と共存するオーストラリアの住まい』、Vol.4 「オーストラリアの僻地・アウトバックの暮らし方」がアップされました!

 オーストラリアのアウトバックは、電気や水道はもちろん、現在都会における暮らしでは当たり前になっている生活インフラのほとんどが通っていません。それでも、様々工夫と知恵で生活しています。まさしく、究極の自給自足! こうした暮らしぶりは、当然エコにも繋がります。

 去る3/11に発生した東北地方太平洋沖大地震では、被災地はもとより、都市部でも計画停電などで、不便な暮らしを余儀なくされている方々も多いかと思い ます。近代的なインフラ設備が整っていないアウトバックでの暮らしぶりは、こうした事態においても、また、今後の災害に備えても、役立つことも多いのでは ないかと思いますので、参考になると幸いです。

★エコレポ Vol.4「オーストラリアの僻地・アウトバックの暮らし方

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